働き方改革が推進し、多様な働き方が広まってきています。この流れは今後ますます強くなりますし、働き方の選択肢が増えることが喜ばしいことです。
働き方の一つの形にフリーランスとして働くという方法があります。会社に属するのではなく、自分自身が個人事業主として事業を行う働き方です。フリーランスとして働く人の数は増加傾向にあるようです。
しかしIT業界で働くフリーランスと呼ばれる人達の中には、実態がフリーランスとしてふさわしいのか疑問を感じざるを得ないエンジニアがたくさんいます。それは客先常駐で働くフリーランスのエンジニアの人達です。
私自身も1年ほどフリーランスのエンジニアとして客先常駐の働き方をしていた時期がありました。しかし後になって思うことは、その客先常駐エンジニアの実態はとてもフリーランスと呼べるようなものではなく、その実態は客先で指揮命令される労働者と考えるのが妥当なものでした。
今ではその時期に「フリーランスとして働いていた」と堂々と人に言うのが恥ずかしくて、「フリーランスと言っても客先常駐ですけど・・・」と、どこか後ろめたい気持ちで付け加えて人には説明しています。
IT業界で客先常駐で働く”フリーランス”のエンジニアは、フリーランスではなく労働者として考えるべきだと思う理由についてまとめてみました。
客先常駐のフリーランスエンジニアには裁量がない
客先常駐で働くフリーランスエンジニアには裁量がありません。客先常駐なので働く場所は顧客から指定され、服装や勤務時間についても客先の指示に従います。仕事自体も独自の裁量で進めていくというよりは、指揮命令を受けながらプロジェクトメンバーの一員として、まるで労働者のように働きます。
その働き方は到底フリーランスと呼べるようなものではなく、契約形態などの違いを除けば、現場にいるプロパーの正社員と働き方は何ら変わりません。
フリーランスとは事業主なのであって、個人企業法人です。それなのに他社の人間から命令されながら、そこの従業員であるかのように働くのが客先常駐のフリーランスエンジニアの働き方です。
その働き方は、一般的なフリーランスの働き方とは全く異なるものと言えます。
客先常駐エンジニアの偽装請負の問題
IT業界では客先常駐の多重下請構造が蔓延しています。そこには偽装請負というこの業界の癌とも言うべき大きな問題がついて回りますが、フリーランスエンジニアにも同じ問題は付いてきます。
フリーランスは独立した事業体ですので、本来は自分自身に仕事を進めていく上での裁量が全てあるはずですが、客先常駐のエンジニアの実態はただの労働者です。客先の正社員も他からSESで派遣されてきている人もフリーランスの人も全員同じ働き方です。
偽装請負の問題はSES企業だけの問題ではなく、フリーランスのエンジニアであっても全く同じ問題が存在しています。
命令する権利だけ手に入れ労働者保護は行わないのが偽装請負の本質です。これは労働者の権利を不当に侵害するものですので、偽装請負は絶対に駆逐しなければならないものです。常駐する客先で指揮命令を受けながら労働者として働くのであれば、そこの会社の契約社員として働くか、派遣社員としてそこの会社に派遣されるかのどちらかであるべきでしょう。
エージェントと呼ばれる人達の問題
IT業界ではフリーランスの人達に客先常駐の仕事を斡旋するエージェントと呼ばれる人達が存在します。この人達はエンジニアに客先常駐を勧めて偽装請負を推進してしまっているので私は大嫌いです。
IT業界でエージェントとかコーディネーターとか呼ばれる人達について
この人達の仕事を一言で言うと「ピンハネ屋」です。しっかりと一般派遣の許可を取って派遣業としてエンジニアを派遣するならまだしも、準委任契約という形で永続的に中間マージンを搾取し、エンジニアや顧客の利益を搾取し続けます。
やっていることはSESで偽装請負をやっている会社と全く同じです。やっていることは一般派遣の会社がやっていることと同じなのに、派遣免許も取らずに脱法的に派遣法からの規制を逃れてエンジニアを派遣している。恥ずかしいと思えよお前ら。
働いている方も労働者の意識の人もいる
一方で客先常駐で働いているフリーランスエンジニアの方も、本来のフリーランスとしての自覚がなく、まるで労働者のような考え方をしてしまっている人達もいるようです。だからフリーランスなのに「最低時給を保証してくれ」みたいな考え方の人まで出てきてしまっているのでしょう。
フリーランスに最低時給を保証してくれという主張について考えてみた
フリーランスとして働いていくためには、独立した事業主として働いていくためのそれなりの覚悟や苦労も必要となります。労働者としての権利が欲しいのであれば、フリーランスなどやらずにおとなしくどこかの会社の従業員として働いていた方が良いですよ。
フリーランスとして働くデメリットも理解するべき
フリーランスとしての働き方はもちろんたくさんのメリットがあり、素晴らしい働き方だと思うのですが、最近は働き方改革の中で多様な働き方を主張する人の中には、フリーランスとして働く現実の厳しさには全て蓋をして、フリーランスの良いところばかり全面的にアピールする人がいます。
フリーランスとして働くということは、一つの独立した事業主として働くことですので、誰にでも簡単にできるというわけではありません。会社を設立することは誰にでもできるけど、会社経営が誰にでも簡単にできるわけではないのと同じです。
上記のブログ記事は以前に私がまとめたものですが、ここに記載されているようなデメリットについても、しっかりと理解した上でフリーランスの道を選択するべきです。バラ色の楽しそうな話だけ聞いて安易にフリーランスになってしまうと「こんなはずじゃなかった」と思うようになります。
後から後悔することのないように、メリットだけではなくデメリットについても十分に情報収集しておいた方が良いです。
まとめ
客先常駐で仕事をするということは、働く場所も顧客に指定されますし、服装も客先の規定に従うことになりますし、勤怠まで管理されることになります。仕事の進め方についても客先の指揮命令の元働くことになりますのでフリーランスとしての裁量などありません。
フリーランスとして働くのであれば、当然のことながら自分の意志で働き方を決定できる裁量のある仕事であるべきでしょう。
また客先常駐してしまうと売上が一箇所に固定してしまうというデメリットがあります。これは事業を行うものとしては危険なリスクです。事業を行うのであれば取引先は分散させて一箇所に売上が偏らないようにするべきです。
できれば最低でも取引先を5つ以上確保して、一つの取引先の売上比率が全体の20%を超えないくらいにバランスを保つと安全です。取引先が一箇所しかないとか、その取引先がお金払ってくれなくなったら生活詰みますよ。だったら労働者としての権利が確保されている社員として働いた方がマシです。
IT業界の客先常駐フリーランスを、私は本当の意味でのフリーランスだとは思いません。フリーランスとして働くのであればフリーランスらしく働くべきだと思います。