昨日Twitterで「フリーランスに最低時給を保証しろ」というツイートが話題になっていました。これについて、個人的には冗談だろとしか思えないわけですが、結構本気でこういうことを主張されている方々がいるみたいなんですよね。
フリーランスとはそもそも何なのかについて、wikipediaから引用させてもらうとこんな感じです。
フリーランス(英: freelance)は、特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの才覚や技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人である。日本では『自由業』『自由職業』[1]『フリーランス』と呼ばれる。請け負った業務を実際に遂行する本人はフリーランサーと呼ばれる。
これによるとフリーランスとは「社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人」とありますね。事業を行うという点で会社を経営する経営者と同じです。フリーランスに最低時給を保証しろという主張は、経営者に最低時給を保証しろと言っているのと同じで非常にナンセンスです。
ちなみに我々IT業界でもフリーランスの人達が客先常駐で仕事をしているケースが結構多くありますね。私も会社を設立する前に1年ほどやっていたことがあります。ただしこれらの実態は雇用に近いものですから私としては本来は派遣か契約社員であるべきだと考えております。
話を戻しまして「フリーランスに最低時給を保証しろ」という主張についてですが、なぜこのような主張をする人が出てくるようになったのか、その理由を私なりに考えてみました。
クラウドソーシングサービスの普及
クラウドワークスやランサーズのようなクラウドソーシングサービスがここ数年で利用者が一気に増えました。それに伴ってフリーランス人口も増えており、ランサーズが発表したフリーランスの実態調査によると、2017年のフリーランス人口は1,122万人だそうです。
フリーランスだと仕事は全部自分で取ってこないといけないので、専門スキルがあっても営業能力がないと厳しかったりすると思うのですが、こうしたクラウドソーシングサービスを利用すると仕事を取れるには取れる。多分価格下げまくれば誰でも仕事を取ることは可能。
そこが一つの落とし穴であって、クラウドソーシングだと価格下げまくりマンの出現はほぼ確定なので、激しい価格競争に突入してしまい、仕事の金額は結構厳しいことになることが多いです。アクシアも随分前に類似のサービスを少し使ってみたことがあるのでそれはよくわかります。
クラウドソーシングのようなサービスを利用するということは、そもそも自分に営業力や集客力がないからこうしたサービスを利用するわけであって、そのトレードオフとして価格低下を受け入れることはある程度は仕方がないことだと思います。受注単価を上げたければ自分で仕事を受注できる能力を身につけるしかありません。
いずれにしてもこうしたサービスの出現によって、たとえ営業力のないフリーランスの人でも仕事を獲得できる手段が提供され、フリーランス人口の増加の要因となっていると思われます。
フリーランスを安易に推進する人達の出現
フリーランスとは個人の事業主であって、フリーランスとしてやっていくためには当然のことながら大変なこともたくさんあります。リスクもあります。
それなのにそういうフリーランスの大変なところについては一切触れることなく、「フリーランスは最高だよ!」と無責任な進め方をする人達が最近になってたくさん現れるようになりました。働き方改革を推進する人達の中にそういう人が結構たくさんいます。
確かに働き方改革の一環として、働き方の選択肢としてフリーランスは私はアリだと思います。働き方の選択肢が増えることは良いことなので、私もフリーランスという働き方自体はあった方が良いと思いますし、よりフリーランスとして働きやすい環境というものは整備されていくべきだと思います。
しかしフリーランスの良いところばかりにスポットライトを当てて、フリーランスの大変なところについては覆い隠したままの状態でフリーランスを人に勧めるのは、私は無責任極まりないのではないかと感じてしまいます。
少なくとも安易にフリーランスを人に勧めるのではなく、上記のブログ記事に書いてあることくらいはきちんと説明した上でフリーランスを推進するべきだと思います。
無責任に「フリーランスはいいよぉ~」と言いふらす人が増えたものですから、フリーランスのおいしいところだけを見てフリーランスになってしまう人もそれなりに増えていることでしょう。
こうして既に述べたクラウドソーシングサービスの普及と、それに合わせて「フリーランス最高だよ!」と煽る人達の出現によって、本来フリーランスになるだけの十分な実力を持っていない人達までフリーランスになってしまっています。
フリーランスを奴隷のようにこき使うブラック企業
こうして本来フリーランスとしての能力を有していない人達が量産されてしまった結果どうなるか。ここで毎度おなじみのブラック企業の登場です。
能力がないのにフリーランスになんかなってしまえば、もうそんな人達はブラック企業にとってはヨダレが出てくるほど魅力的に写ってしまいますね。そうなってしまうとそういう人達はブラック企業の格好の餌食です。
フリーランスは労働者ではありませんから、そこを逆手に取って、
労働者の最低賃金で働かせるよりも安い料金でフリーランスに働かせる
なんてことがブラック企業の活躍によって横行してしまう。そうして、
こんなはずじゃなかった。何とかしてくれ。
と泣いているフリーランスが量産されてしまった。これが「フリーランスに最低時給を保証しろ」などという珍主張がされてしまうようになってしまった背景ではないかと推察します。
最低賃金以下でしか仕事を取れないようなフリーランスの方々に贈る言葉としましては、
フリーランス辞めてどこかの会社に雇用されてください
としか言えません。アルバイトでもいいから雇われた方がいいですよ。アルバイトなら最低時給保証されますし。
それにブラック企業を舐めちゃダメですよ。ずっと前に社員を雇用せずにフリーランスばかりと契約してまるで社員のようにフリーランスの人達に働かせていたブラック経営者の人に話を聞いたことがあります。
そのブラック経営者によると、なぜ社員を雇用せずにフリーランスと契約するかと言うとこんな感じでした。
- 雇用の調整弁
- 経費の節約
- 消費税の納付額を減らす
1の雇用の調整弁というのは、ブラックかもしれないけどわからなくもない。解雇規制が厳しすぎる日本の労働事情を考えると同情の余地もなくはない。
2の経費の節約というのは、社会保険料や交通費を払いたくないという理由からです。フリーランスにはこうした経費が発生しませんからね。
3の消費税の納付額を減らすというのは、消費税の納付額は会社が売上と一緒に預かった消費税額から、経費と一緒に払った消費税額を差し引いた金額を収めるわけです。雇用した社員に支払う「給料」には消費税が含まれていませんから、いくら給料を払っても外に出ていく消費税額は増えませんから、納付する消費税額は少なくなりません。
しかしフリーランスに支払う「報酬」には消費税が発生します。よってフリーランスにお金を支払えば支払うほど外に出ていく消費税が多くなり、結果として納付する消費税額は少なくなります。
説明が下手すぎてよくわからないかもしれませんが簡単に言うと、雇用した社員に給料を払うよりもフリーランスに報酬として支払った方が税金が安くなるということです。
いやあ、ブラックですね。こんなこと普通思いつきませんよね。こんなこと思いついてしまうブラック企業経営者に目をつけられたら、本来フリーランスで仕事するだけの能力を有していない人なんて簡単に餌食にされてしまいますね。
まとめ
「フリーランスに最低時給を保証しろ」の主張の背景には、こうしたことが背景にあると私は思います。
- クラウドソーシングサービスの普及
- フリーランスを安易に推進する人達の出現
- フリーランスを奴隷のようにこき使うブラック企業
それによって低すぎる報酬で苦しんでいるフリーランスの人達を救う手段が、フリーランスに最低時給を保証することだとは私は思いません。こんなのは表面的な小手先の対応でしかなく、根本原因を解決しないとまた別の問題が必ずすぐに出てきます。
解決するべきなのは、フリーランスを奴隷のようにこき使うブラック企業の問題ではないでしょうか。具体的には、
フリーランスが労働者のように使われる問題の解決
が必要だと考えます。フリーランスとは名ばかりで、その人達を労働者のように指揮命令してこき使うなら、フリーランスではなく直接雇用しろと。そうすれば最低時給守らないといけないですし、労務管理の責任も出てきますからね。
フリーランスなのに働く場所も時間も自由じゃないとか、自社の従業員のように指揮命令してるとか、そういうことを徹底して厳しく取り締まることが「フリーランスに最低時給を保証しろ」に対する根本解決になるのではないかと私は考えます。