SES企業の経営者の思考がどのようになっているかをよりリアルにわかりやすく理解してもらえるためにはどのように表現すれば良いかを考え、工夫を凝らして先日はこのようなブログ記事を書いてみました。
フィクションという形の物語形式で初めての試みだったわけですが、かなりリアルにSES企業経営者の心の内側を表現できていると思いますので、興味のある方はぜひお読みになっていただければと思います。ただし読んだら少し気持ち悪くなるかもしれませんが。w
上記のフィクションのように、SES企業をの経営者には憐みすら感じざるを得ないわけですが、要は経営者として無能だからどうしようもなくなってこうなってしまうわけですね。SESの経営なんて誰にでもできてしまうくらいに簡単ですから。そのあたりについて以前書いた記事がこちら。↓
長くIT業界の中で生きてきて、私自身もかつてSESの道を通ってきた身としましては、エンジニアを目指す者、または現役のエンジニアの方々はSES企業に就職してはいけないとしみじみと思うわけであります。
そんなわけで、エンジニアがSES企業に就職してはいけない理由を5つにまとめてみました。
理由1:偽装請負の温床である
SESの仕事のやり方が実質的には派遣なんですよね。実質派遣なのに契約形態は派遣ではない。これを偽装請負と言います。立派な違法行為です。
「うちの会社は偽装請負ではない」と言い張るSES企業経営者もいますが、以下の東京労働局のウェブサイトをご覧ください。
ここでは「代表型」「形式だけ責任者型」「使用者不明型」「一人請負型」の4つの分類によって、偽装請負の代表的なパターンとして紹介されています。この4つのどれにも当てはまらないSESは皆無と言って良いでしょう。
実質的に派遣事業なのであれば、なぜ正規の合法的な派遣会社でやらないの?という疑問が当然湧いて出てくるわけです。ところがSES企業経営者はこの点についてはスルーの姿勢を貫き通します。
派遣型で仕事がしたいのであれば、正規の派遣会社でやりましょう。
理由2:労働環境が悪化しやすい
SESの現場では労働環境が悪化しやすいです。その理由の大きなものとしては、収益構造が長く働けば働くほど儲かってしまうようになっているからです。逆に業務効率化しすぎると売上が落ちることもあります。
中には労働環境が良好な現場もあることでしょう。しかしそれは基本的に現場の会社が提供してくれた産物であって、所属するSES企業が適切な労務管理を行った結果ではありません。現場任せの運任せです。
問題は現場のプロジェクトが火を噴いた時ですね。普通の会社であればプロジェクトが炎上すれば、火消しされるように改善しようと試みます。あるいは炎上などが発生しないように日頃から適切な管理を心がけます。
ところがSESではそうはいきません。なぜならSES企業はエンジニアを現場に放り込むところまでが仕事なので、その後のプロジェクト管理の権限など一切ないからです。そうです、偽装請負だから自社の従業員であっても管理する権限がないわけです。
炎上した時に適切に改善してくれるかどうかは現場の顧客次第。自社では何一つ手出しできない。これがSESで労働環境が悪化しやすい理由です。普通の会社には当然備わっている労務管理の権限がないわけですね。
理由3:案件ガチャである
最近ではよくSESは案件ガチャと呼ばれます。良い案件に巡り合えるかどうかは完全に運次第で、宝くじを買うのと同じようなものです。
SESではない、普通の会社に勤めていたとしても良い仕事にアサインされるかどうかはある程度は運の要素もあることは事実でしょう。ただしSESとは決定的に違う点があります。それは、SES企業では現場のプロジェクトをコントロールする権限が一切ないということです。
例えば通常のシステム開発会社であれば、プロジェクトの進め方に関して全ての裁量がありますから、どんな仕事であってもプロジェクト管理手法や開発手法について自分達で決定することができますね。とても当たり前のことです。
ところがSES企業にはそんな権限はありません。現場のプロジェクトがどんなにクソな管理手法や開発手法を導入していたとしても、それを変える権限がSES企業にはありません。
仕事の進め方だけではなく、仕事の環境についても同様です。SESの世界で生きている人達には有名な三種の神器というものがあります。「長机」「パイプ椅子」「人権侵害スペックマシン」です。
普通の会社であれば、エンジニアにもう少し良い労働環境を与えたいと思った時には自社の権限でそれを実現することが可能です。広い机、座り心地の良い椅子、高スペックのマシンを与えることもできます。
しかしSES企業にはそんな権限すらありません。現場の顧客の中には他社のエンジニアに提供する環境をコストとしか見ない会社もたくさんあります。労働環境が悪くてそのエンジニアが所属会社を退職しようと知ったことではありません。そうすると前述の三種の神器のような労働環境が各地で生まれてくるわけですね。
理由4:若い頃だけしか仕事がない
SESの仕事は若い頃だけしかありません。歳を取れば取るほど参入できる案件が少なくなっていきます。
SESの会社で出回っている「案件情報」が記載されたメールの中には、募集するエンジニアの条件として、年齢制限が入っていることがよくあります。多いのは35歳くらいまでとか、40歳くらいまでとかですね。
現場のエンジニアでSESの営業に携わったことのない人はもしかしたら嘘だと思うかもしれませんがこれは本当です。大げさでもなんでもなく、はっきりと募集の条件として年齢が記載されていることは全く珍しくありません。
それどころか、「女性限定」「容姿端麗な方」というようなふざけた条件が記載されている案件すら見かけることがあります。これエンジニアの募集ですよ?一体何の職種の募集と勘違いしているのでしょうかね。
少し話が脱線しましたが、SESのエンジニアは年齢を重ねると仕事がなくなってくるので、そうすると営業に回されたり、自宅待機という名の退職勧奨がされたりすることもあります。
理由5:エンジニアとして成長できない
SESの仕事しかしていないと、エンジニアとして中々成長することができません。これを言うとSES企業の経営者の皆さんから突っ込みが入るんですよね。いやいや、SESのエンジニアだって成長できますよと。
ですので次のように表現を変えることにしました。SESの仕事しかしていないと、エンジニアとしての市場価値が下がります。
私はアクシアというシステム開発会社の代表ですが、少し前からアトムズという会社の取締役にも就任しまして、そこで自社開発専門のエンジニア人材紹介サービスの事業を始めました。
この人材紹介の仕事を始めてから痛感しているのですが、エンジニアに非常に人気のある自社開発の会社からは、SESでのキャリアが評価されることが中々ないんですよね。それはつまり、SESの現場で積まれる経験をエンジニアに大人気の自社開発企業は評価していないということを意味します。
まあ私の経営しているアクシアも自社開発の企業ですが、確かに求人応募があった時にSESの経験は特に評価しないですね。自分の会社もそうだったのに、人材紹介で他社の採用を見て改めてその事実に気付かされた次第です。
こうしてエンジニアとしての市場価値が下がっていくとどうなるかというと、いつまでたってもSESの世界から抜け出せないということが起きてしまうわけですね。SESを脱出して自社開発の会社に転職しないのにそれができずに苦しんでいるエンジニアはたくさんいますね。
成長できる・できないで言ったら、そりゃもちろんどんな仕事だろうと何かしらの経験はあるだろうし、そんなこと言ってたらブラック企業に勤めていたとしても何かしらの成長はあるでしょうよ。
でも大事なことはそこではなくて、SESで働いているとエンジニアとしての自分の市場価値が相対的にどんどん低下していってしまうということなんです。それはつまり、エンジニアとしての自分のキャリア形成がうまくいっていないということでもあるわけです。
ではSESで働いているエンジニアはどうすれば良いの?となるわけですが、これはもう自分で努力してスキルアップするしかないですね。SESから自社開発企業に転職成功している人は、例外なく自分でスキルアップの努力をしている人です。逆にこれさえしっかりやっておけば、現状SESにいるからといって必要以上におそれる必要はないですよ。
ただ今SESで働いている人はできるだけ早く転職した方が良いですね。確かに自分でスキルアップの努力を続けることで、自分のエンジニアとしての市場価値を高めることは十分可能なのですが、どうせなら自己努力にプラスして、業務経験も良いものを積んでもっともっと自分の市場価値を高めていくべきだと強く言っておきたいと思います。
これがエンジニアとして成長できるということです。SES企業の戯言に騙されないようにしてくださいね。w
まとめ
以上、エンジニアがSES企業に就職してはいけない5つの理由をまとめてみました。
- 偽装請負の温床である
- 労働環境が悪化しやすい
- 案件ガチャである
- 若い頃だけしか仕事がない
- エンジニアとして成長できない
これからエンジニアを目指そうとしている人で「最初はSESからスタートしても良いかな」と浅はかにも考えている人や、今SESで働いていて何か違和感を感じている人の参考になれば幸いです。