顧客が取るべき責任は顧客に取らせよう


もうすぐ残業上限時間が法律で制限されるようになります。残業の多い企業は手遅れになる前に今のうちに残業削減に取り組まねばなりません。今のうちからきちんと残業削減に取り組んでおかないと、気づいてみたら手遅れになっていたなんて企業が出てきてしまうかもしれませんね。

アクシアでは2012年から残業ゼロを実現していますが、私は残業ゼロを実現するためにはブラックな顧客の要求を断らなければならないとかねてから言い続けています。

残業禁止にしたら顧客を選ばざるをえなくなった話

アクシアでは理不尽な顧客はきっぱりと断るので良いのですが、アクシアが断った顧客はまた別の取引先を探して理不尽な要求をして喰いものにしていることでしょう。

ブラックな顧客の要求を断ることができないと、その理不尽な要求を実現するためには自社がブラックになるしかありません。ブラックな体質というものはそうやって感染していきますから、自社の労働環境を改善したいと思うのであれば、理不尽な顧客の要求を断れないなどと眠いことを言っている場合ではないのです。

顧客の責任まで負っていては業務改善など永久に不可能

そもそも自社の労務管理を脅かし自社の従業員の健康や平穏な暮らしを侵害しかねないようなことを他社の人間から言われるような筋合いはありません。「お客様は神様だ」というような言葉もありますけど、この言葉を最初に言ったと言われる三波春夫さんという方は、一般的に広まってしまっているような意味でこの言葉を使っていませんからね。

これについては三波春夫さん公式サイトに詳しく説明がされていますので意味を誤解している方がいたらぜひ一度お読みください。

「お客様は神様です」について

我々はどこでこういった考え方が染み付いてしまったのかわかりませんが、どこかで「お客様は偉い!」という感覚がありますよね。でも冷静に考えてみたら誰が偉いとか、誰が偉くないとかそんなものは錯覚だと思うんですよね。もう「お客様は別に偉いわけではない」と学校教育で子供達に教えても良いレベルではないでしょうか。

別に顧客は偉くないし我々は顧客の奴隷ではないのだから、意味の分からないことを言う顧客の要求を黙って聞く必要などありません。決して顧客の奴隷になってはいけません。

私がこれまでに経験してきたケースで顧客が理不尽なことを言ってくることが多いのは、顧客自身が何かミスをしてしまって、その責任を自分で取りたくない場合ですね。本当は顧客自身がミスをしたので自分で責任を取らないといけないわけですけど、そうすると顧客の顧客に怒られてしまったり、顧客の上司に怒られてしまったりします。

それを自分の責任として素直に受け入れられる器を持った人であれば良いのですが、上司などに怒られるのが嫌な器の小さい人というのは、自分がミスしたツケを発注先に押し付けてこようとすることがあります。

  • いいから言われた通りにやれ
  • 何が何でも指定の期日までにやれ
  • 必要なことだから無償でやれ

こういうことを言う顧客に遭遇したことがある人も多いと思いますが、こういうことを言う顧客の中にはよくよく話を聞いてみると、自分が仕事を遅延したことや見積もり時に要求事項を出し忘れていたりしたことを怒られることを恐れてしまい、発注先に対して強行な姿勢で無理やり穴埋めをさせようとしてくることが結構多いです。

こんなものは顧客自身の責任であって、本来それを他社に押し付けて良いわけがありません。強引なことを言ってきたとしても「そんなことはできませんよ」と言えれば良いのですが、奴隷根性が染み付いてしまっていると中々そういう毅然とした態度は取れませんね。弊社も大昔はそうでした。

でも自分達自身がミスしてしまったことを次はミスしないように業務改善していくことだけでも大変なことなのに、その上顧客から理不尽な要求をされて責任を押し付けられてはたまったものではありません。

そんなことを平気でやっているうちは業務改善など永久に不可能です。チームの上司たるものは理不尽なモンスター顧客が出現した時には前面に出ていって戦って自分のチームを守れるようでなければ、自分のチームの業務改善などいつまでたってもできないでしょう。

 

上流工程が遅れが生じても発注元は責任を取らない

システム開発の工程というものは、要件定義→基本設計→詳細設計→プログラム実装→試験のような流れで進んでいきます。会社やプロジェクトによっては呼び方やフェーズ分けのやり方が多少異なるかもしれませんが大雑把な流れとしてはこんな感じです。

このシステム開発の流れの前半部分を上流工程、後半部分を下流工程のような呼び方をすることがあります。どこからどこまでが上流工程で、どこからが下流工程というように明確な区分が決まっているというよりは何となく前半と後半で上流下流のように呼びます。

この時、要件定義、基本設計、詳細設計、プログラム実装、試験のそれぞれのフェーズで2ヶ月ずつのスケジュールを想定し、システム開発のプロジェクト全体のスケジュールが10ヶ月と決められたとします。

問題になるのはここからです。よく聞く話ですが、要件定義、基本設計のフェーズで予定されていたスケジュールがそれぞれ1ヶ月遅延したとします。本来2ヶ月ずつ確保されていたものが3ヶ月ずつになったのでトータル6ヶ月となります。

多分業界外の人達からすると、この場合でも詳細設計、プログラム実装、試験ではそれぞれ当初の予定通り2ヶ月ずつのスケジュールが当然組まれるものだろうと想像するかもしれません。しかしそうはならないことが多々あるところがシステム開発の恐ろしいところです。

上流工程のスケジュールが遅延したとしても、トータルの開発期間には変更は無しということが当たり前のようにあります。そうすると上の例で言うと要件定義と基本設計で既に6ヶ月のスケジュールが消化されてしまっていますから、残りのフェーズは4ヶ月でスケジュールが組まれることになります。

詳細設計、プログラム実装、試験でそれぞれ2ヶ月、トータル6ヶ月の期間を予定していたのに、上流工程が遅延したせいで下流工程の開発期間が3分の2になってしまうといっった具合です。

弊社が詳細設計以降を担当することになっていた場合、スケジュールはこの場合必ず6ヶ月もらいます。「いいから期日までにやれ」と言ってきたとしても「6ヶ月かかります」と言います。折り合いがどうしてもつかないのであれば受注しません。

しかし客先常駐のシステム開発の場合だとしわ寄せが下流工程に押し付けられることは当たり前にあります。主に上流工程を担当している元請け企業は自分達が生じさせた遅延の責任をとったりしません。その責任は下流工程を担当する下請け企業に押し付けられます。

システム開発の話以外にも、最近ニュースにもなって問題になっている新国立競技場の現場でも同じようなことが起きていますね。新国立競技場は設計が大幅に遅れたにも関わらず、最終的な期日であるオリンピックは遅らせることも不可能なので、後ろの工程を担当する下請け企業に全てのしわ寄せが押し付けられています。客先常駐のシステム開発の現場と全く同じ状況です。

本来であれば上流工程で発生した遅延の責任は上流工程を担当している会社が取るべきだと思いますが、元請け企業はその責任を取らずに下請け企業に押し付けるようなことが多々あるのです。

なぜ客先常駐の現場では理不尽な要求を断れないのか

顧客からの理不尽な要求を断るということはそれなりに大変なことです。アクシアでは顧客から理不尽なことを言われたとしても毅然と対応するようにしていますが、それでもかなりの労力を強いられて正直ものすごく疲れます。

ただでさえ顧客からの理不尽な要求を断ることは大変ですが、客先常駐の開発現場となるとさらにその難易度は上がります。

同じ現場で一緒に仕事をしていて元請け企業の人間から労務管理されて指揮命令までされている状態だからです。その一方で雇用関係はないので元請け側には一切の責任が生じないという極めて不公平な異常な状態です。

まさに奴隷状態のようなものですね。奴隷が主に反抗しようというのですから、それは通常の労力とは比べ物にならないくらいに大変なことです。

これが企業間の正常な取引きであれば防ぎようもあります。顧客から理不尽なことを言われても会社として拒否して抗議することができますからね。

でも客先常駐の現場には人だけ放り込むわけです。これが派遣契約なら派遣法によって色々と労働者は守られる部分もあると思いますが、IT業界の場合はほとんどが偽装請負です。

偽装請負というものが企業間の関係をさらに異常なものにしてしまっていると言えます。顧客にNO!と言えない異常な関係、まるで奴隷制度のような関係を作ってしまっている偽装請負は本当に罪深いですね。

偽装請負が行われているから、顧客の理不尽な要求を断りにくくしてしまっていると言っても過言ではないでしょう。

顧客に責任を取らせるためにはまずは偽装請負を無くすべき

顧客の責任は顧客に取っていただけるような正常な企業間の関係を構築するためには、他社の人間と同じ現場にいて指揮命令を受けているような状態では無理です。まずは偽装請負をなんとかしなければ、「顧客の責任は顧客に取らせる」ということはIT業界では不可能でしょう。

自社の指揮命令権を回復してこそ、断るべきことをきちんと断れるようになると思います。

偽装請負は奴隷制度のように顧客の言いなりになってしまうような状態を作ってしまったり、非効率的なやり方が蔓延して生産性を著しく低下させてしまっていたり、IT業界の諸悪の根源です。

偽装請負を解消し、「顧客の責任は顧客に取らせる」ということを当たり前にできるようになった時、IT業界の業務効率化は劇的に進み、労働時間は大幅に削減され、生産性は飛躍的に向上するはずです。

IT業界を良くするためには偽装請負をまずは消滅させなければ何ともならないのですが、いつか国の偉い人たちに届いて偽装請負を厳しく取り締まってもらえるように、これからもしつこくブログでこの現状を発信していこうと思います。