システム開発の仕事をしていると(SESはシステム開発の仕事ではない)、営業とエンジニアが対立している場面って結構よく見かけますよね。営業とエンジニアが中々お互いの立場を理解し合うことができず、喧嘩みたいになってしまうことが多いようです。
エンジニアの立場からすると自社の営業の人を「敵」と認定するほど、営業の人を嫌っている人も結構多いと思います。私もエンジニア出身ですからその気持ちはよくわかります。お前が勝手なことばかり言って無責任なことするせいでエンジニアの俺らが地獄見てるんだよという気持ちになるんですよね。
でも営業には営業の言い分だってありますね。その点は会社を設立して自分で営業もする立場になって理解できました。営業は営業で会社のために数字を達成しようと必死なんです。中には本当に無責任でダメな営業もいるかもしれませんが・・・。
システム開発の仕事に限らず(SESはシステム開発の仕事ではない)、営業とエンジニア、あるいは他の部署間でもしっかり連携することは仕事を進める上で大切なことです。喧嘩してお互いいがみ合っているようではスムーズに仕事が進んでいきません。
他社の事例も含めて私が見聞きしてきた中で、なぜシステム開発の仕事では営業とエンジニアの仲が悪いのかを考えてみました。(くどいようですがSESはシステム開発の仕事ではない)
営業ができないことを「できます」と言ってしまう
営業がエンジニアにきちんと事前相談することもなく、顧客から「できますか?」と聞かれたことに対して「できます」と適当に言ってしまうことによって後々トラブルになることがあります。
エンジニアからすると技術的にできないことはできないと言ってもらわねば困るのに、営業が勝手にできますと顧客に言ってしまい、しかも後でそのことで顧客から詰められるのが自分達エンジニアだったりすると、営業に対する怒りのボルテージは一気に上がっていきます。
そもそも自社のサービスを売ってくる役割を担っている営業が、自社が提供できるサービスで「できること」「できないこと」をまともに把握できていないことは大問題です。これでまともな営業ができるわけがないです。
システム開発というものは形のないものを作っていくオーダーメイド型のサービスですが、「できること」「できないこと」を把握していないということは、自分達の商品の商品知識を持っていないことと同じです。そんな営業は全く信頼できませんよね。
仕事を受注するためには顧客の前で印象を良くしなければいけないのはわかりますが、できないことをできると言っても後で問題になるだけですし、その問題のツケを払わされるのがエンジニアとなると、営業がエンジニアから嫌われる要因となります。
ちなみにアクシアでは専属の営業スタッフはいません。我々が提供しているシステム開発というサービスの商品知識とは技術そのものであり、技術を理解しないまままともな営業を行うことは困難だと判断したからです。このやり方が正解かどうかはわかりませんが、今は技術のわかる(商品知識のある)エンジニアが営業も行う体制としています。
営業が無茶な納期と金額で受注してきてしまう
営業がエンジニアの合意を得ることもなく、無茶な納期と金額で仕事を受注してきてしまい、エンジニアが残業まみれで対応しなければならない事態に陥ることがあります。営業がこういうことをすると本当にエンジニアの反感を買い、エンジニアから恨まれることになります。
エンジニアが残業することを前提とするようなスケジュールの案件を勝手に営業が受注してきてしまうのに、エンジニア側には一切それを拒否する権限が無いことが多いです。エンジニア側からすると、事前に納期や金額が現実的であるかどうかの事前確認くらいはしてもらいたいものです。
以前私が勤めていた会社では、最初から無茶な納期の案件を営業が受注してきたためにエンジニアが休日出勤を避けられない状況となってプロジェクトが炎上しているにも関わらず、無責任な受注をしてきた営業の人は休日ライフをエンジョイしているということがありました。
もちろん営業の人が休日に出勤してきたからと言ってできることなど何もありませんから休日出勤してくる必要はないのですが、エンジニア側としては納得いきませんよね。不条理ですよね。何でお前のせいで自分達が休日出勤で苦しんでいるのにお前は休日ライフを楽しんでるんだ?となりますよね。
どんなに優秀なプロジェクトマネージャーであっても、営業が受注してきた段階で無茶な納期と金額だったら「もう無理ぽ」と言うしかありません。
営業が売上の数字だけ見ていてそこにだけ責任を負わせると、不当に安い金額で受注してくるということが起きてしまいます。受注後のプロジェクトのことなど一切気にせず、失注してしまうくらいなら大幅に値引きしてでも受注してやろうと考えてしますからです。
自分の営業成績(売上金額)だけ気にする理不尽な営業に日々怒りを感じているエンジニアの方は相当多いのではないでしょうか。
エンジニアがすぐに「作り直しましょう」と言う
今度は営業サイドに立った視点で見てみます。エンジニアに事前相談をしっかりと行う営業だった場合、顧客からヒアリングしてきた結果を元にエンジニアと対応方法について相談することになります。
顧客の既存システムに問題があり、その課題を何とかして解決したいという案件だった場合に、既存システムの中身をそんなに吟味することもなく、エンジニアって結構簡単に「作り直しましょう」と言う人が多いんですよね。
エンジニアがすぐに「作り直しましょう」「作り直した方が早いですよ」と言うのは、既存システムを解析して手直しするのが面倒くさかったり、既存システムを改修するよりも新規でシステム構築した方が楽しかったりするからです。
そんな理由?と思う方もいるかもしれませんが、エンジニアにとっては新規でゼロからシステム開発できる仕事は楽しいのです。新規開発の仕事をやりたいのです。これは私もエンジニア出身なので断言できますが間違いありません。
でも営業サイドとしてはエンジニアから安易に「作り直しましょう」と言われると非常に困ります。一般的に既存システムを改修するよりも新規システムでリニューアルする方がお金がかかるからです。他の競合企業との競争に勝ち、受注まで持っていくためには新規リニューアルだと金額や時間の面でネックになる可能性が上がります。
もちろん本当に作り直した方が良いケースもたくさんあるわけですが、顧客や自社の営業のことを考えずに自分達のエゴですぐに「作り直しましょう」というエンジニアは営業サイドからすると正直とても迷惑です。
もうちょっと協力してくれよと思われてしまっても仕方ありません。それでも営業サイドからすると自社のエンジニアに頼るしかないわけですから。
エンジニアが顧客折衝の立場を理解しようとしない
エンジニアは仕様検討する会議などでは顧客と直接接することもありますが、基本的に顧客の矢面に立つのは営業です。顧客と直接接していると色々な事情に直面することになります。単に開発を自分達の好きなように進めることが仕事ではありません。
顧客と直接接するということは、顧客との間に様々な約束事が発生するということです。顧客から色々な要求を突きつけられることもあります。
その時に社内のエンジニアが適当な対応を取ったことによって、顧客と約束した納期が守られない、顧客に連絡しなければいけなかった調査が行われていない、顧客から要求されているサービス品質が提供できていない、というようなことにでもなれば、営業が顧客からお叱りを受けることになります。
営業としては顧客との約束を守ることに必死ですが、エンジニアが自分達の担当しているプロジェクトの先にいる顧客の姿をイメージすることができず、果たすべき責任も果たさずに適当な対応を繰り返していれば、営業としてはエンジニアに対して怒りを感じることもあるでしょう。
営業は顧客の矢面に立って色々と苦しい思いをすることもあるということは、顧客と直接接することのないエンジニアでも理解しておく必要があります。
営業とエンジニアがお互いを尊重していない
世の中にはエンジニアのことを下に見る営業の人って結構多いです。このことは自分で会社を作って色んな会社の人達と接するようになってから強く感じるようになりました。特に営業畑でずっと育ってきた人の中にはエンジニアのことを見下している人は結構多いです。
俺らが仕事を取ってきてエンジニアを食わせてやってる、エンジニアの仕事なんて誰でもできるでしょ、みたいなことを平気で言う営業の人は割といます。口にははっきり出さずともそういう態度を醸し出す人もいます。
当たり前ですがそういう営業の人はエンジニアからものすごく嫌われますよね。私もエンジニア出身ですので、エンジニアを見下したりバカにしたりする人は大嫌いです。
でもエンジニアの中にも、俺らがいないと営業のやつらなんて何もできないとか、営業で仕事取ってくるなんて誰にでもできるみたいなことを言う人がいるんですよね。エンジニアを見下す人のことをエンジニアが嫌うのと同じように、こうやって営業を見下すようなエンジニアは間違いなく嫌われますね。性格悪すぎ。
営業もエンジニアも両方ないとシステム開発の仕事は成り立ちません。どちらが偉いとか偉くないとかそういう話ではなく、お互いにそれぞれ役割分担があるだけです。お互いの仕事内容は尊重されて当たり前です。
そういう当たり前のことがわからない営業やエンジニアによって、営業・エンジニア間の軋轢を強くしてしまっていると言えます。
営業とエンジニアがチームとして機能していない
営業もエンジニアも一つの役割であって、別々のチームというわけではありません。一つのプロジェクトを成功させるためには、チームとして機能する必要があります。営業とエンジニアの仲が悪いチームというものは、チームとしてまともに機能していません。
納期や金額について、総合的に判断して割引をしたり現実的な範囲で短納期にした方が良いケースもあります。エンジニアのことを無視して営業が勝手に無茶な納期や金額で受注してもうまくいきませんし、営業的な事情を一切無視してエンジニアが納期や金額の相談を突っぱねていてもうまくいきません。
そこはチームとしてどのラインを落とし所とするのかについて、よく協議する必要があります。この辺のコミュニケーションがうまくいっていないと、営業とエンジニアの関係はギクシャクしたものになってきますし、仕事もうまく進まなくなってきますね。
営業もエンジニアも一緒に成果を出していく1つのチームなので、そこに対立構造を生み出しても結局誰も得しません。営業やエンジニアを目の敵にしている人は、そんなことしても自分自身も何も得しないので少しやり方を考え直した方が良いと思いますよ。