システムは、作って完成したら終わりではありません。新しいシステムを導入することで業務の効率化や顧客体験の向上を実現する一方で、運用を続けていくためのランニングコストが生じます。
システム開発後のランニングコストは、長期にわたって必要となる費用です。そのため、ランニングコストについての正確な理解がないと、予期せぬ出費や運用上の問題が生じるリスクが高まります。
この記事では「知らずに損してしまった」を防ぐために、システム開発後のランニングコストの具体的な内容を紹介します。
また、コストを最適化するための戦略についてや、運用に関する我が社の取り組みについても詳しく解説していきます。参考になりましたら幸いです。
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システム開発の背景とランニングコストの意義
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が各業界に広がりを見せています。この背景には、消費者の行動やニーズの変化、競合との差別化を図るための新しいビジネスモデルの導入、業務の効率化や生産性向上の必要性などが挙げられます。これらの変化に対応するため、多くの企業がシステム開発を進めています。
しかし、システムを開発・導入する際には初期投資だけでなく、開発完了後の運用・維持に関するコストも考慮する必要があります。これがランニングコスト(運用コスト)です。
ランニングコストはシステムのライフサイクル全体で見ると、初期開発コストを上回ることも少なくありません。そのため、ランニングコストを適切に管理・最適化することは、長期的なシステム運用の成功にとって非常に重要です。
ランニングコストの意義を理解することで、企業は未来のリスクを回避し、持続的なシステム運用を実現することができます。また、コストを効果的に管理することで、予算を他の革新的な取り組みやビジネス拡大に活用することが可能になります。
システム開発後のランニングコストとは
ランニングコストは、システムを安定して運用するための必要不可欠な投資です。以下のような要素から構成されることが一般的です。
- サーバー費用
- ドメイン費用
- SSL証明書費用
- 保守費用
- 追加開発費用
これらのコストは、システムの規模や複雑さ、使用している技術やツール、外部サービスの利用状況などによって変動します。ランニングコストを適切に管理することで、システムの長期的な安定運用を実現し、企業のビジネスをサポートすることができます。
サーバー費用
システムやウェブサイトを運用する上で、サーバーは中心的な役割を果たします。サーバーは、データの保存、アプリケーションの実行、ユーザーからのリクエストへの応答など、システムの基盤となる機能を提供します。
近年、多くの企業がクラウドサーバーを選択しています。ほとんどのクラウドサーバーサービスは、使用した分だけ毎月支払う従量課金制を採用しています。(一部そうでないサービスもあります)ストレージ、計算能力、ネットワークトラフィックなどの利用量に基づく料金が発生します。
コストの相場は月額数千円〜数万円程度である傾向にありますが、これより高くなることもあります。構成によっては数百万円かかることもあります。
長期的な運用を考慮した際のコストをしっかりと把握し、適切なプラン選択やリソース管理を行うことが重要です。
ドメイン費用

ウェブサイトやオンラインサービスを公開するためには、ドメイン名の取得が必要です。ドメイン名はインターネット上の住所のようなもので、ユーザーがウェブサイトにアクセスする際の識別子となります。Webサービスを構築する際、サイトの信頼を得るために多くの場合は独自ドメインを取得します。
コストの相場は年額で1,000円〜1万円程度である傾向にありますが、これより高くなることもあります。ドメインのコストは以下の要因によって異なります。
ドメインの拡張子
.com
、.org
、.net
など、ドメインの拡張子によって価格が異なります。また、地域や国に特化した拡張子(例:.jp
、.uk
)も存在し、これらの価格も異なります。
登録業者
ドメインを取得・管理する業者によって、価格やサービス内容が異なります。
登録期間
一般的には1年ごとの更新が必要ですが、複数年の登録を一度に行うことも可能です。
プレミアムドメイン
一般的なキーワードや短いドメイン名など、需要が高いドメインはプレミアムドメインとして高価になることがあります。
ドメイン名は、ブランドやビジネスのアイデンティティを表す重要な要素です。適切なドメイン名を選択し、それに伴うコストを管理することは、オンラインでのビジネス展開において非常に重要です。
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SSL証明書費用
インターネット上でのやりとりは、第三者に盗み見られるリスクがあります。
ウェブサイトやオンラインサービスを安全に運用するためには、SSL証明書の導入が不可欠です。SSL証明書は、ウェブサイトの通信を暗号化し、データの安全性を保護するためのものです。これにより、ユーザーの情報が第三者に盗まれるリスクを大幅に減少させることができます。
SSL証明書を導入したWebサイトは、URLが「https://」から始まり、ブラウザのアドレスバーに運営者情報が確認できる鍵マークが表示されるようになります。

コストの相場は年額で1,000円〜3,000円程度で済む傾向にありますが、数万円になることもあります。SSL証明書のコストは以下の要因によって異なります。
証明書の種類
ドメイン認証、組織認証、拡張認証など、証明書の種類によって価格が異なります。
発行者
証明書を発行する企業や機関によって、価格やサポート内容が異なります。
有効期間
一般的には1年ごとの更新が必要ですが、複数年のライセンスを購入することも可能です。
ワイルドカードや複数ドメイン対応
一つの証明書で複数のサブドメインやドメインをカバーする場合、追加のコストが発生することがあります。
SSL証明書の導入は、ユーザーの信頼を獲得し、ビジネスの信頼性を高めるために重要です。しかし、適切な証明書を選択し、コストを管理することも必要です。
保守費用
システムが完成して運用が開始されてから、システムに予期せぬ事態が起きる場合があります。そのようなときにとても重要なものが、システム保守です。
代表的な保守業務は以下の5つです。
データバックアップ(データ保全)
データが消えてしまったときに備えて復元用のバックアップを取得します。
システムモニタリング(システム監視)
システムが正常に稼働しているか24時間、365日見守ります。異常を察知したらアラートを飛ばし、対策を行います。被害を拡大させないために必要な業務です。
セキュリティーアップデート
利用しているOSやツールに配布されるセキュリティパッチを確認する作業です。例えば、WordPressの本体アップデートやプラグインアップデートなどが対象になります。
最新バージョンにアップデートすることでセキュリティを強化し、安心して使える状態を保ちます。
ミドルウェアアップデートの提案
システムを動かすためのサーバーソフトやプログラム言語の実行環境などのバージョンが古くなった場合、配布元からのサポートが終了します。サポートが終了する時期を把握し、アップデートを提案することを保守業務として行います。WordPressで例えるならば、PHPのバージョンアップデートがミドルウェアアップデートの対象です。
アップデート作業はプログラムの改修が伴うことや、システムの全体的な動作再試験が必要になる背景から、保守契約とは別の契約にて対応することが多いです。
問い合わせ対応
日々システムを使用していて、利用方法が不明な場合や、使い勝手面での改善要望、不都合・不具合連絡を受け付ける業務です。
本当にシステムを有効活用するには、保守の中で発生した問い合わせ内容からシステムの改善にフィードバックしていくことが最重要であるとアクシアでは考えています。
これらによりシステムの問題やセキュリティの脆弱性を早期に察知し、対応することで、ビジネスの大損害を防ぐことができます。また、データの損失やシステムの停止などのリスクを最小限に抑えるためにも、保守は欠かせないものです。
コストの相場は月額で数万円程度が多い傾向にありますが、システムの規模や複雑さなどによって変動します。
下記の記事では、我が社での保守の活用事例や、保守を怠って起きてしまった失敗事例も紹介しています。こちらも参考になりましたら幸いです。
追加開発費用
システムが完成して実際に運用を始めてみると、要望や改善点が多く出てきます。開発に失敗したというわけではありません。完璧なシステムは、一発で構築できないのです。
なぜかというと、運用前にいくら要件定義を細かく行ったとしても、実際に運用してみてわかることがあるからです。また、時間の経過とともにその時必要とされている機能が変化していくことも理由の一つです。
よりよいシステムへと改善していくためには、ユーザーの声に耳を傾けながら、機能追加や仕様変更を行っていくことが重要となります。追加開発のコストは対応内容により大きく変動するため、一概には言えません。
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ランニングコストを最適化するためには
システムのランニングコストは、適切な戦略と取り組みを導入することで効果的に最適化することが可能です。以下は、ランニングコストを抑えつつ、システムの品質やパフォーマンスを維持・向上させるための主要な戦略です。
クラウドサービスの活用
近年、クラウドサービスは多くの企業にとって欠かせないインフラストラクチャーとなっています。AWSや、さくらのクラウドなどが有名です。クラウドサービスを活用することで、従来のオンプレミスのシステムと比較して、多くのメリットを享受することができます。
クラウドサービスは必要に応じてリソースをスケーリングすることができるため、過剰なリソースを持つことなく、必要な時に適切なリソースを利用することができます。ハードウェアの購入やメンテナンスのコストを大幅に削減することが可能です。
柔軟なスケーリング
スケーリングとは、システムのリソース(サーバー、ストレージ、ネットワークなど)を増減させることで、システムのパフォーマンスや容量を調整することを指します。
例えば、自社サイトへのアクセスが増加されると自動でサーバーを増やしたり、アクセス数が落ち着いてきたらサーバー稼働数を減らして元に戻したりといったことが容易にできます。また、自動でスケーリングが行える「オートスケール」機能を用意していることがほとんどのため、突然アクセス数が増えてもサーバーダウンなどの機会損失を防ぐことができます。
オンプレミスサーバーで行う場合は新たな機材を確保しなくてはならず、実現までに数日〜数週間を要します。
スケーリングによりトラフィックの増減に迅速に対応することができ、過剰なリソースを持つことなく最適な運用を実現できます。
コスト効率
初期投資を抑えつつ、使用したリソースのみを課金されるモデルが多いため、コストを効果的に管理することができます。
オンプレミスサーバーの場合、初期投資で以下のような機材を用意しなくてはならないため多額の費用が必要です。
- サーバー機材
- 配線用ケーブル
- 設置費用(設置場所の確保・賃料、設置する人件費)
- 無停電装置(停電した時にも稼働させるため)
- 冷却装置
- セキュリティ対策(部外者を入れないための装置など)
ランニングコストも、機材メンテナンス費用や電気代が継続的に必要です。費用だけではなく、管理する手間がかかります。クラウドサーバーならば、クラウドサービスプロバイダ(業者)が全て用意しており、機材メンテナンスもすべて行ってくれます。
高い可用性
多くのクラウドサービスプロバイダは、データセンターを複数の地域に持っており、障害時のリスク分散が可能です。
例えばAWSではデータセンターをアジア、北米、南米、欧州など世界中各地に構えています。これにより、もしもどこかのデータセンターで障害や災害が起きても、他の地域のデータセンターでリカバリーできるため、AWSのサービスを安定して受けることができます。
最新の技術へのアクセス
クラウドサービスプロバイダは、最新の技術やサービスを提供しており、これにより企業は新しい技術を迅速に取り入れることができます。
システムの定期監査
クラウドを選択したから安心、というわけではありません。クラウドはさまざまなサービスが簡単に利用できるため、気をつけないと費用が膨らんでしまう傾向があります。また、欲しいものをなんでもかんでも入れてしまうと、セキュリティリスクが高まってしまう可能性があります。
システムの運用においてその健全性やセキュリティを維持するためには、定期的な監査が不可欠です。また、監査時に見つけた不要なリソースやサービスを特定・削減することで、運用コストを最適化することができます。
システムの定期監査は、システムの現状を詳細に把握し、潜在的な問題やリスクを早期に発見・対応するための重要なプロセスとなります。以下に定期監査でどこをチェックすべきか、一例を紹介します。
パフォーマンスの最適化
システムの応答時間、トランザクションの処理速度、サーバーのCPUやメモリ使用率などのパフォーマンス指標を測定・分析などといったパフォーマンスチェックを行います。
パフォーマンスチェックを通じて、システムの過負荷やボトルネックを特定し、適切な対策を講じることができます。これにより、システムの応答速度や処理能力を最適化することが可能となります。
セキュリティの確保
システムのセキュリティ脆弱性のスキャン、不正アクセスのログ分析、セキュリティポリシーの遵守確認などといったセキュリティチェックを行います。
定期的なセキュリティチェックを行うことで、脆弱性や不正アクセスのリスクを早期に検出し、必要なセキュリティ対策を施すことができます。
コストの最適化
システムが使用するリソース(ストレージ、ネットワーク、CPUなど)の使用状況や効率を分析します。
リソースの使用量をチェックすることで不要なリソースやサービスを特定し、削減することで、ランニングコストを効果的に管理することができます。
コンプライアンスの確認
法律や業界の規制、企業の内部ポリシーなど、様々な基準に準拠しているかを確認し、必要な対応を行います。
システムの定期監査を行うことで、システムの健全性を維持し、長期的な運用の安定性を確保することができます。また、監査の結果をもとに改善や最適化の取り組みを進めることで、システムの価値を最大化することが可能となります。
自動化ツールの導入
継続的インテグレーションやデプロイ、システム監視、バックアップなどの業務を自動化することで、人的リソースのコストを削減し、作業の効率を向上させることができます。
現代のシステム運用において、自動化ツールの導入は、効率的かつ確実な運用を実現するための鍵となります。自動化ツールを利用することで、手動での作業に起因するミスを削減し、作業時間を大幅に短縮することができます。
これにより、システム運用の品質と効率を向上させることができます。また、人的リソースをより価値の高い業務に集中させることが可能となり、全体としてのビジネスの競争力を高めることができます。
これらの戦略を組み合わせることで、ランニングコストを効果的に最適化し、システムの安定した運用を実現することができます。また、コストの最適化だけでなく、システムの品質やセキュリティも向上させることが可能となります。
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我が社のランニングコスト最適化の取り組み
アクシアではお客様のビジネスをサポートするため、ランニングコストの最適化に注力しています。以下は、我が社が実施しているランニングコスト最適化の主要な取り組みです。
ニーズに合わせた提案
お客様のビジネスニーズや予算に合わせて、最適なシステム構成やサービスを提案します。また、保守の中で分析してきたクライアントのサーバー状況をもとに、改善点を見つけ出してご提案いたします。
例えば、長年同じ構成でサーバーを運用しているクライアントのサーバー状況を分析した結果、オーバースペックであることが判明しました。適切なスペックに設定し直すことで、月3万円程度のコスト削減を行うことができました。
このようにクライアントのサーバー状況を分析し、不要なリソースやサービスのコストを削減することで、効果的な投資を実現します。
長期的な保守サポートの方針
システムのライフサイクル全体を通じて、継続的なサポートやアドバイスを提供します。
これにより予期しないコストの発生を防ぎ、長期的な運用の安定性を確保します。
クライアントとの連携による運用改善
アクシアでは「運用開始してからが本番」というスローガンを掲げ、保守を重視しています。特に問い合わせ対応は保守の要だと考えており、クライアントからの「ここが使いにくい」「この機能が必要かもしれない」などといったフィードバックの収集を通じて、クライアントがより使いやすいシステムに改善していくことを心がけています。
これにより、システムの運用コストを継続的に最適化し、ビジネスの成果を最大化します。
番外編:スモールスタートのご提案
「ランニングコストの最適化」という趣旨から少し外れますが、システム開発全体を通じたコスト最適化のご提案を行っているので紹介します。
アクシアのクライアントの例を見ますと、システムの運用がうまくいっているクライアントほど、機能追加などの改修で追加のシステム開発が必要となるケースが多い傾向にあります。これは開発前に念入りに要件定義を行っても実際に運用しないとわからないことがあることと、時間の経過とともに必要とされている機能はどんどん変化していくからです。
そのため、アクシアがお客様にご提案する際には、その時絶対に必要な最小限の機能でシステムを初期構築し、スモールスタートさせることをおすすめしております。
欲しい機能を最初に全て盛り込んで、いざ運用を開始すると、使われない機能が出てきてしまうという失敗はよくあります。使われない、つまり、無駄なコストをかけて不要な機能を開発してしまったことになります。
そういった失敗を防ぐため、最小限の機能だけで実際にシステムを運用してみて、本当に実務で必要とされる機能だけを随時追加開発していくスタイルをアクシアではおすすめしています。
私たちはランニングコストの最適化だけでなく、システムの品質やパフォーマンスの向上にも注力しています。お客様のビジネスの成功をサポートするため、我が社との協力を通じて、効果的なシステム運用を実現していきます。
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まとめ
システム開発とその後の運用は、企業のビジネスを支える重要な要素です。ランニングコストは、システムの継続的な運用において考慮すべき重要なポイントとなります。この記事によって、ランニングコストの構成要素やその最適化の方法についての理解を深められましたら幸いです。
我が社は、ランニングコストの最適化をはじめとした様々な取り組みを通じて、お客様のビジネスの成功を全力でサポートしています。システム開発や運用に関するご相談や疑問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ
システム開発やランニングコストに関するご相談、その他の疑問や要望について、いつでもお待ちしております。お客様のビジネスの成功をサポートするため、専門知識を持ったスタッフが迅速かつ丁寧に対応させていただきます。
些細なことでも構いませんので、ご不明点やご質問がございましたら上記よりお気軽にご連絡ください。私たちとともに、より良いシステム運用を実現しましょう。