最終更新日:2023年11月24日
システムの引き継ぎは、やるべきことが多くあります。また、引き継ぎの際に必要な情報がうまく伝達できていないと、引き継ぎ後の業務やシステム改修の進行がスムーズにいかないこともあります。
そこでこの記事では、システムの引き継ぎにフォーカスを当てて紹介します。社内の引き継ぎだけではなく、システム開発会社へ引き継ぎを行う際のポイントもまとめました。
この記事で得られる情報は以下の通りです。
- システムの引き継ぎとは?
- システム引き継ぎ時に必要な準備・情報
- システム引き継ぎの流れ
- システム引き継ぎ時のポイント
- 引き継ぎを依頼するシステム開発会社(ベンダー)の選び方
- システム開発会社に引き継ぎを依頼する際の注意点
この記事がお役に立ちましたら幸いです。
アクシアでは他社で構築したシステムの保守引き継ぎを行っています。システムの引き継ぎでお困りの際はお気軽にご相談ください。お問い合わせフォームはこちら
システムの引き継ぎとは?
システムの引き継ぎは、別の管轄にシステムの管理を任せることを指します。「移管」と呼ばれることもあります。
システムの引き継ぎは、例えば以下のようなケースがあります。
- 社内の担当者交代による引き継ぎ
- システムの保守ベンダー変更による引き継ぎ(保守移管)
- システムに関わる業務を外部ベンダーにアウトソースすることによる引き継ぎ
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システムの引き継ぎ時に必要な情報は?
引き継ぎの際に伝えるべき項目が抜けていると、引き継ぎ後の業務やプロジェクトの円滑な進行がむずかしくなります。また、確認事項が増えて二度手間になってしまうこともあります。
伝え漏れのないように、必要な情報を洗い出してわかりやすいよう整理しておきましょう。
①引き継ぎ先の確保
社内の場合は、引き継ぎ先部署の確認をしておきましょう。
外部のべンダーに引き継ぐ場合は、ベンダー選定が必要です。他社で開発したシステムの引き継ぎは対応していないベンダーがほとんどです。また、引き継ぎ実績があったとしても、会社によって対応可能なプログラミング言語が違うため、プログラミング言語によっては引き受けられないこともあります。
引き継ぎ実績があるかどうか、依頼できるかどうかを事前に確認して依頼先を決めましょう。ベンダーを選ぶ際の細かなポイントは、後述の「外部ベンダーに引き継ぐ際の選び方、注意点」で詳しく解説します。
②関係者の洗い出し
どのような体制で業務を行っているのか、関係者を洗い出しておきましょう。社内だけではなく、社外のシステム関係者や連絡先まで洗い出し、情報をまとめておきましょう。
③システム概要の洗い出し
外部ベンダーに引き継ぐ場合、システム概要についてヒアリングされます。事前に洗い出してまとめておくとヒアリングがスムーズに行えます。
例えば、アクシアで保守移管の依頼をいただいた際はこのような事項をヒアリングします。
- これまでの開発経緯
- いつ頃つくったものか
- どれくらいの期間運用しているのか
- 作成にかかった価格帯
- 初期開発ベンダーとの関係性
- 現在の保守契約の契約内容
- システムの品質トラブルがどれくらい発生しているか
④仕様書(ドキュメント)の洗い出し
仕様書などのシステム開発当時の資料がある場合は、どのようなドキュメントがあるか、どこに保管されているか整理しておきましょう。
ドキュメント例:
- インフラ構成ドキュメント
……ネットワーク、サーバー、データベース、IPアドレスなどの構成書や設計書など - アプリケーション構成ドキュメント
……アプリケーションの構成書や設計書、機能仕様書など - 運用設計ドキュメント
……運用設計書、操作マニュアル、管理一覧、保守契約一覧…など
また、ドキュメントとしてそろっていなくても、分かる範囲で必要な情報を伝えられるように準備しておきましょう。例えばアクシアで引き継ぐ場合には、プログラミング言語は何が使われているのかなど、アクシアで保守できるシステムなのかどうか判断できる情報が必要となります。
⑤業務概要の洗い出し
どのような業務があるのか、全体像と業務の流れを洗い出しましょう。その業務の目的や経緯、関連情報も合わせて洗い出しておくと引き継ぎがスムーズに行えます。
洗い出しの時点で定例業務か・非定例業務かなど業務を分類したり、業務にかかる時間、業務の優先順位を書いておいたりしておくとよいでしょう。
業務を行う際の注意点など、業務ドキュメントに残っていない細かい部分も共有できる状態がベストです。細かい部分まで洗い出すことで、省略できる業務項目や新たな改善点が見えてくることがあります。
⑥現状の課題やトラブル内容の洗い出し
引き継ぎ時に残っている課題やトラブルがある場合は、洗い出して一覧化しておきましょう。
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システムの引き継ぎの流れ
システム引き継ぎの流れは、社内で引き継ぐときと外部ベンダーに依頼するときでは変わってきます。
- 業務内容の共有
- システム概要の共有
- 関係者の共有
- 現状の課題やトラブル内容の共有
上記は社内・社外共通で行います。外部ベンダーに依頼する場合はこれらの共有が終わった後に、ベンダーがシステムの中身を把握するための作業(初期解析作業)が必要になります。
引き継ぎの際には、前項で洗い出した情報をまとめた引き継ぎ書を用意しておくとスムーズです。
①業務内容の共有
どのような業務があるのか、手順はもちろん目的や経緯、関連情報も含めて共有します。
定例的な業務であるか、非定例的にある業務であるか、非定例的な業務はいつ発生するかなど、業務の年間のスケジュールも共有しておきましょう。
②システム概要の共有
システム導入の目的や、概要を共有します。
システム詳細に関するドキュメントが多い場合は重要なポイントだけ説明し、どのドキュメントがどこに保存されているかを伝えましょう。ドキュメント一覧を用意してどこを見ればよいか検索しやすいようにしておきましょう。
③関係者の共有
システムや業務に関係する社内・社外の人物を一覧化して共有します。引き継ぎ後に不明点が出てきたときに、誰に聞けばよいかわかりやすくしておきましょう。
④現状の課題やトラブル内容の共有
引き継ぎ時点で残っている作業やトラブル内容、これからシステムを改善していきたい箇所を共有します。
課題の内容だけではなく、重要度・優先度も合わせて共有し、どの課題から着手すれば良いかがわかりやすい状態にして共有すると引き継ぎ後の作業がスムーズになります。
⑤外部ベンダーに引き継ぐときは初期解析作業が必要
外部ベンダーに保守移管を依頼する場合は、上記の流れに加えて「初期解析作業」が必要です。初期解析作業とは、ベンダーが引き継ぐシステムをプログラムレベルで解析し、システムのすべてを把握する作業です。引き継ぎ後、トラブルが起きた時にすぐ対応できるようにするために行います。
初期解析作業を行わずに保守を請け負ってしまうと、何かあった時に適切な対応が取れなくなってしまいます。作業期間はシステムの規模や難易度により変動します。アクシアではおよそ1ヶ月程度いただくことが多いです。
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システム引き継ぎ時のポイント
システム引き継ぎを円滑に行うポイントを紹介します。
①コミュニケーションをよく取る
細かなノウハウも引き継げるよう密にコミュニケーションを取ると、引き継ぎ後のトラブルや共有漏れが格段に減らせます。口頭だけ、文章だけでの引き継ぎは避けましょう。
また、一方的に説明するだけでなく適度に質疑応答の時間を設けることで、後任者の理解が早く進みます。
②引き継ぎ書を用意する
引き継ぎ書を用意すると、伝え忘れを防ぐことができたり、引き継ぎ後の業務を標準化することができたりといった効果があります。
引き継ぎ書に書いておきたい内容:
- 業務概要
- システム概要
- ドキュメント一覧
- 関係者一覧(社内、社外含む)
- 業務手順
- 現状の課題やトラブル内容
引き継ぎ書には業務の目的、システムの導入目的も必ず記載しましょう。目的(なんのために行うのか、どのような形になれば完了なのか)が明確にわかることで、後任者が理解しやすくなります。
文章だけではなく図やスクリーンショットも入れるなど、誰が見てもわかりやすいような引き継ぎ書を作成できると円滑に引き継ぎを進めることができます。
③よくあるトラブルや今後の課題についてもまとめておく
よくあるトラブルや過去のトラブルについての事例もまとめておくと、同様のトラブルが発生した時に解決が早くなります。
④質問などの受付窓口を設定する
外部ベンダーに引き継ぐ際は必須です。窓口を作ることで情報の交通整理ができ、スムーズに情報交換をすることができます。
⑤スケジュール管理を徹底する
スケジュールがタイトだと引き継ぎが十分に行えず、トラブルが発生してしまうこともあります。余裕を持ったスケジュールを確保しておきましょう。
外部ベンダーに引き継ぐ際の選び方、注意点
システムを外部ベンダーに引き継ぐ際は、そのシステム保守の引き継ぎがあることがほとんどです。ここでは、システムの保守移管にフォーカスを当ててベンダーの選び方と注意点を紹介します。
ベンダーの選び方
企業のビジネスを支えるシステムの保守を行う際には、システム保守が継続して行われるということは非常に重要なことです。4つのポイントをおさえ、信頼できる会社を選びましょう。
- 保守対象の技術要件にマッチした会社であるか
- 組織・チームで対応してくれる会社であるか
- 窓口担当者のフットワークがよいか
- お客様目線で考えてくれるか
保守対象の技術要件にマッチした会社であるか
保守移管を検討しているシステムのプログラミング言語が、依頼したい会社で扱えるプログラミング言語とマッチしていないと、どんなにすぐれている会社に依頼しても保守移管は実現できません。システムの技術要件がマッチしている会社を選びましょう。
組織・チームで対応してくれる会社であるか
保守担当が1人しかいない場合、もしもその人に何かあった場合に保守ができずにシステムが止まってしまう、という最悪の事態も考えられます。持続可能な保守が受けられるよう、複数人体制で保守にあたってくれる会社を探しましょう。
窓口担当者のフットワークがよいか
システム保守で一番大事なものはスピードです。運用中のシステムに何かあったときには、とにかく早く対応をしないとどんどん被害が拡大してしまうこともあります。コミュニケーションが迅速に取れる会社を選びましょう。
お客様目線で考えてくれるか
保守移管を検討しているお客様はネガティブな問題を抱えていることが多い傾向にあり、その問題を取り除くのが最低ラインだとアクシアは考えています。さらにお客様に寄り添って、問題を解消するだけではなくプラスアルファでより良い提案をもらえる会社が望ましいと考えます。
ベンダーに依頼する際の注意点
契約内容をよく確認しましょう。
- どこまでが保守の対象なのか
- 対応する体制について(2人以上の体制が望ましい)
- サポート時間、サポート時間外の対応について
また、現在も外部ベンダーに保守を依頼している場合、つまり外部ベンダーAから外部ベンダーBに切り替えを行う場合は、外部ベンダーAと契約した内容の確認も必要です。
- 現在の契約の更新期日
- プログラムの著作権について
- バグの取り扱いについて
詳しく解説していきます。
どこまでが保守の対象なのか
保守とは、システムが動き続けるために必要なシステムメンテナンスや、システムの監視を行うことです。保守という一般的な定義には、開発や運用は含まれません。例えば、「検索項目を追加してほしい」「毎月バナーを更新してほしい」などの依頼は保守には含まれません。
どこまでの範囲が保守の対象なのか、契約前に確認しておきましょう。
対応する体制について
フリーランスの個人の方や、法人であっても個人に業務が属人化していることが多いです。その人が病気や退職をしてしまったときにシステムがわかる人間が誰もいなくなってしまって困った、というご相談をアクシアではよく受けます。
1人に何かあったときにもシステム保守が止まらないよう、2人以上の体制で対応してくれるかどうか確認しておきましょう。
サポート時間、サポート時間外の対応について
サポート時間の確認と、サポート時間外はどのような対応をしてもらえるのかを合わせて確認しましょう。
ベンダーを切り替える場合:現在の契約の更新期日
現在も外部ベンダーに依頼しているのであれば、その外部ベンダーと交わしている契約内容も確認しましょう。
例えば1年更新の契約になっている場合、保守ベンダーを切り替えるタイミングによっては契約更新費用が無駄に発生してしまうこともありえます。
無駄な費用発生を防ぐため、現在の契約の更新期日はいつ頃なのかを確認してください。現行の契約の更新期限までにベンダー切り替えを間に合わせられるよう、余裕を持ったスケジュールで進めていきましょう。
ベンダーを切り替える場合:プログラムの著作権について
契約内容によっては、プログラムの著作権が問題になることもあります。
契約時に著作権の取り決めをしていない場合、著作権はそのシステムを開発したベンダー側にあります。この状態のまま自社や外部ベンダーなどでプログラムの改変(翻案)を無断で行ってしまうと、そのシステムの差止請求をされる場合があります。
このように著作権の問題で移管できない場合には、リニューアルを検討しなければならない場合もあります。
ベンダーを切り替える場合:瑕疵(バグ)の取り扱いについて
瑕疵については、そのシステムを作成したベンダーに1年間の瑕疵担保責任があり、個別契約で瑕疵担保期間を延⻑していることも想定されます。他社に保守を移管した場合、瑕疵担保期間が残っていたとしても移管先には移管時に潜在していた瑕疵についての担保責任はありません。
移管後に、移管後のベンダーが手直しを行った部分については瑕疵担保責任は発生します。
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システム引き継ぎ時のポイントは?まとめ
システムの引き継ぎを成功させるには、伝えるべき情報の洗い出しと、密なコミュニケーションが重要です。後任者がわかりやすいように意識して引き継ぎを行うと、引き継ぎ後も円滑に業務が進むことでしょう。
外部のベンダーにシステム引き継ぎを依頼する際は、契約事項をよく確認することがとても重要です。特にベンダーの切り替えを行う際は、そもそもそのシステムが移管できる状態なのか、更新期日に余裕があるか、移管先で対応できる技術要件なのかをよく確認しておきましょう。
アクシアは他社システムの引き継ぎに対応しており、豊富な実績があります。Java、PHP、Rubyで構築されたWebシステムに対応しています。システムがどの言語で開発されているかわからない場合もお調べできますので、システムの引き継ぎでお困りの際はお気軽にご相談ください。
※アイキャッチ画像はhttps://web-sozai.comさんのイラストを使わせていただきました。