「IT業界では当たり前」と言われるほど蔓延している、長時間の残業…。この記事では、なぜシステム開発会社では長時間の残業が発生してしまうのか、残業を削減する方法、残業削減によるメリットについてまとめました。
また、2012年10月から残業ゼロを継続しているアクシアでは、どのような取り組みを行っているのかをご紹介します。この記事がお役に立ちましたら幸いです。
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なぜ残業が起こってしまうのか
なぜ残業は発生してしまうのでしょうか。想定される理由を挙げます。
無理な見積もり・納期設定
営業サイドと開発サイドでもっともギャップが生まれてしまい、問題に上がるのが見積もりと納期の設定です。営業サイドは受注目標があるため、開発側の合意が不十分なまま無理な見積もり、または無理な納期設定での受注をしてしまうことがあります。そのしわ寄せが開発側にまわってきて、残業をしないとうまくプロジェクトが進行しない事態が発生します。
進捗状況が正しく把握できていない
進捗状況が正しく把握できていない状況におかれると、納期直前になって間に合わせるための残業が発生します。例えば、以下のような状況が起こっていると残業が発生しやすくなります。
- プロジェクトの進行中に現在遅れているのか、前倒しで進んでいるのか正確に把握できておらず、数か月先の納期に向かってなんとなく作業している
- ゴールまでのタスクが見える化されていない・共有されていない
- 実はこんなタスクもあった!という抜け漏れが次々と見つかり、スケジュールの修正を繰り返す
インシデント対応
進行中に他のプロジェクトでインシデント対応(割り込み対応)が入ってしまった場合、注意が必要です。インシデント対応をすることで進行に遅れなどの影響が出た場合に、軌道修正を行わずそのままのスケジュールで進行してしまうと無理なスケジュールとなり、残業が発生してしまいます。
残業を削減する方法
納期設定時
営業の開発の見積金額、スケジュールの妥当性の不一致は発生しやすい傾向にあります。営業側は他社と競争しているため、価格面・スピード面でアドバンテージを取りたいという心理が働き、開発側ではさまざまなリスクを想定して見積もりを行いたい(=できるだけゆとりを設けておきたい)という心理が働きます。
いずれにせよ、営業と開発で展開される議論は「〜かもしれない」「〜だと思う」「〜できるはず」という憶測や偏った経験から議論されることが多く、空中戦になりがちです。開発側も憶測ではなく事実に基づき主張が必要です。
また、協議段階では不確定要素、未決定事項も多いのが通常です。このような場合は、開発側が前例となるプロジェクトの事例を出して根拠をつけるか、未確定事項については「〇月末までにこのような状態で決定できれば、この予算、納期でOKだが、それが異なる場合は、再見積もりやスケジュールの見直しが必要」などと前提条件を付けて営業側がお客様と正しく合意を取れる情報を出すとよいでしょう。
営業側もお客様の背景を説明し、事業計画として「〇月までにローンチしないと他社にシェアを奪われるリスクが高まる」など、お客様の事情をしっかり共有するようにしましょう。共有することで、開発側から優先度の高い機能からローンチするスケジュールの提案が受けられることがあります。
また、予算面でも営業戦略として継続的な受注を狙っており、会社として初回の受注は赤字覚悟で⻑期的に黒字化する計画が承認されている場合、しっかり社内で共有し、赤字部分の責任を開発側のみに押し付けることがないようにしましょう。
無茶な見積もりと納期は残業が発生してしまう原因となるため、営業側と開発側の情報共有はしっかりと行い、互いに納得のいくスケジュールを設定して残業発生を未然に防ぎましょう。
進行中の進捗管理
以下の対策を実施し、進行中のスケジュールをこまめにメンテナンスすることが残業削減の鍵となります。
- すべてのスケジュールを可視化したうえで、それぞれの進行度合いを正確に把握する
- 自己申告の進捗報告にドキュメントレビューやコードレビューを実施する業務フローとして、実態と合っていない進捗報告がされない状態にする
- 計画にどおりの進行とならないことを「当たり前」と認識し、都度軌道修正(担当者変更、追加、タスクの細分化)を実施することがプロジェクトマネージャーの役割とする
進行中の変更管理
仕様変更、機能追加の要望があった場合に、当初の見積外の範囲であれば必ず追加の受注をするようにしましょう。
仕様変更、機能追加の要望があった場合にスケジュールをメンテナンスし、変更後の納期への影響を確認し、影響がある場合は顧客を含めて変更の合意を取るようにしましょう。
イレギュラー発生時の軌道修正
対象のプロジェクトのお客様都合である場合は、納期への影響を確認し、影響がある場合はお客様を含めて変更の合意を取るようにしましょう。
対象のプロジェクトのお客様以外の都合である場合は、社内のリソースでの都度軌道修正(担当者変更、追加、タスクの細分化)を実施するようにしましょう。
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残業削減によるメリット
睡眠時間と生産性の関連
労働時間が上がれば生産性が上がるように思いがちですが、過密労働により睡眠時間が削られることでミスが多くなってしまい、逆に生産性が落ちることがあります。
アクシアの場合は2012年の10月に、終電まで仕事をしていた状態から一気に残業ゼロにする取り組みを行いました。残業まみれだった2012年9月と、残業ゼロになった2012年10月の生産量を比較してみると、なんと2012年10月の方が27%も生産性が向上していました。
詳しくは以下の記事にて紹介しています。
人材採用
残業ありきだと、残業ができない人が採用の対象からこぼれ落ちてしまいます。例えば優秀な元エンジニアの主婦の方など、素晴らしい人材を雇用する機会損失につながってしまいます。
アクシアでは「スキルを活かして働きたいと考えていたが、残業がありきの求人がほとんどなので、応募を見合わせていた」という元エンジニアの主婦の方が多く入社し活躍しています。
ワークライフバランス
残業削減をすると、ワークライフバランスを考慮した働き方が可能になります。アクシアでは、子育てに積極的に参加したいと考えている社員が自分のライフスタイルに合わせて労働時間を決め、仕事とプライベートのバランスを自身のライフスタイルに合わせて働ける環境となっています。
アクシアの残業ゼロに対する4つの取り組み
アクシアでは、以下の4つの切り口で業務の効率性を上げる取り組みを実施してきています。
1.情報が可視化されているか
進行中のスケジュールはすべて生産性管理システムに登録し、可視化(見える化)します。
可視化されていないと、「実はこんな作業もあった」と抜け漏れが発生しやすくなり、立てた計画がひっくり返ってしまうことがあります。プロジェクトのゴールに向けて必要なすべての情報が、メンバー全員に見える状態をキープするようにしています。
2.無くせる仕事がないか
形式的、慣例的に実施している作業が本当に意味があるのかを見直すようにしています。無駄な作業があれば廃止、または、必要な作業のみを実施するなど、「無駄なことはしない」取り組みを行っています。
例えばアクシアでは、以前は毎朝10分くらいかけて行なっていた進捗ミーティングを廃止しました。生産性管理システムを導入してから、進捗は毎日最新の情報を誰でも見れるようになりましたし、問題が起こったらその都度相談しながら解決しているため、毎朝ミーティングの時間を設けることが無駄という判断をしました。
3.自動化できる仕事がないか
単純作業や定型的な作業は、自動化できるプログラムを開発するなどして、人間の実施する作業を可能な限り自動化しています。全部自動化が難しい場合でも部分的に自動化するなど、作業を細かく分解して自動化の難易度を下げることも重要なポイントとなります。
4.仕事の標準化ができているか
複雑な仕事でも作業を分解して、標準化できる(だれでもできる)部分を抽出し、複数人で作業を進行できるようにすることが重要です。
例えばシステム設計作業では、設計の土台となる入力項目の洗い出し作業や、UI設計の土台となるワイヤーフレームの作成など、100%のうちの6割、7割の作業を非エンジニアでもできる状態にしています。これによってエンジニアが検討すべき設計作業のみに注力できる状態を作っています。
このように作業を細分化することで、標準化できる部分が見つかります。
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生産性管理システムについて
アクシアが独自に開発した「生産管理システム」により以下の3つを実現しています。生産性を図る尺度として、現在では売り上げに対する貢献度を一つの指標としていますが、この指標だけでは測れない生産性もあることから都度システムを評価し、改善の計画を立てています。
情報の可視化
前項の「情報が可視化されているか」で述べたとおり、プロジェクトのゴールに向けて必要となるスケジュールをすべて登録し、関係者全員が見れるようにしています。
具体的には、社員一人ひとりの生産性の数値がシステムで見える化されています。情報が数値で見える化されていることで、今日するべきタスクがひと目でわかる上、チームメンバーがどのタスクを持っているかも把握することができます。
問題が起きた場合でも自発的に対策を考えることができますし、チームメンバーにもすぐに問題に気付いてもらえるため、早めの段階で解決することができます。
進行途中での軌道修正
計画どおりの進行とならないことを、「当たり前」と認識し、都度軌道修正(担当者変更、追加、タスクの細分化)を実施することがプロジェクトマネージャーの役割としています。
日々の生産性をリアルタイムで見ることができるようにすることで、プロジェクトマネージャーは早いタイミングで適切なマネジメントを取ることができるようになり、社員も問題があれば自ら気づくことができるようになり対応がしやすくなります。
生産性の可視化
生産性管理システムに進捗登録を行うことで、売り上げに対するそれぞれのメンバーの消化工数が自動計算され、数値指標として出力されます。この指標をチームごと・個人ごとに目標数値を定め、目標数値の達成度合いを週次、月次、四半期ごとに振り返り評価しています。
社員は毎日の日報登録をする時に日報登録画面を開くと、そこにその日割り振られているタスクが一覧で出てきます。表示されたタスクごとにその日の進捗を登録していくと、自動集計されて生産性の数値が表示される仕組みです。日報登録時に計算されるので毎日最新の情報で更新されます。
毎日自分の生産数値を見ることができるため、何をどこまでやればどれくらいの生産性となるのかを社員が自分で知ることができます。また、その日の仕事のゴールがわかることでモチベーションアップにつながります。
システム開発会社の残業削減はできる?まとめ
残業が発生する主な原因は、スケジュールが厳しい状態にありながら軌道修正せず、そのまま進行してしまうことです。スケジュールを残業ありきで組んでしまうため、いつまで経っても残業はなくなりません。
繰り返しになりますが、「計画どおりの進行にならないのは当たり前」という意識を持つことが大事です。進行中のプロジェクトのスケジュールをこまめにメンテナンスして軌道修正することで、納期直前に一気にタスクが押し寄せて残業が生まれてしまうことを防ぐことができます。
こまめに軌道修正を行うためには、進捗状況の正確な把握が重要となってきます。アクシアでは進捗状況を正確に把握するために、自社で開発した「生産性管理システム」を利用して、個人の進捗状況や誰がどのタスクを持っているかを見える化しています。
その他の残業削減方法として、アクシアの残業ゼロに対する4つの取り組みを紹介しました。この4つは、アクシアの徹底した業務効率化の集大成ともいえます。しかし、一番重要なのは業務効率化を徹底することではなく、残業削減に本気で取り組む覚悟です。
詳しくは以下の記事にて紹介しています。
アクシアの残業ゼロに対する数々の経験や取り組みが、残業削減のヒントになりましたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。