労働時間が増えると生産性だけではなく生産量も落ちる可能性


労働時間と売上の関係について話をする時に、労働時間と売上は比例する前提で考えている方が結構多いようです。労働時間と売上は比例するのだから、労働時間を増やせば売上は増加するし、労働時間を減らせば売上は減少するというシンプルなロジックです。

竹中平蔵×ムーギー・キム 師弟対談 『最強の生産性革命』発刊記念。働き方改革を斬る!

こちらの記事によりますと、竹中平蔵さんも下記のように発言しておられます。

企業のシステムを変えずに全労働者の労働時間を10%減らしても、GDPが10%減るだけ。

もちろんGDPは様々な要因が複雑に絡み合って数値が上下するものであり、単純な比例関係ではないにせよ労働時間を減らすことによってGDPに影響するということをわかりやすくシンプルな例として竹中平蔵さんはこの話を出されただけだと思います。この部分だけを切り取って竹中さんを批判するやり方はフェアなやり方ではありません。

労働時間と売上(生産量)の話をするのであれば、そこには生産性も要素として加えなければなりません。こんなに単純な話ではないことは重々承知の上でこの辺りの内容を式に表すと下記のようになります。

生産量 = 生産性 × 労働時間

これを見ただけでも、単純に労働時間を増やしただけでは生産量が必ずしも増加するわけではないことをおわかりいただけますでしょうか。

労働時間を増やせば生産量が増えるはずだという主張は、「生産性が低下しなければ」という条件付きです。労働時間を増やすことによって、また労働時間が増えた状態が継続することによって、生産性が低下していく可能性について考慮されていません。

ここで断言してしまいますが、

労働時間が増えすぎると生産性だけではなく生産量(≒売上)も落ちる

つまり状況によっては労働時間を減らした方が生産量(売上)が増えることもあるということです。このことについて説明をしていきたいと思います。

睡眠と生産性の関係

睡眠は仕事の生産性に大きく影響します。睡眠時間が不足すれば、それによって仕事の生産性はどんどん低下していきます。

睡眠不足による生産性の低下は想像よりもずっと深刻である

この記事では下記の内容について書きました。ソースは厚生労働省のウェブサイトにある資料です。

  • 起床後12~13時間が集中力を保てる限界
  • 睡眠不足が連日続くとさらに生産性は低下する
  • 作業効率が落ちているのに眠気を感じない
  • 知らないうちに作業効率が低下する
  • 睡眠不足が6~7日続くと3日十分寝ても効率は戻らない
  • 週末寝すぎると週明けの眠気につながる

睡眠不足によって生産性が低下することは誰でも経験上理解できると思います。中には睡眠不足だとトランス状態になって生産性が向上することもあるなどと意味のわからないコメントをしてきた人もいましたが・・・。

ここで重要なポイントは、睡眠不足の状態で仕事をするということは生産性が低い状態で仕事をすることになるという事実です。もう一度下記の式を思い出してください。

生産量 = 生産性 × 労働時間

睡眠不足の状態だとこの式の中の「生産性」の数値が落ちた状態で仕事をすることになりますから、単純に労働時間を増やしたところで思った以上の成果を出すことはできないということです。

さらに重要なことを言います。「睡眠不足が連日続くとさらに生産性は低下する」という事実についてです。

1日だけ睡眠不足の状態だったとしても生産性低下の被害は最小で済むかもしれません。しかし連日睡眠不足の状態が続いてしまうと、生産性の数値はどんどん低下していくのです。労働時間を1.5倍にしたとしても、生産性が1.5倍を超えるレベルで低下していたとしたら・・・?

そろそろおわかりいただけたでしょうか。短期間であれば労働時間を増やすことによって生産量を増加させることは可能ですが、労働時間が増えて睡眠不足の状態が連続してしまうと、生産性の低下に労働時間の増加が追いつかなくなり、いずれ逆転現象を起こして「労働時間を増やしたのに生産量が減少する」という状況が起きうるのです。

さらに恐ろしいことに「睡眠不足が6~7日続くと3日十分寝ても効率は戻らない」とあります。

一度睡眠不足で生産性が低下した状態が慢性化してしまうと、本来の高い生産性に戻すためには3日寝ただけでは不十分だということであり、簡単には元の状態に戻せないということです。これは週末に寝だめするという必殺技が無効であることを示しています。

週末の寝だめが無効であるどころか「週末寝すぎると週明けの眠気につながる」とあります。週末寝だめすることによって翌週からの生産性がさらに低下する可能性があるという恐ろしいサイクルです。

ここまでの内容をまとめると、1日だけ単発であれば(あるいは短期間限定であれば)長時間労働によって生産量は増えます。しかしそれが慢性化して睡眠不足の状態が続いてしまうと、日を追うごとに生産性は低下し、一度低下した生産性は少し寝たくらいでは回復しない状態に陥ります。そうすると、

労働時間を増やしたのにかえって生産量が低下する

という最悪の状態に陥ります。

労働時間と生産量の関係をグラフ化してみた

労働時間と生産性、生産量の関係がわからない人にそれを説明するのって結構大変なんですよね。そのことについて先日社内のSlackで愚痴ったところ、それを見たうちのエンジニアが2時間くらいでこの内容をグラフ化するツールをサクッと作ってくれました。

こちらのツイートで載せている図がこちら。

労働時間と生産量の関係

労働時間と生産量の関係

このツールは厚生労働省のウェブサイトにある資料を根拠に作成していますが、数値の根拠がおかしいとか色々言ってくる人もいました。別に学会に提出する研究内容でもありませんし、私としては「長時間労働が続けば労働時間を増やしても生産量が低下することもある」という事実がイメージとしてつかめれば十分だと考えています。

それでもTwitterで色々ご指摘受けたことを元に、だったら詳細な数値については自分で入力できるようにしてしまえということで改修されたものがこちら。

労働時間と生産量の関係

労働時間と生産量の関係

細かいパラメータ値を自分で変更できるようにしてあります。色々とブラッシュアップして公開したいと思います。

残業ゼロを実現したアクシアの実績紹介

アクシアでは今でこそ残業ゼロを実現したIT企業として、ホワイト企業アワードという賞を受賞させてもらって第三者からホワイト企業として認定されるまでになりましたが、かつては残業まみれのブラック企業でした。

かつての残業まみれのアクシアでは毎日が睡眠不足の状態。生産性は最悪の状態で毎日仕事をしていました。アクシアの場合は2012年の10月から一気に残業ゼロにしたのですが、残業まみれだった2012年9月と、残業ゼロになった2012年10月の生産量を比較してみると、なんと2012年10月の方が27%も生産性が向上していました。

終電まで仕事をしていた状態から残業ゼロにしたので大幅に労働時間は削減されたわけですが、それにも関わらず生産量が27%も向上したのです。生産性ではなく生産量が27%増加したという事実に着目していただければと思います。

これは細かく計算してみると、生産性が約2倍以上に向上したことを表しています。残業ゼロにして睡眠不足の状態が解消し、大幅に生産性が向上したために、労働時間が大幅に削減したにも関わらず、生産量が27%向上するという結果となったのです。

労働時間と生産量の関係が単純な比例関係にあると信じている人達がまだまだ世の中にはたくさんいるようです。しかし事実はそうはなりません。長時間労働によって睡眠不足の状態が続けば、日を追うごとに生産性が低下し、いずれ労働時間を増やしたのに生産量が低下するという恐ろしい状態に陥ってしまうというのが真実です。

労働時間と生産性、生産量の関係を考える時は、1日だけの単発で考えるのではなく、長期的な視点で考えることが大切です。

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