今から3年ほど前ですが、プログラミングスクールについてこんな記事を書きました。
エンジニアが人気、そして世の中エンジニア不足ということで、色々なプログラミングスクールが登場していました。中には無料のプログラミングスクールというものもあり話題になっていました。
普通に考えてみればわかることなのですが、何事も世の中そんな美味しい話がころがっているわけがありません。無料には無料である理由が必ずありますので、背景にある理由は必ず理解しておきましょうね、ということで上記のブログ記事を書きました。
ところが最近は「転職保証」をつけたプログラミングスクールが問題になることが多いようです。上述した「無料」プログラミングスクールではなく、有料のプログラミングスクールですが、こちらは無料であることではなく「転職保証」がされていることが特徴です。
エンジニアとして転職が保証されているなんて素晴らしい!と思う人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。もう何度となく繰り返し言ってきていることではあるのですが、大事なことなのでここでもう一度声を大にして言いますね。
世の中そんな美味しい話がころがっているわけがありません
転職が保証されているということで、なんて素晴らしいスクールなんだろうかと思っている方もたくさんいると思いますが、「美味しい」と思った情報であるほど、なぜそんな美味しい話になるのか?ということは、一度立ち止まってしっかりと考える必要があります。
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IT業界とプログラミングスクールの関係
下記の図はものすごくシンプルにIT業界とプログラミングスクールの関係を表現したものです。
この図のように、プログラミングスクールは卒業生をエンジニアを募集している企業に紹介する場合があります。人材紹介は他に提携企業や関連企業が存在する場合もあります。
どんな業種でも同じですが、世の中には人気企業とそうではない企業とがあります。要因は色々あると思いますが、一般的には人気企業は待遇が良かったり労働環境が良かったりします。人気のない企業は待遇が悪かったり労働環境が悪かったりします。
そして当然のことながら求職者は人気企業に殺到します。その結果として人気企業の求人倍率は跳ね上がり、就職するためのハードルが跳ね上がります。ここものすごく大事なところです。
こんなこと考えなくてもわかりますよね?人気企業に入社するのは大変なことなのです。何百倍という倍率を勝ち抜かないと入社できない世界です。
裏を返せば、就職を斡旋する側の立場としても、求職者を人気企業へ斡旋することは簡単なことではないと言えます。ましてや、斡旋先が人気企業だった場合には転職保証率を100%に近い数字で維持することなど、限りなく不可能に近いと言えます。←ここものすごく大事なところなのでメモしてください。
では転職保証率を100%に近い数字で維持するためにはどうすれば良いのか?感の良い皆さんならもうおわかりですよね?
転職保証100%はとてつもない難易度
転職保証を100%、もしくはそれに近い数字で維持することは並大抵のことではありません。斡旋先企業が人気企業だった場合には不可能と言ってしまっても良いと思います。人気企業の求人倍率は普通に数百倍になりますから、こうした企業への転職を100%保証するなど不可能だとわかりますよね。
そもそも人気企業は紹介に頼る必要がないわけですよ。そんなことしなくても求職者の方から応募が殺到してきますから、わざわざ紹介料を支払って採用を行う必要などないわけです。
ちなみに手前味噌で大変恐縮ですが、アクシアの求人倍率は200倍以上です。人材紹介はもちろん、どこの求人媒体にも掲載しておらず、自社のコーポレートサイトのみで募集しておりますが(2021年1月現在は募集停止中)、それでも大変ありがたいことにたくさんの求職者の方からご応募いただけています。
仮に人材紹介サービスを利用したとして、どんなに優秀な人をご紹介いただいたとしても200倍もの倍率ですから、その中で採用をお約束することなど不可能であることがおわかりいただけますでしょうか。
たとえ紹介先が人気企業ばかりということでなくても、転職保証を100%に近い状態をキープすることがいかに難しいことであるのかは、容易に想像できると思います。
紹介先となる企業の問題だけでなく、紹介するエンジニア志望の求職者の方にも色々問題はあります。これも普通に考えてみればわかることなのですが、100人の求職者がいたら、100人全員が優秀なわけではありません。申し訳ないですが中には目も当てられないような求職者だって存在するでしょう。
そういう「優秀ではない」求職者も含めて、転職保証を100%もしくはそれに近い数字で紹介しようというわけです。次はどうやったらそういうことが可能になるのかを考えてみます。
常に採用に困っている会社に紹介するしかない
転職保証100%というのはとても難易度が高いです。人気企業ばかりに紹介していてはとてもこんな確率で紹介が成立するわけがありませんから、「人気のない企業」にも紹介する必要があるでしょう。いつも採用に困っていて人気のない企業のことを、世の中ではブラック企業と呼んでますね。
しかしたとえ紹介先企業の質を問わずに、数打てば当たる方式で手当たりしだいに紹介しまくったとしても、100%に近い数字で紹介を成立させることは極めて難しいように私は思います。私自身も一時人材紹介の事業に携わっていたことがあるのでわかりますが、100%というのはとんでもない数字です。私なら無理です。
紹介する人の中には劣悪な求職者も存在する。スキルはあっても人物面が終わっている求職者も存在する。そんな求職者であっても紹介に成功させて転職保証100%に近い数字を維持するためには、最終的には紹介の受け皿となる企業をスクール自身が何らかの形で用意するしかないように思います。
絶対に紹介を受け入れてくれる企業をスクール自らが用意する。これなら100%に近い転職保証を約束することも不可能ではないかもしれません。
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転職先として紹介された企業を拒否できない恐怖
それでも転職先を紹介してくれて転職を保証してくれるのだからありがたいと思う人もいるかもしれません。でもよく考えてみてください。紹介された企業がとんでもないブラック企業だったらどうしますか?
冒頭で紹介した別記事で書いた無料のプログラミングスクールの場合は、紹介先企業を拒否した場合は、無料だったスクールの受講料金が有料になるという縛りがあるのが普通でした。スクールの受講料を支払えない人は、紹介先がどんなにとんでもないブラック企業だったとしても、転職することを受け入れるしかないという内容のものです。
転職保証のプログラミングスクールの場合も、有料ではありますが構造は全く同じだと言えます。
転職保証のプログラミングスクールの場合は、転職できなかった場合にはスクールの受講料が返金されるという保証がついているようです。しかしながらこの返金保証、スクールが斡旋した紹介先企業への就職を拒否した場合には返金できないという規定がついていることが一般的なようです。
つまりどういうことかと申しますと、転職保証のプログラミングスクールということで、もし転職できなかったら全額返金してもらえるという安心感で申し込みをする受講者がたくさんいるわけですが、紹介された企業がブラックすぎて転職したくないと思っても、転職を拒否すると返金してもらうことができないということが起きるわけです。
無料なのか返金保証なのかの違いはあるにせよ、紹介先が劣悪なブラック企業だったとしても受講料を盾にして転職を拒否できない状況に追い込むという点において、無料プログラミングスクールと全く同じ構造ということです。
日本には職業選択の自由というものがあります。これがあるからこそ、ブラック企業から逃れる選択肢も保証されているのです。条件付きとはいえ、この自ら就職先の企業を選択する権利が奪われた状態に陥ってしまうことがいかに恐ろしいことであるのかを、「転職保証」という言葉に惑わされている人達は今一度よく考えてみていただきたいと思います。
世の中そんな美味しい話が転がっているわけがない
冒頭で紹介したブログ記事の「無料プログラミングスクールに要注意!無料と引き換えの危険な条件とは?」を私が書いたのは2017年のことです。その時も今と同じようなことが起きていたので、駆け出しエンジニアの人達には自分の意志で正しい選択をしてほしいと願い、当時このブログを書きました。
でも最近は形を変えてまた受講料を盾にとるようなことが起きているようですので、注意喚起の意味も含めて本日改めてまたこの記事を書くことにしました。
「転職保証」がダメだと言っているのではありません。ただ、正しい情報を理解して行動してほしいということです。転職保証という美味しそうな話に何も調べもせずに乗っかってしまうと「こんなはずではなかった」と後で後悔してしまうことになります。そうならないように、美味しい話を見た時には「なぜそうなるのか?」くらいはきちんと考えましょうということです。その上で全てを理解して選択するのなら何も言うことはありません。
3年以上前に無料プログラミングスクールに警笛を鳴らしても、表面的な形だけ変えて転職保証のプログラミングスクールが出てきたように、こういうのはイタチごっこなのできっとまた形を変えて同じようなことをやるところが必ず出てきます。
その時にはぜひまたこの言葉を思い出してほしいです。
世の中そんな美味しい話がころがっているわけがありません
少し厳しいことを言うようですが、美味しい話に何の疑問も抱かずに軽々しく乗っかってしまう方にも問題はありますよ。そうならないようにちゃんと考えるようにしましょう。気づいたら自分の望まない選択をしてしまっている人が少しでも少なくなることを願います。