システム開発の営業を営業専属スタッフにやってもらうのは難しいと思う件


本日質問箱にこんな質問をいただきました。

https://peing.net/ja/q/7d340219-056f-40e7-b4e0-ee359f8ab099

システム開発の営業をどうするべきかについては時々話題になるように思います。色々な考え方があると思いますのでこれについては正解というものは存在しないと思いますが、色々と試してきたアクシアとしての見解は、システム開発の営業は営業専属スタッフにやってもらうのは難しいと考えています。

ここで言う「システム開発」とは、弊社で主に手がけているオーダーメイドでのシステムの受託開発のことを指します。パッケージ等を所有していてそれを中心に販売しているスタイルの会社とは分けて考えていただければと思います。

形ある商品やサービスを売る営業

世の中の多くの営業の方達は、オーダーメイドで構築するシステム開発のようなサービスではなくて、既に出来上がっている商品やサービスを販売することが多いと思います。言ってみれば形あるものを売る仕事です。

形あるものとは、コンビニやスーパーで売られているような物理的に形のある商品はもちろんのこと、物理的には形がなくともパッケージソフトウエアやウェブサービスのように既に出来上がっているものも形のある商品やサービスです。

具体的に今すぐ顧客が使うことのできる商品やサービスが既に存在しているものは形のあるサービスですね。

こうした「形ある商品やサービス」の営業の場合、営業はその商品に関する商品知識を頭のなかに叩き込む必要があります。どんな商品で顧客にどんなメリットがあるのかをきちんと説明できるようでなければ、顧客の心に刺さる提案などできるわけがありませんからまともな営業ができるとは言えません。

私自身は誰かに営業を教わったことがないですし偉そうなことを言うのはアレなんですけど、

営業は顧客にとってのベネフィットを考え抜いて提案すること

が本質だと思っています。ベネフィットはその商品やサービスを利用することによって、具体的に顧客にどんな嬉しいことがあるのかということですね。

例えば「この車はこんなに広いんですよ」と売り込んでいる営業がいたとしたら多分その人の営業成績が良くなることはありません。そうではなくて「この車ならスノボーの板も荷物も全部積んでもスペースに余裕があるので快適に雪山に行けますよ」と営業されたら私ならその車を買いたくなりますね。なぜなら、

その車を買った後の具体的なベネフィットが想像できる

からです。

営業とはそういうベネフィットを提案することが本質で、そのために必要な「車の広さ」を商品知識として頭に叩き込んで知識武装しておくものだと思います。多分優秀な営業の人って、顧客に提案できるベネフィットを探るために、その顧客が何を必要としているのか、何を望んでいるのかを聞き出そうとして、何気なく思える世間話とかもしてると思うんですよね。

もし私が車の販売営業をやるとしたら、自分が売る車の商品知識は完璧に頭の中に叩き込んだ上で、顧客の趣味、家族構成、普段出かける所、好きなもの等をさりげなく世間話を振って探った上で、その顧客のベネフィットを考え抜きます。

いきなり「車の広さ」なんていう機能性を説明されたところで顧客からしたら「ふーん」としかならないですよね。そういうのは売れない営業のやることだと思います。

ベネフィットを提案するために商品知識を頭のなかに叩き込む

これが営業の基本ではないでしょうか。営業を本職でやったことないくせに偉そうなこと言ってすみません。

システム開発の営業

営業とは顧客のベネフィットを考え抜いて提案することだとして、そのために商品知識が必要だとするならば、システム開発の商品知識とは何でしょうか。

既に述べた形ある商品やサービスの商品知識だと話はシンプルですよね。既に存在する商品やサービスですから、それについての詳細仕様を頭の中に叩き込むことで商品知識を身につけることができます。難しいのは、

オーダーメイドのシステム開発には形がない

ということです。形がないので商品知識と言っても、これとこれに関する情報を頭のなかに入れればそれでOKとはならないことです。

ベネフィットを考えるところについては形ある商品と同じなので考えやすいかもしれません。その顧客が何を必要としていて、システム開発を行うことでその顧客にとってどんな嬉しいことがあるのかを考え抜くことがベネフィットの提案につながりますね。ではシステム開発の商品知識とは何なのかを考えてみると、

システム開発やプログラミングの知識そのもの

ということになります。つまり、システム開発の経験があるか、もしくはそれに準ずるだけの知識を持っている人でないとシステム開発の営業は難しいということになります。

これは実際にシステム開発の経験のない人に営業をやってみてもらうとよくわかると思います。システム開発未経験の人に営業をやってもらうとどんな悲しいことが起きるのかというと、

「持ち帰って確認させていただきます」

が頻発するという事象が発生します。詳しい商品知識を持ち合わせていないので商談の場で即答できないことが非常に多くなってしまいます。これは営業としてはかなり致命的です。というか営業になってません。

最近ではIT企業でなくても、社内にITの専属部署があったり、担当者にシステム開発の経験があって詳しい知識を持っている人が顧客の担当窓口になるなんてことは当たり前のようにあります。

ITに詳しい人と商談をする時にはかなりマニアックな専門的なことについて質問をされることもたくさんありますので、その時に「持ち帰って確認させていただきます」が頻発してしまうようだとその時点で信用を失って発注先の候補から外れてしまいます。

そうなると当然のことながら営業専属スタッフとして雇った営業の人に詳しい商品知識(システム開発やプログラミングの知識)を教えていくということになるわけですが、そうするとある時、

ひょっとしてエンジニアが営業やった方が良くないか?

という素朴な疑問にぶち当たることになりました。なぜなら、営業専属スタッフにシステム開発やプログラミングの知識を伝授していけばいくほど、その営業の人はどんどんエンジニアとしての道を一歩一歩着実に突き進んでいたのと同じだったからです。以上の経緯からアクシアでは、

システム開発の営業を営業専属スタッフにやってもらうのは難しい

という結論に至りました。よって現在は営業専属スタッフは在籍していません。

SESの営業(番外編)

最後にどうでも良い内容で申し訳ありません。エンジニアを客先に送り込むSESの営業とは何なのか。SESで商品とするものはシステム開発のサービスではなくてエンジニアが商品となります。SESが「人売り」というような言われ方をする由縁であります。

ではSESの商品知識として、販売する「人」の商品知識を頭の中に叩き込むのかというとそんなこともなく、その商品知識は「職務経歴書」という形で落とし込まれることになります。そしてその職務経歴書は悲しいことに度々偽装されることもあります。

SESでは多重下請け構造が当たり前となっておりますから、その営業先は同じくSES企業となることは普通です。相手先がエンドユーザーであればともかく、同じ中間搾取業者のSES企業である場合、そのSES企業にとってのベネフィットとは、

エンジニアの単価が安くてマージンをたくさん搾取できること

となります。なぜならSES企業はマージンをピンハネすることをビジネスとしているからです。そのためSES企業間での営業トークはそのエンジニアの単価はいくらになるのかという話に終始する悲しい傾向にあります。

よってSES営業には何の商品知識も必要ありませんし、エンジニアの単価が高い・安いの不毛な交渉を根気強く行うことができれば誰にでも対応することが可能となります。