会社には様々な手当があります。手当と聞くともらえないよりももらえた方が嬉しいと思う人がほとんどだと思います。

ただ私自身はサラリーマン時代から手当というものに対してはどちらかというと否定的な考えを持っていました。手当がもらえるというとなぜかその手当の原資がどこかから湧いて出てくるかのように思っている人が多いようですが、もちろんそんなわけがありません。

何かの手当を制度として新設するということは、そのための原資が当然のことながら必要になります。見方を変えれば従業員に分配できる給料の額が少なくなるとも考えることができます。

つまり給料でもらうか、手当でもらうかの違いなわけですが、給料であれば実力があって成果を出した人により多く分配することができます。一方で手当となると実力や成果とはあまり紐付かないことが多く、条件さえ満たせば全ての人が平等にもらえる意味合いが強くなります。

私自身は全ての人に等しく分配される手当よりも、成果を出した人がより多くもらうことのできる給料で分配してほしいと考えるタイプでした。

手当は別に突然空から降ってきたお金で支払われるわけではなく、従業員が稼いだ売上から支払われるわけですが、目の前に「なんかよくわからないけどもらえるお金」をぶら下げられると短絡的に喜ぶ人は多いですよね。

しかし世の中に様々存在するこの「手当」というものは色々と問題もあります。中には従業員を騙してるとしか思えないような手当も数多く存在します。せこい手当で従業員を騙している経営者からは反感を買うかもしれませんが、手当の問題点についてまとめてみました。

月給にこっそり組み込まれるみなし残業手当

みなし残業については正しく運用されれば従業員に残業削減のモチベーションを持たせることができるので必ずしも悪い制度ではありませんが、月給にこっそりとみなし残業を組み込んで残業代を支払わないことを目的に運用されることが後を絶たないことから、悪の筆頭のように扱われることが多いですね。

残業代を払わないことを目的とした固定残業代は禁止にするべき

情報を隠さずにわかりやすく基本給はいくらで、みなし残業代がいくらになるという内訳がしっかり示されていれば良いのですが、見かけの給与額はそこそこあるのに時間給で見てみるとなぜか気がつくと最低賃金すれすれの給与となっているようなことも起きてしまいます。

従業員を騙して残業代を支払わないことを目的に制度を悪用するなどあってはならないことは議論の余地もないのですが、この悪名高いみなし残業手当以外にも色々と問題のある手当は存在するようです。

他にもある、こっそり月給に組み込まれる手当

みなし残業手当以外にも、こっそりと月給に組み込まれる手当は他にもあります。

月給20万(住宅手当含む)

こんな感じの求人情報を見たことが一度はあるのではないでしょうか。これを見て「住宅手当がもらえるんだ!ホワイトじゃん!嬉しい~!」とか思ってしまうようなら相当おめでたい方だと言わざるを得ません。この「住宅手当」の部分は他にも「営業手当」「技術手当」のように別の◯◯手当に置き換わることもあります。

これらの手当の特徴としては、何に対して支給されているのかがよくわからないという点が共通しています。

基本的に全員に一律同額が支給される手当なのに、なぜか同じ金額を基本給に組み込むのではなくて、わざわざ基本給からは切り離して◯◯手当として支給されているものがあります。

こうした意味不明な手当を見たところで特に気にすることもない人が多いと思います。それどころか手当がもらえると喜んでしまう人も結構いるかもしれません。しかし企業がわざわざ基本給から切り離してこうした意味不明な手当を設ける理由は知っておいた方が良いと思います。

意味のわからない手当の目的は残業代を削減すること

意味のわからない手当が設けられている理由は残業代を削減することです。残業代と書きましたがボーナスや退職金がある企業の場合だとこれらの金額も削減されるかもしれません。いずれにしても何らかの形で支払うお金を削減することが目的と考えて良いでしょう。

なぜそうなるかというと、残業代、ボーナス、退職金などは「基本給」をベースに計算されるからです。「ボーナスは基本給2ヶ月分」とは月給2ヶ月分ではありません。この場合、基本給20万ならボーナスは40万ということになりますが、基本給17万・営業手当3万円となっていた場合のボーナスは34万円ということになりますね。

残業代の時間単価も基本給をベースに計算されれば時間単価が低くなって残業代が削減されることになります。みなし残業手当ががっつり組み込まれていると、基本給が低くなって時給ベースだと最低賃金すれすれなんてこともありますから、そうすると残業代を最小限に抑えられるということになります。

「営業手当」みたいな意味不明だけどみんなに同じだけ支給されるみたいな手当については、残業代の時間単価を計算する時にベースに組み込んで単価の計算がされるべきなのではないかと私などは思うわけですが、以前書いたこちらのブログで紹介している求人なんかだと、同計算してみても営業手当は時間給の計算から除外されてるとしか思えません。

意味のわからない手当は、基本給を低く抑えることによって基本給をベースに計算される各種報酬を低く抑えることが目的と考えられます。

これら意味不明な手当には様々な名称が付けられていますが、実質的には「残業代削減手当」のような名称が実態にあっていて妥当なのではないでしょうか。

意味不明な手当は労働者を騙して実質的な賃金をわからなくするもの

手当の全てがダメなのではなくて、何に対して支給されているのかその目的が明確になっている手当であれば何の問題もないと思います。

例えば「通勤手当」は手当と名前がついていますが、これは経費精算に近い性質のものですから目的は明確ですし問題となることはありません。「資格手当」はその資格を取得したことに対する報酬ですからこれも目的は明確です。「職能手当」のようなものも何の技能に対してどれだけの手当が設定されるかが明確になっているのであれば問題ないと思います。

問題は何に対して支給されているのかわからない意味不明な手当です。これは基本給を低く設定することによって、基本給をベースに計算される様々な報酬を安く抑えることを目的としているわけで、しかも求人票を見ただけではそのことを理解することは極めて困難です。

みなし残業手当がこっそりと月給に組み込まれていることばかりが問題視されることが多いですが、他の目的の分からない各種手当だってこっそりと月給に組み込まれることによってその後気づかぬうちに様々な不利益を被る可能性があるわけです。

同じ月給の会社であっても、月給の内訳がどうなっているかによって、待遇には大きな差が生まれます。月給は同じでも待遇は変わるわけですから、それらの情報が求職者に正しく伝わっていないことは大きな問題です。

月給の総額提示を法律で禁止し、基本給の提示を義務付けるべきでは?

みなし残業手当も同じですが、求人票で提示されている月給に様々な手当が込みの金額を記載できるようになってしまっていることで、企業が求職者を騙すことが可能となってしまっています。

みなし残業についてはきちんと明示しましょうという流れが徐々にできてきているようには思いますが、みなし残業だけではなく他の様々な手当についてもその内訳についてはきちんと明示することが義務付けられるべきだと考えます。

求人情報に記載する月額の総額表記を禁止し、みなし残業手当もその他各種手当も全て分けて記載し、基本給はいくらなのかを求職者に正しく伝えることを企業に義務付けるべきだと思います。

月給25万(各種手当含む)

と表記されているのと、

基本給17万、みなし残業手当4万、営業手当4万

と表記されているのでは、そこから読み取れる待遇の実態に関する情報は随分と変わってくるのではないでしょうか。

 

本当はこういう内容は心ある社会保険労務士さんとかが詳しく書いてくれると良いと思うのですが、社労士さんもむしろこの記事で述べたような意味不明な「◯◯手当」の制度を作るお手伝いをする立場だったりしますね。

それとこういう意味不明な手当をたくさん設けて従業員を騙しているブラック企業に最後に一言だけ言わせてください。

意味不明な手当を払う前に残業手当をちゃんと払え