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ワタミがリクナビに出している求人が燃えているようです。リクナビに出ていた内容はこんな感じです。(求人情報なのでいずれ消されると思いますのでリンクではなくキャプチャはっておきます)

こんな内容では死んでしまうとか、ブラックすぎるとか色々言われて燃え上がってしまったようですね。

ワタミの求人条件に「死ぬぞこれ」 会社広報に真意を聞くと…

残業127時間やっても3万円しかもらえないというような誤解も招いてしまっているようです。本当に127時間で3万円しかもらえなかったとしたら時給236円で超絶ブラックということになりますがこれはさすがに誤解です。しかし誤解を招きやすい打ち出し方にはなってしまっているようです。

深夜みなし手当とは何か

夜の22時から朝の5時までの間に勤務すると25%の割増賃金が発生します。この割増部分(25%)を固定で支払うのが深夜みなし手当と言うようです。固定残業代の話はよく聞きますが、私も深夜みなし手当というものは初めて聞きました。でもネットで検索するとたくさん出てくるので別に珍しくはないようですね。

今回のワタミの求人の件は、この割増部分のみ127時間分が固定で支給されるのが3万円ということですから、これをもって時給236円の超絶ブラック企業というわけではなくて、割増部分の時間単価が236円ということですね。

ワタミの実質的な時給はいくらなのか?

ではワタミの実質的な時給はいくらなのかですが、ワタミの求人には年間休日が107日間とありますので、これを元に計算してみるとこうなりました。

端数が出ますが端数は切り上げました。この943円という時給をもとにして割増賃金の計算なども行われることになります。

943円 × 25% = 236円

この時給943円というのは東京の正社員の給料としては高くないですね。東京都の最低時給は932円なのでかなりすれすれです。次回最低時給が改定されて少し上がったら下回ってしまうかもしれないくらいの水準です。

東京都にあるワタミのアルバイトの時給は1,000円以上であることもあるようですので、残業代が発生したとしても下手するとアルバイトより低い時給で働くということになるかもしれません。

世の中は同一労働同一賃金の流れで進んでいますから、同じ仕事をしているのであれば極端にアルバイトよりも正社員の方が給料が高いのはどうかと思いますが、さすがにアルバイトの方が時給が高い可能性があるというのは中々インパクトがありますね。

同一労働同一賃金の先進的な企業という見方もできるかもしれませんが、基本給202,100円という初任給の額が持つ世間一般的な初任給の平均的な水準という印象は、時給943円という実態とはいささか開きがあるかもしれません。

謎の営業手当1万円は残業時間の計算に含めるべきではないか

私は深夜みなし手当の3万円だけでなく、営業手当1万円も差し引いて時給の計算を行ってTwitterに投稿したことに対して、営業手当は時給の計算に含まれているべきではないかという意見がありました。つまりこういうことです。

(202,100円 ー 30,000円) × 12ヶ月 ÷ 2,064時間 = 1,006円

確かに私もこの営業手当10,000円は計算に含めた方が良いのではないかとも思いました。そもそも営業手当10,000円って何の手当なんだよという意味不明感が漂っています。全員が無条件でもらえる手当なら基本給とわける意味は何なのかという疑問がありますよね。

では私が営業手当も差し引いて時給の計算をした理由ですが、ワタミは求人の中で次のように記載しています。

※127時間を超えた時間外労働については追加支給

”時間外労働”という表記が微妙すぎて物議を醸しているわけですが、これは冒頭の記事によるとワタミ広報が次のように説明しているようです。

居酒屋勤務の場合は、16時、17時の出社があり、22時以降が深夜勤務に当たるため、月に22日間8時間勤務をした場合、月に60~70時間の深夜勤務が発生する計算になる。深夜勤務手当は1時間だけ働いても一律に3万円が支給される規定になっていて、127時間という数字は「理論上の最大値」として表示しただけなのだという。

つまり深夜手当30,000円は深夜勤務をマックスで127時間したことを想定していますよと言っています。

そうすると営業手当10,000円を含めて計算すると通常の時給が1,006円となりますから、深夜割増分は25%かけて252円ということになります。時間あたり252円の割増分ですので127時間分だと32,004円となり、求人に記載されている深夜みなし手当30,000円を超えてしまって矛盾が生じます。

これが営業手当10,000円も差し引いて計算すると、深夜割増分が時間あたり236円となり、これに127時間をかけてみると29,972円となります。これだと深夜みなし手当を30,000円(最大127時間)としていることとの整合性が取れます。

以上が営業手当10,000円を時給の計算から私が差し引いた根拠となります。どう電卓を叩いてみてもワタミは営業手当を差し引いて時給(残業代等)の計算をしていると思われます。

これはやっぱりおかしいのではないかという疑念はぬぐえません。これがOKということであれば日本全国の残業やってる会社でも最低時給ぎりぎりになるように「謎の営業手当」なるものを設定することで残業代の金額を抑えることができてしまいますからね。

この営業手当の扱いが法的にNGということであれば、やっぱりワタミはブラックだよねということになるかもしれません。しかしこの営業手当の扱いが法的に問題ないかどうかまでは私にはわかりませんので、これについての妥当性は給与計算を専門とする方に委ねたいと思います。

ワタミの求人の何が問題なのか

今回色々と物議を醸しているワタミの求人ですが、私個人の見解としましては給料が低いこと自体が問題だとは思っていません。仕事は給料だけが全てではありませんし(こういうとブラック企業みたいですがw)、給料が低かったとしても働く人が正しい情報を与えられた上で納得してその仕事に就くのであれば何の問題もないと思います。

そんなのは職業選択の自由です。嫌なら別の会社を選べば良いだけです。

私がワタミの求人で問題だと強く思うことは、求職者が誤解してしまうような表現となっていることだと思っています。正しい情報を誤解することのないように提示してもらえないと、職業選択の自由も何もありません。

実際にはアルバイトよりも低い時給で残業することになるかもしれないような待遇なのに、見せかけだけ世間の平均並みの基本給であるかのように求職者に錯覚させてしまうような内容に問題があると思います。

求人に記載しているだけマシという考え方もあるかもしれませんが、これだけ話題になっていることを考えても多くの求職者が誤解をしてしまいかねないような内容だということであり、誤解したまま入社してしまうような人がいたら不幸だと言わざるを得ません。

固定残業代の問題も同じことが言えますが、求職者に正しい情報を与えるべきだと思います。

深夜みなし手当の意図は何なのか

深夜みなし手当と似たものでみなし残業手当というものがありますが、私はみなし残業手当については正しく運用されているのであれば肯定派です。

みなし残業手当は残業してもしなくても固定で残業代が支給されるものですので、労働者にとっては残業しない方がお得となります。ですので労働者側に業務効率化の意識が働くという点で正しく運用されるのであれば良い制度だと思います。

従業員が残業しなければ、企業側からするとそれでも固定で手当を支払うわけですから一見すると損しているように見えますが、その手当によって従業員の業務効率化の意識が高まるのであれば安いものです。

しかし深夜みなし手当はそのような業務効率化の意識が働くかというとかなり微妙ですよね。居酒屋のような業態だと深夜勤務というのは必ず発生するものですし、深夜みなし手当が出るからといって従業員に業務効率化の意識が働くということもなさそうです。固定で支払うだけ企業側からすると損しかないように見えます。

だとすると企業が深夜みなし手当を導入する意図は何かというと、

  • 残業代の単価を低くすること
  • 基本給が高く見えるようにすること

この2点ではないでしょうか。私の認識不足なだけで、実は深夜みなし手当には従業員側にもこんなメリットがある!というのがもしあるのであればぜひ教えていただきたいです。

もし残業単価を低く設定することと基本給が高く見えるようにすること以外に目的のない制度なのであれば、深夜みなし手当という仕組みは禁止してしまった方が良いかもしれません。

求人媒体の会社にもわかりやすい情報掲載をお願いしたい

求職者にわかりやすい、誤解をしない情報を提供することで、間違ってブラック企業を選択してしまうようなことが少なくなり、そうするとブラック企業への人材の供給が少なくなりますので、ブラック企業を根絶するためには求人情報に正しい情報を掲載するということは極めて重要な事だと思います。

以前も少し書きましたがまだまだ平気で違法なブラック企業が掲載されていることもあるようです。

求人サイトの会社にぶっちゃけた話を聞いてみた

労基署も人手不足のようですから全てのブラック企業をチェックして回るなんてことは不可能ですから、ブラック企業に人材を供給させないように求人サイト等での掲載を制限することはブラック企業対策に有効だと思うんですよね。

固定残業代などは昨今は問題となるような例も多く聞きますので、今回の深夜みなし手当の件も含めて、求人媒体への記載方法については最新の注意を払っていただきたいものです。


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