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IT企業と言っても様々な種類の会社があるように、システム開発を業種としている企業の中にも様々な企業が存在します。特にSESと言ってエンジニアを客先常駐させるスタイルの企業も事業内容に「システム開発」と記載していることが多く、通常のシステム開発を行っている企業との区別がつきにくく非常にわかりにくくなってしまっております。
関連記事人売りIT派遣企業(SES・客先常駐)の見分け方SES企業が行っている事業内容は、通常のシステム開発企業とは全く異なるものとなっています。それなのにこれらの企業が全て一括りに「システム開発会社」と分類されてしまっていることによって、様々な弊害が発生していると考えられます。
SESを行っている企業はシステム開発を行っている企業からは別業種として明確に分類されるべき理由についてまとめてみました。
はじめに整理しておきます。SES(準委任契約)という事業モデルそのものは適法です。準委任ではエンジニアへの指揮命令はあくまで自社にあり、自社の管理のもとで客先のプロジェクトに参画して業務を担います。これは、システムを一式受注して自社で設計から構築・保守まで完成責任を負う「受託開発」とは、ビジネスモデルが異なります。ただし客先常駐という形態は、構造的にどうしても派遣に近くなりやすく、一歩やり方を間違えればすぐに偽装請負(違法)になってしまう危うさを抱えています。本記事で扱うのは、①受託開発とSESを混同してしまう誤解と、②客先常駐が偽装請負に陥ってしまう問題です。
SES企業はシステム開発を行っている企業ではない
SESは、顧客からシステムを一式受注して自社で作り上げるというよりは、客先のプロジェクトに自社のエンジニアが参画して業務を担うスタイルです。システムそのものの完成責任を丸ごと負う受託開発とは、仕事の性質が異なります。
| 場所 | 作業者 | 仕事内容 | |
| システム開発 | 自社内 | 自社の従業員 | システムの構築 |
| SES | 客先 | 自社のエンジニア | 客先プロジェクトでの業務 |
普通のシステム開発を行っている会社は顧客からオーダーされたシステムを構築することが仕事ですが、SES企業の仕事はシステムを一式作り上げることではなく、客先の開発現場に自社エンジニアが参画して業務を担うことです。
どう考えてもこれらは仕事の性質が全く異なりますし、客先のプロジェクトに参画して業務を担う事業を、システムを一式作り上げる「システム開発」と同じものとして語るには無理があります。
それなのにシステム開発を行う企業とSESを行う企業の区別がされておらず、何も知らない人が外から見ると違いがわからず同じ業種の企業に見えてしまいます。中身が全く異なるにも関わらず、外部の人達から見た時に同じような企業であると混同されてしまうのです。
行っている事業内容が全く異なる企業が混同されてしまうことによって、様々な弊害が発生しています。
システム開発を依頼したい企業が誤ってSES企業に問い合わせをしてしまう
一般企業の方がシステム開発を行う必要が発生し開発の仕事を依頼できる会社を探す際に、誤ってSES企業に問い合わせをしてしまうことがあります。
上述の通りSES企業は、客先のプロジェクトに自社エンジニアが参画して業務を担う事業が中心で、システムを一式受注して自社で完成させる体制とは限りません。そこにシステム開発を丸ごと発注しても、想定通りに進まないことがあります。
SES企業にはエンジニアが在籍していますので(在籍していない場合もある)、システム開発を行える要員は確かに在籍しているかもしれません。しかし企業として行っている事業内容は「人材を派遣すること」ですので、SES企業に開発の仕事をオーダーしたとしても自分達だけではまともにシステムをゼロから構築できない会社などいくらでも存在します。
SES企業にシステム開発の仕事を依頼してしまうとどのようなことが起きるかというと、まず考えられることが下請けに丸投げすることです。自分達だけでは開発の仕事を完結できませんから、まともな開発ができる会社に仕事を丸投げし、自分達は中間マージンを抜くだけということを行います。
これは開発を依頼する顧客側の企業としては何一つ良いことがありません。下請けに出すこと事態が悪いわけではありませんが、マージンを取る以上は相応の付加価値をサービスとして提供していただきたいものですが、このようなケースでは何もやらずに本当にマージンを抜くだけということが起きえます。
またSES企業がちょっと色気を出して自分達で開発を行おうとすることもあるかもしれません。しかしSES企業はエンジニアを客先に常駐させることが仕事ですから、平日日中はほとんどのエンジニアはどこかの客先に出向いてしまっており、SES企業社内には不在であることが多々あります。
その場合だと客先常駐で仕事をしているエンジニアが夜に帰社して開発を行うとか、休日に出勤して仕事をするとか、そういう普通ではないやり方で受託開発を行っているケースもあるようです。
このようなやり方だと開発を行っているエンジニアとは平日日中は連絡がほとんど取れないという現象が発生するわけですが、百歩譲ってシステム開発時にはそれで良くとも、システムが本番稼働してからの保守対応時にまでそのような対応をされてしまうことは大きな問題です。
システム本番稼働後にはシステムを使って業務が稼働していきますので、何かあった時には緊急即時の対応を行えることが、システムの保守対応には求められるからです。このようにシステム開発を依頼する側の顧客企業にとっては誤ってSES企業に問い合わせをしてしまうことには大きな弊害があります。
システム開発会社で働きたい求職者が誤ってSES企業に応募してしまう
システム開発の仕事をしたいと思った求職者が誤ってSES企業に応募してしまうことがあります。
SES企業に就職すると、客先のプロジェクトに参画してシステム開発に携わることにはなります。ただ、自社のチームで腰を据えて開発したいと思っていた人にとっては、客先を転々とする働き方が「こんなはずではなかった」となることが多いようです。
自社のエンジニアでチームを組んで顧客の要求に応えながらシステム開発を行っていく通常の開発会社と異なり、SESでは「思ってたのと違った」ということがたくさん起きてしまいますので、この業界を志望されている方は下記のブログなどもぜひお読みいただければと思います。
関連記事システム開発の業界を目指す学生必読!客先常駐の現場の実態この未曾有の人材不足に対応するために、SES企業でも様々な人材獲得の施策を行っているようで、下記のブログにあるような無料プログラミングスクールにも要注意です。
関連記事無料プログラミングスクールに要注意!無料と引き換えの危険な条件とは?客先常駐の現場では開発環境や労働環境が良いとは限らないことも多々ありますので、プログラミングの仕事がやりたい、開発の仕事がやりたいと思ってエンジニアを志した人が、何も知らずにSES企業に入ってしまうと「思っていたのと違った」「こんなはずではなかった」となってしまい、エンジニアの業界離れが進んでしまうことにもなります。
エンジニア志望の人に十分な情報が提供されずに、SES企業に誤って求人応募してしまうような事態が当たり前に発生してしまう状況には大きな弊害があります。
システム開発とSESを明確に区分するメリット
システム開発とSESはその内容が全くと言って良いほど異なるものですから、その区分を明確にすることによって、システム開発を依頼したい顧客企業やシステム開発の仕事をしたい求職者に対して誤解を与えにくくなり、適切な仕事の依頼先や求人の応募先を選択できるようになるという大きなメリットがあります。
業種や事業内容としてシステム開発とSESが明確に分かれていて全く違う業種として認識されていれば、システム開発を依頼したい企業がSES企業に開発依頼をすることはなくなるはずです。
また派遣会社のような形態で働きたいのではなく、普通にシステム開発の仕事をしたいと考えている求職者もSES企業に応募するようなことはなくなるはずです。
正しく情報が伝わった上で、SES企業に仕事を依頼したい、SES企業で働いてみたいというのであれば何も問題はありません。しかし現状だとSES企業がシステム開発企業として分類されてしまっていることに大きな問題があり、多くの人に誤解を与え不利益となってしまっています。
開発の仕事依頼したい企業や、開発の仕事をしたい求職者に対して無意味な誤解を与えないようにするためにも、システム開発とSESは業種を明確に区分するべきでしょう。
SESと派遣の違い
システム開発という分類から明確にSESを切り離して分類するようになると、今度はSESと派遣の違いって何?という素朴な疑問がわいてきます。客先常駐という形態だと、外形上は派遣と見分けがつきにくくなりますからね。
本来、準委任であればエンジニアへの指揮命令は自社にあり、派遣とは異なります。ところが客先常駐の現場では、実際には客先から指揮命令を受けているのに、派遣契約ではなく請負・準委任契約のまま——という偽装請負に陥っているケースが少なくありません。この状態が違法なのです。
偽装請負の状態に陥ると、派遣契約なら法律で禁止されていることも平気で行われてしまいます。
形式的には所属企業を通して指揮命令するなどと詭弁をたれているケースが多いですが、所属企業で指示する人間が現場にいないケースもありますし、他社の人員とプロジェクトチームを組んで一緒に仕事をするわけですから、指揮命令がないというのは詭弁もいいところです。
派遣契約ですといわゆる多重派遣も禁止されていますが、偽装請負ですので間に何社も入っていることが当たり前にあります。間に入っている会社は何もしていないのに本来エンジニアが享受すべき利益を不当に搾取しています。
派遣契約だと労働者が不利益を被らないように法律で様々な縛りがありますが、偽装請負の状態ではこうした派遣法上の保護が及ばず、禁止されていることも当たり前のように無視されてしまいます。そのため偽装請負の現場で働くエンジニアは、知らないところで様々な不利益を被っているのです。
客先常駐でありながら実態として偽装請負に陥っている会社が、システム開発会社という看板で実態を見えにくくしているのは問題です。システム開発という分類から切り離して通常の派遣企業と並べてみると、その危うさ——違法な偽装請負と紙一重であること——がより鮮明に浮かび上がってきます。
システム開発は決して悪い仕事ではない
IT業界やシステム開発業界に対する世間からの印象は決して良いものばかりではありません。業界の悪い評判も数多くあります。
偽装請負が常態化しているような現場まで含めて一括りに「IT業界」「システム開発業界」と分類されてしまっているために、普通のシステム開発の会社や仕事まで悪い印象を持たれてしまっているように思います。
「この業界」の悪評の多くの部分は、偽装請負が常態化したような現場によってもたらされている部分が大きいと思います。この業界のことをボロクソに言う人の出身も、そうした現場であることは多いと思います。
違法な偽装請負を続けている企業は、さっさと無くなるべき存在だと私は考えています。そうした偽装請負企業がもたらす悪い印象が、普通のシステム開発企業に対する印象にまでなってしまっている部分もあることは、非常に残念で悔しい思いがあります。
システム開発という仕事は私自身は決して悪い仕事ではないと思いますし、偽装請負の悪評と混同してこの仕事を諦めてしまうようなことは避けていただきたいなと切に願っております。