とある経営者が「権利を主張する前にちゃんと働いて」と言ったことに対して賛否両論巻き起こっていたことに対して、ちゃんと働いてない人にちゃんと働けというのは当然、労働者の権利ばかり主張するのはおかしいという記事を書きました。
労働者を批判するような内容を書くとだいたい噛みついてくる人が何人かいて、Twitterのフォロワーも何人かいつも減るのですが、この記事に関しては予想に反して批判的なコメントは皆無で、なぜかフォロワーも増えました。w
権利を主張する前に働けは正しいのか https://t.co/RZenO0IojQ @yonemura2006さんから
自分も一社畜として、あんまり労働者側に厳しいことは言いたくないけど、これは正論だわ。
— マッシュ (@MASH_Japan) June 13, 2017
権利を主張する前に働けは正しいのか https://t.co/d6WCXAcNSa via @yonemura2006
今の職場にもいるなぁ、1日に2時間くらいトイレに籠ってる輩が。何やってるか知らんけど(ナニやってるかも?)— avatar (@mj_avatar) June 13, 2017
チンパンジーでもわかる図を入れて、ヤバイ労働者だっているのにここだけ批判しちゃいけないのはおかしいよねってことをわかりやすく主張したことが良かったのかもしれません。
このように経営者にしろ、労働者にしろ、問題があれば指摘するべきだということに関しては当然そうあるべきではあるのですが、本日の記事の内容としましてはまたちょっと違う視点から書いてみたいと思います。本日の内容はブラック企業経営者向けの内容となっております。
決して抜けることのできない労働環境悪化の悪循環
デスマーチに陥っている会社というのは、職場の労働環境が劣悪な状態になっており、そこで働く人たちの体力が削られて疲弊してしまっています。一方で労働者の仕事の質は低くミスが頻発し、戻り作業や顧客のクレーム対応に追われ、そのことがますます長時間残業からの脱却を難しくしていたりします。
労働環境悪化
↓
従業員の体力・モチベーションの低下
↓
仕事の品質の低下
↓
ムダな作業の増加
↓
労働環境の悪化
以下、決して抜けられることのない無限ループです。アクシアも残業ゼロを実現する前はこの無限ループから抜けることができずにいましたからよくわかります。
何とかしてこの無限ループから抜け出して残業時間を削減し、労働環境を改善したいと考えますが中々できません。ではなぜ抜け出すことができないのでしょうか。
経営者も労働者も自分が悪いとは思っていない
労働環境悪化の無限ループから抜け出すためには、どこかでこの無限ループの連鎖を断ち切らなければならないわけですが、経営者側も労働者側もそれぞれに問題があることは事実なのですが、たちの悪いことにそれぞれみんな自分が悪いとは思っていないところに大きな問題があります。
経営者としては、労働者がもっと意欲的に仕事に取り組んでくれたら効率が上がるのにとか、労働者がもっと品質の高い仕事をしてくれればムダな作業が減るのにとか、そういうことを考えて労働者に原因があると考えています。
労働者は労働者で、自分たちのやる気が低いことや仕事の品質が低いことには目をつぶり、労働環境が悪いことに原因があると考えています。こんな劣悪な労働環境じゃやってらんねえよと心の中では思っています。
お互いに「お前が言うな」状態
こうなるとお互いに問題があるにも関わらず、経営者も労働者もお互いに聞く耳持たず状態に陥りやすくなってしまいます。
経営者としては労働者から労働環境を改善するべきだというまともな意見があがってきたとしても、お前達はやる気も低いし仕事の質も低いくせに何生意気なこと言ってんだと考えます。
労働者としては経営者からやる気を出せ、仕事の品質を上げろと言われても、こんな劣悪な労働環境しか提供できないくせに何偉そうなこと言ってんだと考えます。
お互いに「お前が言うな」状態です。
経営者も労働者も完璧な人間などいるわけがないので、本来であれば相手が完璧じゃないからといってお互いの問題点を指摘してはならないということはなく、お互いに真摯に耳を傾けるべきではありますが、「お前が言うな」の気持ちはよくわかります。
https://twitter.com/emya_ta/status/874508857174704132
「お前が言うな」というわけですよね。わかります。よくわかります。
私もブーメランを投げまくっている某政治家などを見ていつも「お前が言うな」という気持ちがこみあげてきておりますので、その例がわかるリンクを念のためはっておきますね。w
蓮舫のブーメラン発言をまとめてみた|二重国籍、事業仕分け・・・
「ブーメラン職人」「伝統芸」などと散々な言われよう。w
お互いに文句を言い合っていても解決しない
経営者側、労働者側にそれぞれに言い分はあり、お互いの言い分は両方とも正しいこともあります。「お前が言うな」という気持ちもよくわかります。
でもお互いに文句を言い合っているだけでは何も解決しないことはおわかりかと思います。どこかで労働環境悪化の無限ループを断ち切らねば、この無限に続く連鎖から抜け出すことはできません。
経営者側が常々労働者側に望んでいる通り、労働者全員が高いモチベーションを持って仕事に取り組むように意識を改善し、仕事の品質を高めてムダな作業が発生しないようになれば、当然のことながら労働環境悪化の無限ループからは抜け出せるでしょう。
しかし魔法でもかけない限りはその職場すべての労働者が突然高いモチベーションを持ち、仕事の品質を改善するなどということは不可能です。ある一人の労働者がやる気を出して品質改善の取り組みを始めたところで、自分が割を食っているような感じになってしまい、損した気分になるだけです。
そもそも劣悪な労働環境下にある労働者に対しては正論が通用しません。「品質を改善しろ」というようなことは全くもって正しいわけですが、デスマーチ状態でそんなこと言われても「何言ってんのふざけんなしね」としか思いません。
実際に睡眠時間が削られ、体力が削られている中でそんなこと言われても前向きになることができないのはある程度はやむを得ないところでしょう。
人間という生き物は最低限の欲求が満たされない限りは、より高度な欲求を満たそうと考えるようにはならない生き物なのです。
結局は自分が変わるしかないわけで・・・
自分以外の誰か他の人を変えようとしてもそれは中々難しいので、労働環境悪化の無限ループから抜け出すためには、結局は自分から変わるしかありません。誰かが何とかしてくれると思っているだけでは運任せになってしまいます。
しかし労働者側が変わろうとした場合、1人だけ変わっても意味がないので、労働環境を改善しようと考えた場合には、職場の労働者の多くが一斉に変わる必要があります。そして職場の労働者みんなで一斉に変わるなどということは奇跡に近いのではないかと思います。
だとすると労働環境悪化の無限ループから抜け出すためには、経営者が変わるのが正しいと私は思います。
そもそも労働者のモチベーションや自己変革に頼った経営などはまともな会社経営とは呼べないでしょう。そんなんだったら経営者は誰でも良いということになりますし、経営者はいつまでも労働者に責任を押し付けず、自分がリーダーシップを発揮して変革するのが当然です。
「労働者にやる気があれば状況はよくなる」「労働者の仕事の品質が高ければムダな作業をなくせる」というのは正しいですよ。本当に労働者がそうやって勝手に変わってくれたら会社は良くなるでしょうね。「お前の仕事の質が低いせいでムダな仕事が増えまくっているのに何言ってるんだ」という気持ちも理解できます。私もそう思っていたのでよくわかります。
でもそうやって人のせいにしているうちは何も良くならないということに気づいてしまったんですね。問題の原因と責任を労働者に押し付けてしまっている自分が経営者としてどれだけ無能だったかということにも。。
だからそれからは人のせいにすることはやめ、経営者として自分からアクションを起こして状況を変えていくことにしました。
今になって振り返って言えることではあるのですが、当時の私は問題の原因を労働者になすりつけてしまっていた時点で経営者としてはかなりアレですね。。
小手先のテクニックは通用しない
自分からアクションを起こしていこうと考えるようになったのは良いのですが、最初のうちはトンチンカンなことばかりやっていて、効果が全くあがりませんでした。
上で述べた労働環境悪化の無限ループから抜け出すために、従業員のモチベーションを高めようと考えた私は、会社の飲み会の数を増やしたり、面談の場を増やすなどしてコミュニケーションの頻度を高めようとしていました。ブラック企業がよくやっているやつです。
飲み会や面談そのものが悪いわけではないですが、労働環境が劣悪な中でそんなことをやっても、ますます従業員の負担が増すだけで下手すれば逆効果です。
劣悪な労働環境を改善するためには、このような小手先のテクニックは一切通用しませんでした。
労働時間が長い職場では産業医に診てもらうようにする施策なども、過労死を防止するという点ではある程度有効かもしれませんが、やはりこれも小手先のテクニックに過ぎず、根本的に労働環境が改善されるようなことはありませんし、従業員の不満が解決するということもないと思います。
状況を抜本的に改善するためには、問題の表面的な部分だけを見て小手先のテクニックを駆使するのではなくて、問題の本質に正面から向き合って対処するしか方法はありません。
必要なことはつべこべ言わずに労働環境を改善することだった
今となってみては極めてシンプルな話なのですが、会社の状況を良くするために必要だったことは、飲み会や面談の場を増やすといった場当たり的な小手先のテクニックではありませんでした。
必要だったことはそんなことではなく、つべこべ言わずにさっさと労働環境を改善することでした。もう本当にこれに尽きます。
確かに労働環境改善というテーマは簡単なことではないと思いますが、問題の本質はどう考えてもここにあったわけです。
この問題の難易度が高いからといってそこから逃げていたから、簡単に実施できる飲み会や面談の回数を増やすなどという愚策に走ってしまったのだと思います。
問題というものは表面的な事象にいくら対処していっても、根っことなる部分に対してしっかり対処しないと、結局いつまでたっても問題が解決しないばかりか、問題の本質を放置した分だけ時間の経過とともにさらに悪化してしまうこともあります。
今現在自社の劣悪な労働環境を何とかしたいと苦しんでいるブラック企業経営者の皆様は、大変だとは思いますが問題の本質から目を背けることなく、真正面から労働環境改善というテーマに取り組むべきだと思います。
元ブラック企業経営者として断言しますが、社員との飲み会や面談の回数を増やしたところで1ミリも状況は良くならないですよ。多くの従業員が望んでいるものはそこじゃないんです。
いつまでも言い訳なんかしないで、つべこべ言わずにさっさと労働環境を改善しましょう。