1人にしかできない仕事の担当者が急に休んでしまい、業務が進まず困った経験はありませんか?このような状態は「業務の属人化」と呼ばれ、対策せずにいるとさまざまな問題を引き起こします。
今回の記事では、業務の属人化のリスクや原因、解決方法について解説します。属人化の解決方法として知っておきたい、「業務の標準化」についてもまとめました。
属人化の解決方法はシステム開発の現場だけではなく、他業種の業務にも役に立つと思います。この記事がお役に立ちましたら幸いです。
業務の属人化とは
業務の属人化とは、特定の従業員のスキルや知見に業務が依存している状態を指します。1人が業務をまる抱えしており、他の人にはその業務ができない状態です。
システム開発業務において、様々なプロセスで業務の属人化が発生するポイントがあります。
- あるシステムの仕様は〇〇さんしかわからない。ドキュメントもないので聞かないとわからない。
- ○○という機能で不具合が発生した場合の対応方法は○○さんしか知らない。対応手順がチームで共有されていない。
- 営業担当者が顧客と取り決めた内容が、開発担当者に共有されていない。営業担当しかその情報を知らない。
- サーバーへのアクセス情報が○○さんしかわからない。○○さんがいないときには別担当者が緊急対応できない。
- 後続の育成がうまくいっておらず、マネジメント業務や営業業務が特定の人物しか行えない状態にある。
また、業務の属人化はシステム開発業界に限って発生する話ではなく、さまざまな組織で発生しがちな問題です。「○○業務の請求業務は△△さんしかできない。△△さんが休職になり、業務が滞ってしまう。」など、身近なところに属人化による弊害が発生しています。
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属人化によるメリット・デメリット
属人化という言葉は、一般的にネガティブな意味で使用されます。属人化が起きるとどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
デメリット
属人化の大きなデメリットとして、その人がいないと業務が非効率になることが挙げられます。
業務を進める方法がその人の頭の中にしかないため、その人がいない場合は他の人が1から調べながら行うことになってしまいます。
その人がいないと業務ができない、という事態も起こりかねません。例えば、アカウントのIDやパスワードが必要なメンバーに共有されていない場合、そもそも仕事を進行することができなくなってしまいます。
メリット
メリットと言ってしまうと語弊がありますが、属人化をする方針にするとコストを減らすことができます。属人化を解消するには情報共有のためのドキュメント作成や、習熟のための業務の引継ぎ・トレーニングといったコストがかかります。
デメリットで挙げた例のように、属人化にはかなりのリスクがあります。コストをかけてでも、属人化の解消はしておくべきでしょう。
属人化してしまう原因
大きなリスクがあることがわかっていながら、なぜ属人化は起きてしまうのでしょうか。
属人化しないことをルール化していない
業務の属人化を回避するためのルールが組織内で設けられていない状態ですと、属人化は一向に改善されません。
例えばプロジェクトの担当者は必ず2名以上とするなど、社内のルールを決定し遵守する、属人化を解消するための対応が必要です。
属人化していることに危機感を感じない
「この業務は〇〇さんに聞かないとわからない」という状態を、異常であると認識する組織作りが必要です。その人が不在の時の対応を考え、不在でも業務が滞りなく進行できる仕組みが不可欠です。
属人化している状態が解消されることに抵抗を感じる人がいる
業務が属人化している状態により、「頼りにされている」「私がいないと仕事が回らない」と考えているメンバーがいる場合は要注意です。
「もしも属人化が解消されてしまったら自分の居場所がなくなるのでは?」などというネガティブな理由から、情報をオープンにしなくなり、属人化が深刻になってしまう可能性があります。
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属人化の解消と標準化の推進をするメリット
業務の標準化とは、仕事が誰にでも同じようにできる状態にすることをいいます。マニュアルを用意するなど、ルールや作業手順を決めて行うことで、仕事が誰にでも同じようにできる状態を目指します。
属人化を解消することと標準化を進めることは、解決すべき課題が少し異なるため分けて解説します。
属人化の解消
属人化を解消することで、急な休みや休職・退職による業務に与えるダメージを少なくすることができます。属人化の解消のためにドキュメント作成や手順を社内に蓄積していくことになるため、副次的な効果としてノウハウの蓄積をすることができます。(アクシアであれば社内Wikiなど)
また、情報共有するのが当たり前であるという文化が醸成できたり、組織全体の情報整理能力・表現力の底上げが期待できます。
標準化の推進
ボトルネックとなる作業や専門職に依存する作業を分解することで、専門職が実施する工程の一部を他のメンバーで分担して進めることができます。
属人化の解消と標準化の推進をする方法・コツ
属人化を解消することと標準化を進めることは、解決すべき課題が少し異なるため分けて解説します。
属人化の解消
属人化の解消には2つのポイントがあります。
- プロジェクトごとに必ず2名以上の担当者をつける
- 情報共有を習慣とする(共有されていない状態を異常とみなす)
1人だけの体制を作らないことは属人化を解消するために重要ですが、情報共有の習慣がないと属人化が解消されたとは言い切れません。例えば、あるシステムにAさんとBさんの2人がログインできるとします。仮にAさんが設定変更をしたときに情報共有をしなければ、Bさんはログインできなくなってしまいます。
また、Aさん、Bさんのどちらも休んでしまった場合の対策も必要です。2人だけのやりとりでも、他の人から見えるオープンな場所で行うことで、他の人にも情報共有をすることができます。これにより、いざ2人がいないというときに他の人でも対応できるようになります。
頭の中にしかない情報をドキュメントや社内Wikiに記録し、コミュニケーションをオープンな場(Slack、Chatwork、共有メールアドレスなど)で行うように心がけ、情報共有する習慣をつけましょう。
標準化の推進
- 業務を分解する
標準化の推進には、業務を分解して他の人にも分けられる状態にすることが必要になります。
例えば、システム設計は通常エンジニアが行うものです。それをエンジニア1人で行うのではなく、UI設計や項目定義書などのドキュメントをエンジニアの指示のもと他の人に6割程度の完成度で作成してもらい、仕上げをエンジニアが行う、といった形です。制作物に対する責任は担当者であるエンジニアが持ちます。
業務の分解の理想は「誰に渡してもいい状態にする」ことです。
しかし、渡した情報量(インプット)に対してアウトプットの量にばらつきがあるため、どうしてもアウトプットの量が多い人に負荷がかかりがちという問題が起こります。
アウトプットのばらつきを抑えるためにはインプットを整理する必要があります。そのためには情報共有を習慣化することが必要となってきます。
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システム導入によって属人化を解消したアクシアでの事例
アクシアではプロジェクトごとに2名以上の担当者がついていることをチェックできる機能を、生産管理システムに搭載しました。
窓口担当者(2名以上)
顧客とのコミュニケーションを行う担当者が2名以上アサインされていることをチェックする
仕様ホルダー(2名以上)
顧客の窓口業務は行っていないとしても、開発やテスト業務にてそのシステムの仕様を理解しているメンバーが2名以上アサインされていることをチェックする
開発経験者
そのプロジェクトのタスクに関わったメンバーをスケジュールデータから自動的に抽出する
これらを定期的にチェックしたり、人事異動、退職が発生する場合の影響調査として活用しています。人事異動や退職によって属人化された状態が発生する場合、それを解消するための対応(引継ぎ、習熟期間)をセットで計画しています。
業務の属人化とは?解決方法は?まとめ
属人化はシステム会社でなくても起こりえる問題です。解消するのは難しく、仮に解消してもやるべきことが多くあり、常にアップデートしていかなければならない問題です。
業務の属人化と標準化についてひととおり解説してきましたが、簡潔に表すならば以下の3つがポイントです。
- 属人化の解消は人を増やす
- 標準化の推進は人に仕事を分ける
- 仕事を分けるために必要な情報をまとめる
属人化と標準化で解決する課題は異なりますが、情報共有がしっかりとできていることが肝心です。情報共有の文化が会社に根付いていることが、一番大事だと考えます。情報共有が文化として会社に根付くことで、風通しのよい職場環境を形成することができます。
この記事が属人化解消のヒントになりましたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。