エンジニアが最初の会社を1年で辞める問題


エンジニアに最初の会社を1年で辞めることを推奨する話をSNSで見かけましたが、それについて色々と思うことがあるのでブログで書くことにしました。

最初に断っておきますが、私は別に1年で辞めることを否定するつもりはありません。入社した会社がクソなブラック企業であれば、別に1年と言わずに1日でも早く辞めた方が良いと思います。「3年は続けた方が良い」などというナンセンスなことを言うつもりも一切ありません。

誰かから搾取して自分が得するという考え方

エンジニアは最初の会社を1年で辞めた方が良いという話の中で私が嫌悪感を感じたのは、会社を踏み台にして会社から搾取してやれという考え方が前提となっていたから。

冒頭でも書いた通り私は別に3年は続けた方が良いなどということを言うつもりは毛頭ない。辞めた方が良いと思うのであればいつ辞めても良いと思う。だけど最初から1年で会社を利用して1年で辞めてやるつもりで入社するのは違うだろ?と思うわけです。

その利用して搾取する対象の会社とは何か?会社とは法人だが、法人とはあくまでも法律上の存在であって、そこに実在するのは生身の人間である。経営者だけでなく、一般の従業員もいる。その生身の人間である彼らに対して「搾取してやれば良い」という考え方をしてしまうことに対して私は人間性を疑ってしまうのである。

社員から搾取して儲けてやれというブラック企業があったら皆さんどう思うだろうか?そんなこと聞くまでもなく、そんなクソみたいなブラック企業は早くこの世から消えてしまえばいいと思うはず。

会社から搾取しちゃえばいいという考え方は、ブラック企業のそれと全く同じなのだ。こういうブラック社員の考え方をする人間が会社経営をすれば、間違いなくその会社はブラック企業となるでしょう。

今回私が強い嫌悪感を感じているのはまさにここの部分。誰かから搾取して自分が得しようという考え方。私は搾取という行為が大嫌いなのだ。私が普段SESを猛烈に批判しているのも、単に偽装請負という違法行為の温床となっているからだけではなく、そこにある多重下請けのピラミッド構造がエンジニアから搾取するための構造となっているからです。

アクシアもかつては未経験者採用をしていた

今は幸いにしてたくさんの優秀なエンジニアの方々から応募してきていただけるようになって未経験者の採用はストップしています。(今は採用全体をストップ)

昔アクシアで未経験者の採用をしていた時には、最初の2~3ヶ月は業務には入れず、スキル習得の期間としていました。当たり前ですが給料を払いながら勉強やり放題の期間となるので、未経験者の人達からも当時大変好評だった。

だがしかし。3ヶ月の研修期間が終了した時点でさっさと退職していくクソは本当にいるんですよ。これだと会社としては全く利益を出せないどころか大赤字となってしまいます。

中には求人情報を見て「3ヶ月だけ就職して研修だけ受けたいです」という頭の悪いやつもいた。いや、正直に入社前にそれを言ってくれただけまだ良心的だったと考えるべきだろうか。

こうした会社に損害しかもたらさない輩の負担を誰が受けるのかというと、その会社の経営者および一般従業員である。そいつらの搾取のせいで被害を受けるのは 法人という概念上の存在ではない。生身の人間である。

こういう迷惑極まりない人間ばかりが社内に紛れ込んでしまっては、その会社はブラックな環境に落ちていかざるを得なくなる。だから経営者は会社をホワイトに運営しようと思ったら、こういう迷惑な輩を全力で排除しなければならない。

よって、会社から搾取してやれば良いなどという考え方をする迷惑な輩はまともな会社からは一切相手にされない。当たり前の話である。

企業が人を採用すると莫大なコストがかかる

企業が人を採用するときにはたくさんのコストがかかります。一般的に何かの求人媒体に掲載したりして採用をする場合に、1人採用するためには数十万~数百万円のコストがかかります。当然、場合によってはこれだけのコストをかけても採用できないということもありえます。

アクシアでは幸いなことに、お金をかけて求人媒体に掲載しなくても、会社のウェブサイト経由でたくさんのエンジニアが応募してきてくださるので、直接的な採用コストは発生しません。

しかしそれでも、選考業務にかかった人件費、採用時の事務手続き、育成にかかる費用など、間接的にかかるコストはかなりのものになります。雇用するとはそういうことなのです。そして、ビジネスなので当然これらのコストをペイさせなければなりません。

未経験者を雇って短期間で大幅に年収アップさせることは正直きつい

未経験者を雇用して短期間で大幅に年収アップさせてあげるのはきついというのが、経営者の正直な気持ちだろう。

既に述べた通り、人を採用するためには莫大なコストが発生する。未経験者を採用する場合には、育成するためにかかるコストがさらに大幅に跳ね上がる。これらのコストをペイさせるまでは、簡単には年収アップさせることはできない。

ここで1つの大きな問題が発生する。

自社で採用して育成すると育成コストがかかって、そのコスト全てをペイさせなければならないが、そこで育った人材を他社が引き抜く場合はどうだろうか?

引き抜く側の会社ももちろん採用にかかるコストは発生するが、未経験者を育成するコストは負担する必要がない。つまり、採用後にペイさせる必要のある部分は「採用コストのみ」となる。「採用コスト+育成コスト」をペイさせなければならない会社と比較して圧倒的に有利になり、より高い年収を提示しやすくなる。

これが未経験者は1年で辞めた方が良いという主張の裏にあるからくりである。事実、未経験者が1年で転職すれば年収アップする可能性はかなり高くなるだろう。なぜなら転職先の会社では未経験者を育成コストをペイさせる必要がないのだから。

では雇用する側の企業はどうすれば良いのか?

企業としては未経験者を採用してせっかく育成した人材が、まだコストがペイする前に転職されてしまってはたまったものではない。ではどうすれば良いのか?企業として取りうる選択肢は大きく分けて2つだ。

  • 無理して年収を上げる
  • 未経験者は採用しない

未経験者を育成するためのコストがまだペイできていなくても、無理してでも年収を上げるというのが一つの方法として考えられる。採用や転職は市場原理によって成り立つので、未経験者を採用した以上は他社に引き抜かれないようにするためにもこれは考えなければならない。

昨今の人材不足の状況を考慮すると、即戦力を採用できない会社であれば、未経験者を採用して育成する方法も現実問題としては検討せざるを得ない。

だがこの方法には大きな問題がある。未経験者の育成コストをどこから捻出するのか?その答えは「先輩社員が本来受け取るべき報酬を抑えてそこから捻出する」これしかない。お金はどこからか湧いて出てくるものではないからだ。

そうするとどうなるのかと言うと、結果は火を見るよりも明らかで、経験豊富な先輩社員が辞めていくリスクが相対的に高まってしまう。こちらの方が企業としてはダメージが大きいのではないだろうか?

これらの状況を考えて、アクシアでは未経験者の採用を極力行わず、即戦力となる人材を中心に採用する方針としている。(ここで言う「未経験者」とはプログラミング未経験者のことを指しており、業務未経験者は対象外)

アクシアが採っている方法は、未経験者を採用して育成するところにコストをかけることではなく、会社の労働環境を改善することにコストをかけ、アクシアで働いてもらうことに魅力を感じてもらえるようにすることで、即戦力の人材を採用しやすくする戦略です。

終身雇用が崩壊して採用制度のバグが発生している

エンジニアが1年で転職することを私は否定するつもりはないですし、未経験者の場合には実際にそれで年収が大幅にアップする可能性も高いでしょう。しかしそうした搾取を推奨するような流れを煽るべきではないと思うし、そうした理不尽が生じる方法を推進することで社会が良い方向に向かうとも思えません。

ではなぜこのような理不尽な状況が生じているのかと言うと、終身雇用が崩壊して、今がその過渡期だからでしょう。終身雇用が崩壊したことによって今までどおりの採用方法が成り立たなくなってきているのだと思われます。

未経験者を採用して1年で大幅に年収アップさせるべきだという考え方は一理あります。実際未経験者の人は1年で大幅に実力もアップします。この考え方に基づくと、この理不尽の裏にあるのは「人事評価制度のバグ」ということになります。実際そうした側面もまったくないわけではないでしょう。

しかし既に述べた通り、未経験者を採用した企業としては育成コストをペイしなければならない、それに対して引き抜く側の他社は育成コストを負担する必要がないという不公平な競争が生じている構造的な問題がある以上、最初に未経験者を採用した企業は圧倒的に不利な立場となるわけですので、人事評価制度のバグとして片付けるわけにはいかないでしょう。

そこに発生しているのは、採用制度のバグです。終身雇用の時代であれば、未経験者を採用してそこに投資し、育成して戦力にするというやり方は極めて合理的な方法だった。新卒一括採用というやり方も同じです。

しかし終身雇用は既に崩壊してますので、未経験者を採用して育成すると他社との年収提示の競争に勝てないという問題が必ず生じます。それなのに従来どおりの「未経験者を採用して育成する」という採用制度のバグが背景に存在してます。

タダ乗りして搾取している人間は誰か?

未経験のエンジニアが1年で転職するという考え方は、企業から搾取しようという考え方以外のなにものでもありません。タダ乗りして搾取している人間は、自分で戦力になるために必要なスキルを身につけることもせず、それを企業に負担させ、1年で利己的に転職しようと考えている人達です。

だから転職するなとは思いません。今は未経験者でも採用して育成するという、採用のバグが存在しているので、当事者がそうした考え方をすることはやむを得ない部分もあるでしょう。

しかし企業にタダ乗りして搾取しようとする人達を推奨するような行為は許せません。その搾取の対象となっているのは、何度も言う通り法人という概念上の存在ではなく、生身の人間ですから。

人から搾取することを推奨することを私は絶対に認めたくないですし、そんなことをしている輩はブラック企業とやっていることが何も変わらない。絶対に関わりたくない人種でしょう。

この搾取構造に気付いた企業は徐々に未経験者を採用することをやめていくでしょう。これは終身雇用が崩壊したあとの当然の流れです。これからの時代、エンジニアのような専門職に就きたい人は、自分の努力で必要なスキルを身につけてくることが求められる時代になるはずです。

搾取を当然とするような人間と一緒に仕事したい人はいない

私は搾取という行為が大嫌いです。搾取されたい人間などいないでしょう。人から搾取することを良しとする人間は、社員から搾取しているブラック企業と何ら変わりません。

企業と企業、企業と従業員、従業員と従業員、あるいは友人や家族など、相手とどんな関係であっても、WIN-WINであることが人間関係の基本だと思っています。どちらかが搾取することを喜んでいるような人は人間性を疑います。

そんな人と一緒に仕事したい人なんてどこにもいませんよ。まともな会社で仕事したいと思うのなら、誰かから搾取しても良いなどという考え方は今すぐ捨てるべきですね。

それとね、1年で会社を辞めた方がいいみたいな考え方って、3年は会社を辞めるなみたいな考え方と同じくらいセンスないですよ。そんなの人によるし、ちゃんと自分の頭使って考えられる人なら1年とか3年とかナンセンスな基準ではなくて、自分にとって最適な方法を考えますよね。

最後にアドバイスというか、私の考えを少し述べますと、長い職業人生の中で、1年目、2年目の収入なんて長期的に見たら誤差みたいなものです。目先のほんの少しの収入アップのために何をみみっちいこと言ってんだという感じです。

そんなみみっちいことを言う小さな人間になるのではなく、長期的に見た時に自分にとって一番成長できる方法は何なのか?ということを自分の頭でしっかりと考えることを強くおすすめしたいですね。その上で「1年で辞める」が最適な選択肢なのであれば私は全力で応援します。

そっちの方が圧倒的に楽しい&成長できるし、多分その方が生涯年収も圧倒的に多くなると思いますよ。