IT業界を定時で帰れる魅力的な業界にしよう


IT業界の印象と聞かれればどんな業界をイメージするでしょうか?以下のイラストを見てください。

IT業界の環境について3K(きつい・帰れない・給料が安い)と表現されていたものを、多少強引ではありますがKつながりで拡張したものになります。厳しいとか心を病むとか色々書かれていますが、この多くは「残業が多い」ことに起因するものです。

IT業界で働くことはきつい。こう思ってこの業界を離れていった人は実際に数多く存在することでしょう。残業が多すぎてこんな状況だとまともに子育てもできないということで、出産を機にこの業界を離れ、本当はまたエンジニアの仕事をやりたいと思っているのに、やむを得ずにこの業界を離れる人もいます。

もちろんIT業界も悪いことばかりではありません。ITの仕事にやりがいを感じて仕事をしている人もたくさんいます。

人口減少社会となった今、このままではますます人材不足に陥っていくことが明らかであり、ITの力を駆使して社会全体を業務効率化する役割の一端を担っているIT業界は重要な存在のはずです。

そんなIT業界の人材を強化して業界全体を発展させていくためには、IT業界をもっと魅力的な業界と変えていくことが必要だと感じています。

IT業界で働く魅力とは何なのか

IT業界で働く魅力は何なのかと問われれば、その魅力は様々であり、人によって異なりますが、IT業界の魅力を一つ例としてあげると、ITの力を駆使して業務効率化を実現できる仕事であるということは、この業界で働く大きな魅力としてあげることができます。

顧客の業務効率化を支援することもできますし、自らの業務効率化をITを駆使して実現することもできる。こういう働き方を実現できていれば、その仕事に楽しさややりがいを感じる人は多くいるはずです。

今は労働人口がどんどん減少していく時代であり、働き方改革が求められている時代でもあります。働き方改革を実現する手段としては、当然のことながらITの力を駆使した業務効率化も重要であり、IT業界は今の時代において必要とされている業界でもあります。

しかし「顧客の業務効率化を支援する」と聞いた時に、IT企業が言うといまいち信用できないと言うか、胡散臭さすら感じてしまいかねない理由は、ずばりIT業界に残業が多いからです。自分達の業務効率化すら実現できないくせに、よその会社の業務効率化なんて実現できるわけがなかろうと思われてしまっても、全く反論の余地もありません。

IT業界に進むことを検討している若者に対して、ITの力を駆使して業務効率化を実現できるという魅力を熱く語ったところで、「じゃあお前達は何で残業まみれなんだ」という適切なツッコミを入れられてしまうのが落ちです。

私も業務効率化のためのシステム開発を希望する企業に営業する時には「残業まみれのIT企業に業務効率化のためのシステム開発を依頼することは悪い冗談でしかない」というお決まりの営業トークは過去に何度も展開してきております。

IT業界を志す若者にIT業界の魅力を感じてもらうためにも、まずはIT業界で生きている企業自らが業務効率化を実現し、「残業まみれ」の体質から完全脱却することが求められます。IT企業は「先ず隗より始めよ」です。

なぜIT業界では残業が多くなってしまうのか

IT業界において残業まみれになってしまいがちな理由は一つではなく、複雑な要因が絡み合って今のこの状況になっていると考えることができます。原因がシンプルではないため、これをやれば簡単に残業削減できるみたいな、特効薬的のようなものは存在しません。

しかしIT業界の非効率化、それに伴う残業体質の根底に大きく存在する要因としては、多重下請構造と客先常駐がセットになった、いわゆるSESと呼ばれる形態が存在することは間違いありません。

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多重下請構造と客先常駐がセットになると、ほぼ間違いなく偽装請負の状態に陥ります。偽装請負になると責任の所在が曖昧となり、労働環境が悪化しやすくなります。また偽装請負では自分達が本来有しているはずの裁量が極めて限定的になるため、労働環境改善の施策を打つことも普通の会社と比べると極めて難しくなります。

またSES契約だと顧客側企業は契約時間の上限ギリギリまでは労働者を使い倒したいという意図が働きやすくなり、受注側企業としてはプロジェクトが炎上すれば炎上するほど儲かってしまうため、プロジェクト現場の労働環境が悪化しても経営層の問題意識は希薄なものになります。

逆に現場で何もやることがなくなってしまったとしても、契約時間の下限までは席に座っていてもらわないと売上が減少してしまうため、仕事を早く終わらせて早く帰るということがやりにくくなってしまいます。GWや年末年始のような大型連休がある月になると、毎日早く帰ると契約下限時間を満たせなくなってしまうため、やることがなくても無駄に残業や休日出勤の指示が出ることすらあります。

このように至る場面であらゆるステークホルダー達が、過剰な業務効率化を嫌う構造的な問題がSESにはあるため、この形態が蔓延しているうちはIT業界全体の生産性を向上させていくことは難しいと言えます。その当然の結果として業界全体が残業体質に陥りやすくなります。

SESだと組織的なノウハウが蓄積されない問題

SI企業とSES企業による多重下請構造・客先常駐のスタイルは、プロジェクトごとに色々な会社からメンバーとなるエンジニアを招集し、プロジェクト終了に合わせて解散となることが基本です。保守党で一部チームが継続することもありますが、基本はプロジェクトごとに招集・解散となります。

多数の会社から集まったメンバーが、プロジェクトが終わるとそのまま解散となるため、そのプロジェクトでチームとして蓄積されたノウハウもプロジェクト解散と共に消滅します。個人にはプロジェクト経験が蓄積されることはあっても、チームとしてノウハウが蓄積されていくことはありません。

またプロジェクトごとに招集・解散が繰り返され、そのプロジェクトを構成するメンバーは単一の会社ではなく、たくさんの会社から人を集めた寄せ集め部隊となっています。当然のことながら予算も「プロジェクトごと」となります。ここも実は大きな問題です。

例えば、あるプロジェクトで業務効率化を妨げている課題が浮き彫りになったとします。その課題を解決するための施策を検討したところ、問題解決するためには300万円の人件費が必要になったとします。この300万円を投資するかどうかの判断が必要です。

SI企業・SES企業が行っているような「プロジェクトごと」の予算管理だと、プロジェクトマネージャーは当然のことながら自分が担当しているプロジェクトで利益が出るように予算を考えます。上記の300万円を投資するかどうかの判断は、そのプロジェクトにおいて300万円を投資する以上の効果が見込まれるかどうかで判断することになります。300万円を投資しても赤字になるだけ、もしくは利益が減ると判断すれば投資できません。

しかしアクシアのように単一企業で開発を行っている会社の場合だと、上記の300万円を投資するかどうかの判断をする時に、単一プロジェクトで費用対効果があるかどうかだけではなく、会社全体として将来も含めて費用対効果があるかどうかという判断をすることができるようになります。

たとえそのプロジェクト単一で考えた場合には300万円を投資することで赤字になってしまう場合でも、将来を含む他のプロジェクトも含めて考えた時にプラスになると判断できれば、300万円を投資して業務改善を実施することができます。

管理の単位がプロジェクト単体だけではなく、会社全体で管理できることによって、業務改善にかけられる投資の幅を格段に大きくすることが可能になります。結果として業務効率化はますます促進され、無駄な残業はどんどん減っていきます。

IT業界を定時で帰れる魅力的な業界にしよう

IT業界を定時で帰れる魅力的な業界にしようというのは、単に楽しようぜ?みたいな話をしたいわけではありません。

IT業界全体の将来の発展を考えた時に、今のままでは労働人口が足りなくなりますし、IT業界がいつまでも率先して非効率なことをやっている場合ではないと思うのです。そんなことをいつまでもしているなら「IT業界は3Kで魅力がない」と見放されてしまっても仕方ないですよね。

ITの力を駆使して業務効率化を実現できる仕事

本来はこんなに魅力ある仕事であり、社会的意義もあり、時代からも必要とされている仕事のはずなのに、ITの力を駆使して業務効率化を実現できる仕事という魅力を発信するためには、IT企業が残業まみれの状態では説得力も何もない。だからこそIT業界は自ら業務効率化して定時で帰れる業界にすべきである。これが私の主張です。

ITの力で業務効率化を支援するはずの会社自身が実は残業まみれみたいな漫才みたいなことをいつまでもやっている場合ではないんですよ。

それにエンジニアという生き物は本来自らのスキルアップに飢えている生き物ですからね。彼らのスキルアップの邪魔だけはしてはいけません。エンジニアのスキルアップを邪魔する一番の要因は何だかわかりますよね?それは彼らの勉強時間を奪ってしまうほどの残業です。

色々な技術を試して自らのスキルアップに時間を使いたい。こんな想いを抱くエンジニアから過剰な残業で時間を奪うようであれば、業界に魅力を感じてもらえるわけがないですよね。

自らを業務効率化して定時で帰ることができる。ITで顧客の業務効率化の支援もできる。定時で帰って自由にスキルアップのために時間を使うこともできる。

こんな業界になればIT業界は今よりも働きやすくなり、今よりも社会に貢献できるようになり、今よりもこの業界で働くことが楽しくなり、今よりもIT業界に魅力を感じてエンジニアを志してくれる人が増えると思いませんか?

そのためには今の問題だらけの多重下請構造・客先常駐の構造的問題を解消しないと無理ですけどね。普段から私が単にSESが嫌いという理由だけでSESを批判しているわけではないのですよ。(嫌いだけどw)

以上、過去自分自身が残業まみれだったことは完全に棚に上げて、「IT業界を定時で帰れる魅力的な業界にしよう」と私が考える理由でした。

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