「エンジニア採用で企業が考えるべきこと」をSES視点で考えてみた


エンジニアが望む働く環境とはどんなものなのか?について考え、先日このようなエントリーを書きました。

エンジニア採用で企業が考えるべき3つのこと

多くのエンジニアの方達からご協力をいただき、たくさんのご意見をいただけたおかげで私としても大変有意義な情報を得ることができました。この内容はアクシアだけにとどまらず、エンジニアを採用したいと考えている企業にとって役立つ情報となったと感じています。

一方でIT業界では昔から多重下請構造の客先常駐(いわゆるSES)の形態が蔓延しており、現場のエンジニアを含む多くの人達が問題だと感じています。日本のIT業界を良い方向に進めていくためには、このSESという形を解体していかなければなりません。

SESがなぜダメなのか?その理由については今までもこのブログで何度も書いてきております。

日本のIT業界のためにSESは消滅するべきだと思う

SESがダメな理由について考える時に、先日のブログで書いた「エンジニア採用で企業が考えるべき3つのこと」とSESを照らし合わせて考えてみると、その理由がより鮮明に見えてきます。本日はSES視点で「エンジニア採用で企業が考えるべき3つのこと」について考えてみました。

1.裁量を持って仕事ができない

エンジニアが働く環境として望むものとして「裁量を持って仕事ができること」ということがあります。しかしSESではこの「裁量を持って働く」ということが非常に難しい。というよりも不可能に近い。

SESの現場では偽装請負が当たり前のように行われています。偽装請負が行われていると、本来指揮命令権のないはずの他社の人間が命令をしてきます。そうすると本来自社で当然有しているはずの裁量権がなくなります。

仕事の進め方、働く場所、服装、働く環境、働く時間。これら全てを他社から指定を受けることになります。これではまるで客先の従業員のようです。

こうしたことに多くのエンジニアは嫌気が差しており、「自社開発であること」を働く環境として望むものにあげた人が多くいました。自分の会社で働くという普通のことができないのがSESです。

エンジニアの中には「裁量労働制」や「フレックスタイム制」を望む人も多く存在します。しかしこのような働き方もSESでは当然のことながら不可能です。なぜなら自社に本来あるはずの裁量がないからです。全てが客先の統制下に置かれてしまうからです。

一番意味不明なのは、SESなのに裁量労働制の会社です。SESでは労働者どころか企業にも裁量などないに等しいにも関わらず、裁量労働制としているSES企業が存在するようです。裁量がないのに裁量労働制とする理由はただ一つ、残業代を払わないためです。

またエンジニアの中には開発ツールやソフトについてもこだわりを持っている人が多くいます。エンジニアは職人のようなものですから、自分の仕事道具に対してこだわりを持つことは当然のことでしょう。そうやってエンジニアは少しでも生産性を上げていくものです。

しかしSESでは自分でツールやソフトを選定することが難しい現場の方が多いでしょう。使用する開発マシンは客先で提供されるものであり、ソフトをインストールするためには他社の稟議を通さなければならないこともあります。ほとんどの場合は「ダメ」の一言で終わるでしょう。

自分達に裁量がないことの極みが「偽装請負」ですから、偽装請負が蔓延しているSESでエンジニアが裁量を持って働くことは極めて困難と言えます。

2.快適な開発環境が提供されない

エンジニアにとって快適な開発環境が提供されることは極めて重要なことです。高スペックな開発マシンが与えられるだけで生産性が向上しますが、それだけではなく良いマシンが提供されれば多くのエンジニアはモチベーションがアップします。

このことを理解していない人も結構多いですが、貧弱なスペックの開発マシンが割り当てられることは、エンジニアにとっては人権侵害にも等しい行為です。これだけで仕事に対するやる気を失うためには十分すぎるくらいのダメージとなります。

ではSESの現場ではどうなのかと言うと、「低スペックマシン」「長机」「パイプ椅子」の3点セットがSESの三種の神器となっております。

少し重たい処理を走らせたらフリーズしてしまうような貧弱な開発マシン。隣の人の肘と常にぶつかりながら仕事をしなければならないような狭いスペースに押し込められた長机。長時間座りっぱなしだと確実に腰を痛めてしまいそうなパイプ椅子。

このような環境がSESの現場で多いのは、これらの環境を提供しているのが自社ではなく客先企業だからでしょう。客先企業にとってはこれらは経費でしかありません。モチベーションが下がっても他社の人間なので関係ありません。経費削減の方向「だけ」に舵を切る客先の担当者が出てきても何ら不思議ではありません。

非常に運が良い場合は快適なプロジェクト現場に入れることもありますが、狭いスペースに追いやられる場合も多いですから、デュアルディスプレイなんて夢のまた夢みたいな現場もあります。

デュアルディスプレイどころか、一体いつの時代のパソコンだよと思ってしまうような貧弱なノートパソコンが提供され、それでも隣の人と肘をぶつけ合いながら毎日仕事を進めていく忍耐力がSESには必要です。

今の現場で快適な開発環境を与えられているエンジニアの方も気をつけてください。次のプロジェクト現場では「低スペックマシン」「長机」「パイプ椅子」の三種の神器があなたを待っているかもしれません。

3.スキルアップできる環境がない

エンジニアにとってのスキルアップできる環境は様々です。その方法は当然一つではありませんし、どの方法が自分にとって最適であるかは変わります。

エンジニアにとってスキルアップする方法は様々である、ということを前提とした時に、エンジニアがスキルアップできる環境として一つだけ絶対に考えなければならないことは「エンジニアがスキルアップする邪魔をしない」ことに尽きると思います。

人によってスキルアップに最適な方法が異なるわけですから、全ての人に最適なスキルアップ環境を提供することは不可能です。そうであるならば、個々のエンジニアが自分で望むスキルアップの方法を妨げないことが企業にできる一番重要なことになります。

エンジニアがスキルアップすることを妨げない具体的な方法とは、ずばり長時間残業にならないことです。アクシアのように完全に残業ゼロでなくとも構いません。エンジニアが仕事後や休日にスキルアップするための時間を奪ってしまうほど残業させないことが重要です。

「時間は自分で作るものだ」とか言ってはいけません。時間があっても気力や体力が落ちればスキルアップに励むことができなくなることだってあります。もちろんどんなに長時間働いていても更にスキルアップのために努力できる鉄の意志を持った人もいるでしょうが、それがすべての人に当てはまるわけがありませんし、一般論としてはスキルアップするためには十分な休息も必要でしょう。

SESのプロジェクトの中には、もちろん残業の少ない現場もあります。しかしそういう現場もあるということは重要ではありません。重要なことは、SESでは残業を自社でコントロールすることが困難だということです。完全に現場次第、残業が多いか少ないかは運次第だということです。なぜなら、偽装請負が行われていれば自社に裁量がないからです。

エンジニアがスキルアップに励むためには、完全に残業ゼロでなくても構いませんが、必要な休息をしっかりと確保し、勉強するための時間的余裕が必要です。そのためには業務をコントロールし、残業時間を管理しなければなりませんが、SESではそれができません。

運良くSESの現場でもスキルアップできる環境に入れる場合はもちろんあると思いますが、それは所属したSES企業が良かったわけではなく、偶発的に得られた産物だということです。SESでスキルアップできる環境を手に入れられる論拠にはなりえません。

まとめ

先日のエントリー「エンジニア採用で企業が考えるべき3つのこと」では、エンジニアが望むものとして以下の3つをあげました。

  1. 裁量を持って仕事ができること
  2. 快適な開発環境が提供されていること
  3. スキルアップできる環境があること

SESという環境は上記3つの要素とは対極にある存在です。そしてその原因のほとんどは、自分達にあるはずの裁量が与えられていない「偽装請負」に起因します。偽装請負が行われているうちは、「エンジニア採用で企業が考えるべき3つのこと」を実現することは不可能です。

SESが本当にエンジニアにとってプラスになる環境を作ろうと考えるのであれば、まずはSESからの脱却が大前提となります。そうしないとエンジニアに優しい会社になることは不可能でしょう。SESの構造は、日本のエンジニアを苦しめ、IT業界の生産性を下げている原因にもなっています。

エンジニアが働きやすい環境を作り、日本のIT業界全体を成長させていくためには、SESからの脱却は不可欠です。

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