マネージャーが部下を病院送りにしてやったと自慢していた話


リーダーに資質がないためにチームがうまく機能せず仕事がうまく進まないという話はいたるところでよく聞く話です。プロジェクトを成功させて仕事で高い成果を出すためにはリーダーの存在が重要であることは言うまでもありません。

新卒で入った会社で私が配属されていたプロジェクトでは、10人に1人が病院送りになるプロジェクトでした。もちろん長時間労働でプロジェクトが過酷だったということもありますが、それだけでは10人に1人も病院送りにはなりません。

そのプロジェクトのメンバーで食事に行った時に私はマネージャーからとんでもない言葉を聞きました。

「あいつは俺に逆らったから病院送りにしてやった」

そのプロジェクトではマネージャーによるパワハラが横行していたのです。しかもマネージャーが気に入らないと思った相手に意図的に。

システム開発のプロジェクトでは、プロジェクト炎上の話をよく聞きます。そしてプロジェクト炎上の大きな要因の一つにはプロジェクトマネージャーの問題があります。適切なリーダーを抜擢しなかったために、悲惨な目にあってしまう人は多いのではないかと思います。

本日は「あいつは俺に逆らったから病院送りにしてやった」と自慢気に話していたマネージャーの話と、なぜそんな人がリーダーとして抜擢されてしまうのか、そのことによる悲劇を書いてみたいと思います。

次から次へとメンバーが入れ替わるプロジェクト

私が在籍していた会社は多重下請構造の中でも、元請けに位置することの多い会社でした。SESで人売りもやっていましたが、元請けなので人買いの方が多い会社でした。

プロジェクトはしょっちゅう炎上し、深夜残業や徹夜は当たり前だったので、その会社の開発センターのビルは常にどこかのフロアの電気が付いたままの状態。24時間明るい状態を保っていたので社員からは「不夜城」と呼ばれていました。

そんな状態だったのでプロジェクトメンバーは次から次への入れ替わります。SESで新しく入った協力会社の人達も、すぐに抜けて代わりの人が送り込まれてくる状態です。

普通にプロジェクトを抜けていければまだマシで、中には体や心を壊して病院送りになってプロジェクト離脱するメンバーもいました。私が転職活動でSESの会社に面接に行った時に私の所属会社の名前を見たSES企業の社長が「この会社に人を送り込むと壊されて戻ってくるので取り引きするのやめたんですよ」と言っていたくらいです。

プロジェクトメンバーが次から次へと離脱する理由は、長時間労働もありますがパワハラも大きな要因の一つだったと思います。私も随分といじめや嫌がらせをされたことを覚えています。

長時間労働もリーダーの能力不足で発生することが多いわけですが、長時間労働の原因には様々な要因があり、末端のメンバーが原因となって発生する長時間労働がないわけではありません。

ただしパワハラに関しては間違いなく権力を持った上の人間によって引き起こされる問題です。リーダークラスの人間に問題があると、マネジメント能力不足による長時間労働が引き起こされるだけではなく、リーダーの人格にまで問題があるとパワハラという問題まで引き起こされます。

あまりにもプロジェクトメンバーの入れ替わりが激しい現場では、かなりの確率でパワハラも発生していると考えた方が良いと思います。

人格に問題がある人がリーダーとなる悲劇

人格に問題がある人がプロジェクトメンバーにいるだけでも弊害はありますが、そういう人がリーダーになると権力を行使できるようになるので問題は大きくなります。

どんな理由があろうともパワハラなど許されるものではありませんが、「あいつは俺に逆らったから病院送りにしてやった」と自慢していたマネージャーは、単に「気に入らなかったメンバー」をいじめのターゲットとし、入院するまで追い詰めたのです。これはマネージャーというポジションと権力があったからできたことです。

具体的な話をすると、そのプロジェクトでは顧客との打ち合わせで仕様決定した内容が、プロジェクトメンバーにしっかりと伝達されていませんでした。そのため1人のメンバーが改善の必要があると日報で訴え続けていたのですが、マネージャーに取り合ってもらえませんでした。

ところがプロジェクト中盤になってからマネージャーが「顧客との打ち合わせ内容をもっとしっかりとメンバーに共有する必要がある」と発言しました。これに対してそれまでずっと情報共有の改善を訴えてきたのにマネージャーに取り合ってもらえなかったメンバーが「何を今さら」と日報システムで発言してしまいました。

これに激怒したマネージャーはそのメンバーへの執拗なパワハラを開始しました。メーリングリストでの暴言、直接呼び出しての叱責など、毎日いじめが行われるようになりました。

そしてある時、ついにそのプロジェクトメンバーは入院。入院後にやりすぎたと反省する様子もなく「あいつは俺に逆らったから病院送りにしてやった」「悪いけど全く気の毒だとは思わない」と他のプロジェクトメンバーの前で豪語する始末。

人格に問題のある人に権力を行使できるポジションが与えられてしまうとこのような悲劇は起きえます。はっきり言って誰も得しないばかりか、現場は地獄絵図ですね。

なぜ人格に問題のある人がリーダーに抜擢されてしまうのか

こんな人、リーダーに抜擢しなければ良いのにと、誰でも思います。ではなぜそのような問題ありの人がリーダーとして抜擢されてしまうのか。

上司に媚びへつらうことだけは誰にも負けないくらいにうまい無能が役職に抜擢されてしまうということもあると思いますが、システム開発のプロジェクトで結構多いのは「プログラマーとしては優秀な人」がリーダーに抜擢されてしまうというケースです。

いわゆる、プレーヤーとしては優秀だけどマネジメントには向いていない人ですね。プログラミング能力とマネジメント能力は全く別物なのになぜかこのようなケースが本当に多いです。

プログラマーとしては極めて優秀な人にとっても迷惑な話ですよね。プログラマーとしてその能力をフル活用してくれればプロジェクトに大きく貢献することができるのに、向いてないのにリーダー職に抜擢されてしまったがために、無能の烙印を押されてしまうことにもなるわけですから。

マネジメント能力のないプログラマーがリーダー職に抜擢されてしまうと、まともにマネジメントすることなどできませんから「気合と根性」によってプロジェクトが進行されるようになります。

少々のプロジェクト遅延であれば気合と根性で何とかなってしまうこともありますから、それで一見すると成功しているかのように見えるプロジェクトもあります。でもその陰でプロジェクトメンバーは非常につらい思いをしていたりします。

そして人格に問題のある人がマネージャーに抜擢されてプロジェクトメンバーが次々と入れ替わったとしても、奴隷のようにそのマネージャーについてきてくれる優秀なメンバーが数名いると、簡単なプロジェクトだと成功させてしまうことができてしまうので、問題の本質が中々表面化しない場合もあります。

そのためプレーヤーとしては優秀だけどリーダーとしての資質がない人がリーダーに抜擢されるという事態が改善されることもなく、残業地獄やプロジェクト炎上の毎日を繰り返しているというのが、今のIT業界ではよくある光景ではないかと思います。

ではどんな人を抜擢すれば良いのか

ではリーダーにはどんな人を抜擢すれば良いのかと言うと、マネジメント能力は必要ですから、これはそういう能力がある人を抜擢したり、そういう面を育成しなければなりません。プログラミング能力が高いからと言ってそれだけでリーダーが務まるわけがありません。

また人格に問題のあるような人は絶対に権力を持つリーダー職に抜擢してはいけないわけですが、人格と言っても抽象的すぎて難しいですよね。人格と言うと抽象的すぎるので私としては、「色々なメンバーや考え方があることを理解できる人」であることは必須だと考えています。

自分とは違った価値観や考え方のメンバーがいても怒らない人、話をちゃんと聞ける人でないとリーダーは務まりません。自分とは違う考え方を最初から否定してしまうような人だと厳しいです。

実はプログラマーにはそのような人が結構います。自分の実装方法と違う方法を最初から否定しかできない人とか、自分がいつも使っている開発ツール以外は最初から認めようとしないような人です。

そういう人はレビューで何か指摘されたとしても人の話を聞くということができませんし、人の意見を聞けないのでより良い開発方法について議論することもできません。議論しているように見えてもそれは一方的に自分の意見を主張しているだけです。

そういう人がプロジェクトの一メンバーであるうちはそれほど大きな問題にはなりませんが、リーダー職について権力を持ってしまうと大きな問題となります。権力を乱用してパワハラしてまで自分の意見に従わせようとまですることがあります。

リーダー職ですのでそのポジションにふさわしいマネジメント能力が必要なことはもちろんのこと、色々なメンバーがいるという当たり前の事実を理解し、多様な考え方があることを受け入れられる人を、リーダーとして抜擢する必要があるのではないでしょうか。

それができれば「あいつは俺に逆らったから病院送りにしてやった」と暴言を吐くようなリーダーに苦しむ悲劇が生まれることもないように思います。