かつて社員のやる気を引き出せると思っていた無能経営者の話を書きたいと思います。その無能経営者とは私のことです。以前は会社トップとして、従業員のやる気を引き出そうと必死でしたし、引き出せると信じていました。でもそんなことは結局できませんでした。
昨日は社員のやる気に関して、こんなブログ記事を書きました。
ここに書いてあることは全て私がかつて実際に行ってきたことばかりです。私が行ってきたことは、社員のやる気を引き出すことではなく、社員のやる気を奪うことでした。
どうやったら社員のやる気を引き出させることができるのか。
経営者として散々悩んで失敗も繰り返し、考え抜いたあげくに私が導き出した結論は、自分には経営者として社員のやる気を引き出すことなどできないということでした。
昨日書いたブログの内容と一見矛盾するようですがそうではなく、私が上司としてできることは、「社員のやる気を引き出すこと」ではなく、「社員のやる気を奪わないこと」だと考えました。
私が社員のやる気を引き出すことができないのは、おそらく経営者としての私の能力がその程度だというだけのことであって、世の中にはカリスマ性もあって社員をやる気にさせることができる有能な経営者は存在すると思います。
社員のやる気を引き出すのではなく、やる気を奪わないようにしようと思ったことは、凡庸な私でも経営者として現実的にできることとして考えた結果です。なぜ、社員のやる気を引き出すことは不可能だと考えるようになったのか、その経緯をまとめてみました。
社員のやる気を引き出すことなどできなかった
かつては私も社員にやる気を出してもらおうと、色々と悪戦苦闘したものです。会社的に様々な問題を抱えており、社員のやる気にどうしても頼りたくなってしまっていたというのが、当時の正直な心境です。
会社として抱えている様々な問題には目を背けるというか、問題が起きているのは社員のやる気が無いからだと思っていました。今思えば無能経営者の極みですね。
問題の原因が社員のやる気が無いからだと思ってしまうとどうなるかというと、「社員のやる気を奪う業務改善7つの法則」で書いてあるようなことをやり始めてしまうんですよね。お前らやる気ないんだからやる気出せ、やる気出してもっと働けとなります。
もしかすると世の中には卓越したカリスマ性によって、問題だらけの状態でも社員にやる気を出させることのできるカリスマ経営者がいるのかもしれません。あるいは社員のやる気を引き出すための確立された理論によって、社員のやる気スイッチを押してやることのできる有能な人もいるのかもしれません。
しかし私にはそんなことはできませんでした。社員のやる気を引き出すことが結局できなかった私が理解したことは、「やる気とは、自分自身で引き出すものだ」ということです。人にあれこれ言われたところで、自分でやろうと思わない限りはやる気など出てこないと考えました。
会社の問題が解決してくると社員のやる気に頼る必要がなくなった
私が会社経営を行う上で、社員のやる気に頼る必要などないと気づき始めたのは、2012年10月以降です。2012年10月は、アクシアの残業がゼロになった時です。残業ゼロとなることで様々な会社の問題が解決されてくると、社員のやる気を気にすること自体が少なくなりました。
これは私自身が経験してきたことですが、会社や仕事のことがうまくいかないときというのは、どうしてもその原因を社員(部下)のせいにしてしまっていました。なぜなら自分自身が無能だからです。
問題が解決しないのは部下のやる気がないからではなく、自分自身のマネジメントのやり方がまずいからだと気付くまでには相当時間がかかりました。
そもそも上司から「やる気が無いのか」とか「もう少しやる気出せ」みたいに言われることはストレスでしかありません。自分がサラリーマンだった時にはわかっていたこんな当たり前のことが、自分が経営者になって立場が変わった途端になぜかわからなくなってしまうんですよね。立場って怖いですね。
社員のやる気に頼る経営というものは、経営者が本来やるべきことを放棄してしまうということに他なりません。マネジメントの放棄とも言えます。「やる気出せ」と言うだけなら誰にでもできますからね。
これは自分で会社を作ったばかりの経営者なんかにはよくあることなのではないかと思います。自分で会社設立するような人はやる気に満ちあふれていますので、どうしても普通の一般社員との温度差を感じてしまい、やる気のない社員にイライラしてしまうんですよね。自分のマネジメント能力不足は棚に上げて。
結局当時の自分は、やる気ある無能だったということです。一番たちの悪いやつですね。
きちんとマネジメントによって問題解決していけば、別に社員のやる気に頼る必要など全く無いのに、問題の原因を社員のやる気の無さに求めてしまい、その結果として社員に理不尽な要求をしてしまうということです。
社員のやる気に頼る経営は危ないですね。
できることは社員のやる気を奪わないことだった
自分が経営者としてできることは、社員のやる気を引き出してやることではなくて、社員のやる気を奪わないということでした。
これは別に社員のやる気を引き出してやることがダメなことだと言っているのではなくて、そういうことができるスキルが本当にある人であればやった方が良いと思います。でも私には無理でした。
それでも、社員のやる気を引き出す能力のない私でもできることはあります。社員も人間ですから、放っておいてもそのうちやる気を出してくれるタイミングがあるんですよね。その時にそのやる気を奪うような余計なことをしないということが、無能な私にでもできることです。
具体的には「社員のやる気を奪う業務改善7つの法則」に書かれているようなことをやらないことですね。「社員のやる気を奪うようなことをやらない」ということを気をつけるだけで、結構社員はやる気を出して頑張ってくれたりするんですよ。
別に私は、やる気は必要ないなどと言うつもりはないですし、やる気は重要だと思います。ただ人のやる気を引き出してやることって本当に難しいことだと思っているだけです。
やる気の源泉なんて人それぞれですし、何がきっかけでやる気を出してくれるかなんて、人によって全然違うと思うんですよね。それをうまくコントロールするなんて高等技術は私にはありません。
社員のやる気を引き出すことができないのであれば、せめて社員のやる気を奪わないようにすることを考えると良いと思います。これだけで結構うまくいきます。
人は褒められるとやる気が出るらしい
人にやる気を出させることは難しいですが、それでも誰かから褒められるとやる気が出るっぽいです。まあ私も誰かから褒めてもらうと嬉しいですし、喜んでやる気を出しちゃいますね。人間にはそれくらい単純なところもあるようです。
だったら褒めてやればいいじゃんと思うかもしれませんが、その通りです。良いところがあったらちゃんと褒めてあげた方が良いです。
でもですね、私は照れ屋なので素直に人の良いところを褒めることができないんですよね。褒めたくないとかではなくて、それを言葉に出して本人に伝えるということが恥ずかしくて苦手なんです。本当に困った経営者ですよね。
そんな恥ずかしがり屋の私でも気軽にできることとして実践していることがあります。それは、ある社員が他の社員のことを褒めたり感謝していたりするのを聞くことがあったら、聞いたことを私が代わりに本人に伝えてやるということです。
自分の気持ちを素直に伝えることはできなくても、人が言ってたことをそのまま伝えてやることは気軽にできます。「◯◯さんが感謝してたよ」とか「◯◯さんが助かったって言ってたよ」ということをこっそり本人に伝えてあげます。Slackで。w
私は自分の気持ちを言うのは恥ずかしいので、人の感謝や褒め言葉を伝える伝道師をやっています。
これ別に自分が上司でなくとも、同僚に対しても、何なら上司に対してでも使える方法だと思うのでお勧めですよ。私のように素直にありがとうございますと中々言えない人でも、◯◯さんがありがとうと言ってましたとは言うことができます。
「人のやる気を奪うようなことはやらない」+「褒める」
これだけでも組織の空気はかなり変わるのではないでしょうか。