ブラック企業が社会で認知されて社会問題となるようになり、今までブラック企業で泣き寝入りしていた人達が、自分もホワイト企業に転職したいと考えるケースが増えています。私のところにも「どうすればホワイト企業に転職できますか」といった質問が多く寄せられるようになりました。
多分長時間残業が当たり前のブラック企業でしか働いたことのない人にとっては、ホワイト企業に転職すれば全てがバラ色にうまくいくと考えてしまうことが多いと思います。しかし現実は必ずしもそうではありません。
アクシアでも過去に長時間残業に嫌気がさして、残業ゼロで効率よく仕事をするアクシアの方針に共感して転職してきてくれた人が、残業ゼロの働き方に馴染むことができずに「残業させてほしい」と言い出し、最終的には「残業ゼロなんておかしい」と会社を批判して辞めていった人もいました。
ホワイト企業に就職したからといって万事うまくいくとは限らない
ブラック企業から残業ゼロの会社に転職してきた人はどうなるのか
そうしたうまくいかなかった経験も踏まえて今は採用のやり方も工夫しておりますが、そのような我々の経験からブラック企業からホワイト企業に転職するために必要なことについてまとめてみました。
一番重要なことは考え方を改めて新しい環境に適応すること
ブラック企業からホワイト企業に転職してその後うまくいくために最も重要なことは、それまでの考え方を一度全て捨ててリセットすることです。今までの考え方を改めて新しい環境に適応する能力があるかどうかです。
ホワイト企業とブラック企業とでは、その環境も仕事の進め方も考え方も全てが全く異なりますので、今までの常識にとらわれているようでは絶対にうまくいくことはありません。今まで培ってきた人間の習慣というものは簡単に変えられるものではありません。習慣の力を舐めてはいけません。
ホワイト企業とブラック企業とでは、それぞれの善悪は置いといたとしても、組織の文化が全く異なるわけです。全く異なる文化の組織に入ろうというわけですから、今までの常識はいったん全て捨てて、新しい組織の文化を受け入れなければその組織でうまくやっていくことなどできません。
エンジニアは特に自分のやり方に強いこだわりを持っている人も多いですから、今まで自分がやってきたやり方を捨てられずに新しい組織の働き方に馴染めない人も結構多いように思います。
残業やり放題のブラック企業ではまかり通っていたような無駄の多いやり方は、ホワイト企業では全く通用しません。自分のこだわりの強い仕事の進め方であっても、残業ゼロで仕事を進めるためには今までのやり方を改めなければならないことはたくさんあって当然のことです。
ブラック企業で働いてきた人は残業中毒だと自覚してください
ブラック企業で長時間残業が当たり前の働き方をしてきた人達は、自分が残業中毒になっているものとまずは自覚してください。これは残業の好き嫌いに関わらず同じです。一度残業にじゃぶじゃぶ染まってしまった人は既に残業中毒になってしまっています。
残業は麻薬と同じです。一度染まると自分の意志とは関係なくやみつきになるものです。みんな何となく無駄に長時間労働することは良くないことだとは理解している。理解しているけどやめられない。
わかっちゃいるけどやめられない
これが残業です。やめられない止まらない。わかっちゃいるけどやめられない。こういう中毒性のあるものを決して舐めてはいけない。
残業という中毒から抜け出すためには強い覚悟と忍耐が必要です。時には管理者の人から残業中毒から抜け出せるように適切なサポートを必要とするでしょう。結局そこから抜け出せずに再犯する人もたくさんいます。というか放っとくとほとんどの人が再犯となるでしょう。
残業はある意味快楽なんです。長く働くことで何となく仕事してる気になって気持ちよくなってしまうこともあります。でもやりすぎると健康を損ねて下手すれば死にます。残業ゼロで成果を出すのは大変ですが、残業に逃げて成果を出すことは楽なんです。
ホワイト企業で働こうと志す人は、こういう残業のようなものには二度と手を出さないという、断固たる決意が必要です。
成果の出し方に対する考え方を変える
ブラック企業では残業することが正義です。長時間残業することそのものが成果だと評価される場合も多々あります。ブラック企業で働きたい人はこの点をよく踏まえて、たとえ仕事が終わっていても早く帰ってはいけません。早く帰ると「やる気がない」と見なされて評価が下がることもあります。
ブラック企業では成果を出すためには残業をいくらでもやっても良い風土があります。スケジュールが遅延していれば残業でカバー、急な割り込み作業が発生すれば残業でカバー、顧客から無茶な要求をされれば残業でカバー。全て残業でカバーすれば許されます。
ホワイト企業で働きたいのであれば、ブラック企業とは全く逆の考え方をしなければなりません。
ブラック企業では長時間残業するだけでそれを成果だと見なされて評価されることもありますが、ホワイト企業では長時間働くことは成果だと見なされません。当然評価もされません。
それどころかホワイト企業で働く人には好き勝手に残業する「権利」が無かったりします。ブラック企業では残業することは従業員の「権利」となっていますが、ホワイト企業の従業員にはそんな権利はありません。無駄な残業は一切許されません。
ホワイト企業の従業員には勝手に残業する権利はありませんが、定刻までに成果を出す義務があります。ブラック企業では好きなだけ時間かけて成果を出せば良かったのに、ホワイト企業では決まった時刻までに求められる成果を出すことが必要です。このプレッシャーは半端ではありません。
ホワイト企業は決して「まったり働いて定時で帰る会社」ではありません。ホワイト企業は「ハードに働いて定時で帰る会社」です。定時までに成果を出さなければなりません。定時までに成果を出せなければ評価されない残酷な環境です。
ホワイト企業とブラック企業とでは、成果に対する考え方がまるで違いますので、成果に対する考え方も変える必要があります。
顧客の無茶な要求に対する考え方を変える
ブラック企業では顧客のどんな無茶な要求に対しても、どんなことをしてもその期待に応えることが美徳とされます。それが正義です。どんなに理不尽な要求であったとしても顧客の要求を断るなんて選択肢はブラック企業にはありません。
金曜日の夕方にどう考えても1~2日かかる作業を「これ、月曜の朝までにお願いね」と顧客から何の慈悲もない悪魔のような発言をされたとしても、ブラック企業の従業員は全力でこれに応える義務があります。徹夜してでも休日出勤してでも顧客の要求には応えなければなりません。それが義務です。
それに対してホワイト企業では、顧客の無茶な要求はしっかり断ることが求められます。それが義務です。ブラック企業では顧客の理不尽な要求にも全力で応えることが義務でしたが、ホワイト企業では全力でそれを断ることがあなたの義務となります。
ホワイト企業では顧客の無茶な要求を決して受け入れてはいけません。そんなことをしたら自分達の会社がたちまちブラック菌に汚染されてしまうからです。ブラック菌は全力で予防して社内にそういう汚いウィルスを決して紛れ込ませてはいけません。
ブラック企業では顧客の要求を断ることに罪悪感を感じることが従業員の持つべきマインドでしたが、ホワイト企業では顧客の無茶な要求を受け入れてしまうことに対して罪悪感を感じなければなりません。なぜなら顧客の無茶な要求を受け入れるということは、自社内のメンバーでそういう理不尽な要求に対応する必要が出てきてしまい、他のメンバーにも迷惑がかかるからです。
ホワイト企業とブラック企業とでは、顧客の無茶な要求に対する考え方がまるで違いますので、顧客の無茶な要求に対する考え方も変える必要があります。
睡眠・休息に対する考え方を変える
ブラック企業では無駄に睡眠・休息を取ってはいけません。そんなことをする時間があるならできるだけ長く働かなければなりません。ブラック企業では何よりも長い時間働くことが美徳とされ、長い時間働くことで評価されます。
よってブラック企業ではまともに睡眠・休息をとる権利など従業員にはありません。いつも睡眠不足で疲労が取れない状態で働き続ける必要があります。それが従業員の義務です。
それに対してホワイト企業ではしっかりと睡眠・休息を取る必要があります。いつも万全の状態で体調をキープし、定時までの時間で常に最高のパフォーマンスを発揮することが求められます。ブラック企業では長く働くことが美徳でしたが、ホワイト企業では短い時間で高い成果を出すことが美徳です。
よってホワイト企業では長時間残業する権利は従業員にはありませんが、いつも万全の体調を維持して働けるようにしっかりと睡眠・休息を取る必要があります。それが従業員の義務です。
ブラック企業にはまともに睡眠・休息をとる「権利」がありませんでしたが、ホワイト企業ではしっかりと睡眠・休息を取ることは従業員の「義務」です。
まとめ
今までブラック企業で慣れ親しんできた人達がホワイト企業に転職して一番苦労することは「今までの常識が通用しない」ことです。ホワイト企業とブラック企業とでは全く文化が異なるのですからそれは当然のことです。
仮に今までホワイト企業で働いてきた人がブラック企業で勤務することになった場合、今までの常識を全て捨てて新しい文化に慣れて新しい習慣を身に付けなければ働いていけないのと同じように、今までブラック企業で働いてきた人がホワイト企業で働くのであれば、今までの常識は全て捨てて新しい環境に慣れていただく必要があります。
今まで培ってきたものを一度捨てて、新しい環境に適応できるかどうか。これが今までブラックな環境が当たり前だった人がホワイトな環境で働くために必要になることです。