どこの業界にもいると思いますが、理不尽なことを要求してくるふざけた顧客というものは残念ながら存在します。社内で同じことをやったら直ちにパワハラ認定されて訴えられてしまいそうな卑劣な行為で、それ、人としてどうなんですか?というようなことでも下請事業者に対しては平気でやってくるような人間のクズも世の中には存在します。

こういう人って人としてのマナーを知らないというか、礼儀を知らないというか、控えめに言って性格が悪くてとてもかわいそうな痛い人間ですよね。こういう輩が取引先の担当者になってしまって理不尽な目にあっている人達は大勢いると思います。

どんなに理不尽なことを言われたとしても、相手が「顧客」となるとどうしても言いなりになってしまいがちです。たとえ理不尽だとしても要求を拒否して取引停止されたりお金を払ってもらえなくなったりという事態は怖いですからね。でも自社をブラックな環境にしないためには本当はこういう理不尽な顧客との取引は見合わせていかないといけないのですが。

理不尽な要求をしてくる顧客は世の中のために壊滅させなければならない

こういう理不尽な要求をしてくる相手はもはや「顧客」ではなく「乞客」と改名していただきたいところですが、法律においてもこんな理不尽な顧客から我々を守ってくれる下請法という法律が存在します。

先日こちらのツイートを投稿した時にこんなのは下請法違反だろうというコメントをたくさんいただきました。もちろん私も下請法については存じておりますし、こちらのツイートの乞客との事件はもう10年ほど前の出来事ではありますが、適切に対処して速やかに全額回収しました。

今まで数多くの企業様と取引させていただいてきて、取引の窓口となる担当者の方が下請法の内容についてご存じなく、平気で下請法違反となるような行為を繰り返してしまわれるケースが結構ありました。別に下請法の知識などなくとも人としての最低限の常識さえあれば下請法を犯すような愚行を行うこともないわけですが。残念ながらそういった人としての最低限の常識さえ持ち合わせていない人が割りとたくさん存在している世の中であります。

上場企業が取引相手であっても担当者の方が下請法を全くご存じなく、法律に抵触するようなことを平気で繰り返しているケースは普通にあります。昨今は働き方改革の流れで労働基準法に違反するようなことをするとすぐにブラックだと叩かれて企業の評判を落とすことになってしまいますが、下請法違反だって立派に法律違反であり、違反すると公表されてしまうこともありますから企業の評判を貶めてしまうことにもなりかねません。

下請法に抵触するような内容をメールや電話録音等の記録に残ってしまう手段で平気で行ってくる担当者を見ると、その担当者の将来を案じてふつふつと憐れみの感情が湧き上がってこずにはいられませんが、労働基準法のような法律と同じく、下請法に関しても「知らなかった」では済まされませんので、発注者側も受注者側も十分に熟知しておくべき内容かと思います。

下請法とは何なのか?

下請法とは一言で言うと下請事業者の利益を守るための法律です。発注企業と受注企業にはその関係性から様々な不公平が生じてしまう可能性がありますから、それを禁止して下請け企業を保護するためのものです。

簡単に言うと大きな企業と小さな企業が取引する場合に下請法は適用されます。以下、公正取引委員会のウェブサイトから図を引用させてもらいます。

親事業者と下請事業者の資本金の規模によって下請法が適用されるかどうかは異なりますが、簡単に言うと「大きな企業と小さな企業が取引する場合に適用」です。また親事業者となる企業にはいくつかの義務と禁止事項が定義されています。

もう見るからに「え?こんなことしょっちゅうやられてるよ!」という内容が並んでいるかもしれません。この中からいくつかIT業界でよくありがちな内容をピックアップして見てみます。

書面の交付義務

発注すると言っておきながらいつまでも契約書を出してくれない会社ってたまにありますよね。ひどい場合だと契約書はいつまでたっても印鑑押したものを出してくれないのに、作業だけは先行して着手しろと言ってきたりします。挙句の果てには何かトラブルになったりすると、「契約書を交わしていないから契約は成立していない」とヤバイことを言ってきたりします。

契約は口約束でも成立するということは割りとよく聞く話ですが、下請法が適用される場合には親事業者は速やかに書面の交付義務があります。発注の約束をしていないのにいつまでも契約書を出さずに人質を取ったような状態にしておくことは親事業者にとってはリスク以外の何ものでもありません。

受領拒否の禁止

上記で紹介したTwitterの内容もそうですが、後づけで出してきた機能追加や仕様変更の要望を無償で対応しなければ納品とは認めないとヤバイことを言ってくる顧客がたまにいます。納品していないから金は払わないという卑怯なやり方です。これまで時間と労力をかけてきた下請け企業には不利益以外の何ものでもありません。

卑劣な手段を使って受領拒否をすることは下請法に抵触しますし、こういう卑怯なことはやめておいた方が懸命です。

支払い遅延の禁止

普通に払うべき代金を払ってこない行為はもう論外なのですが、支払い遅延の意図がなくても下請法に抵触してしまうようなやり取りは割りと多く存在するかもしれません。というのも、下請法では物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,役務が提供された日)から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払うことが親事業者に義務付けられているからです。

支払サイト90日とかはもうその時点で論外ですが、契約書で支払サイトを「月末締め翌々月末払い」としていることは結構多いと思われますが、この場合下請法の60日以内に抵触する可能性があります。納品日が月末であれば「月末締め翌々月末払い」の場合にほぼ60日(これでも31日の月があるとオーバーすることがある)となりますが、月初に納品した場合に「月末締め翌々月末払い」にすると余裕で60日をオーバーするからです。

下請法を違反しないように安全に取り引きしたいのであれば、「月末締め翌月末払い」にしておく方が懸命ではないでしょうか。

不当な経済上の利益の提供要請の禁止

これはもうシステム開発の世界ではしょっちゅう発生してしまっているように思います。あれもやって。これもやって。もちろん無償で!ってやつですね。契約にない内容を不当に要求すると下請法違反となってしまいます。安易な気持ちで下請事業者に無償対応を要求して公正取引委員会にたれこまれてしまったらどうするつもりなのでしょうか。

下請事業者に無償対応を要求する行為は、会社が従業員にサービス残業を要求する行為と全く同じですからね。力関係を悪用したどれだけ卑劣な行為であるかを理解した方が良いでしょう。というよりも、サービスにお金を払うなんて当たり前のことです!

不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止

これもシステム開発ではよくありますね。納品したら仕様書とは全く違う内容で変更要求をしてくるやつ。もちろん無償で。

当初定めた仕様書の内容とは違う方針に顧客が変更したり、実際に使ってみたらやっぱりこっちの仕様の方が良かったみたいな感じで、その変更対応を下請事業者側に一方的に負担させて無償対応させようとすることは明らかに下請法違反です。

仕様変更にお金がかかることは当たり前ですから、それに対して無償対応させようとする暴挙に出ることはやめてくださいね。

公正取引委員会は結構しっかり仕事をされている

なんかちょっと上から目線で失礼かもしれませんが、公正取引委員会って結構しっかり仕事されてるなぁという印象です。我々のような下請事業者には定期的に調査のための書類が送られてきて、親事業者が下請法違反をしていないかしっかり調査されています。しかも同封されている下請法の事例集のようなものが非常にわかりやすくなっており、誰が見ても理解できるような秀逸な内容になっています。

そして私が以前驚いたのが、同封されている書類の中にアクシアが取引している顧客で下請法の親事業者にあたる会社のリストが記載されたものが入っていたことです。どの会社とどの会社が取り引きをしているのかを調査しているようで、具体的に親事業者の社名が入った書類が送られてきて「この事業者は下請法に違反していたことはないか」という調査をされているようでした。

これを見て私は、公正取引委員会は形式的な書面調査だけではなくて、かなりしっかりと下請法違反がないか調査をされているという印象を持ちました。親事業者の担当者の方は軽く見ているとそのうち痛い目にあうと思いますよ。

 

下請法は発注側も受注側も知らなかったでは済まされない重要な法律です。知らないで違法行為を繰り返すことは本当にヤバイと思います。企業は他社取り引きで窓口担当者となる従業員には下請法の研修を徹底した方が良いかもしれません。