働き方改革に関するニュースを毎日目にするようになりました。日本人は働きすぎだとか言われると「だまれボケ」などと昔は私も言っていたものですが、そのような考え方では徐々に通用しにくい社会となってきています。企業は人口減少とそれに伴う労働人口減少を前提とした戦略を考えねばならなくなってきており、多くの人に働きやすい環境を整備しなければ採用力が低下してしまい、人手不足による倒産ということにもなりかねません。
アクシアでは2012年から残業ゼロを継続しておりますが、有給消化率は現在のところ70%程度となっており、これを今期は100%にしようと頑張っているところです。残業削減も有給消化率向上も業務効率化と密接に関係しており、基本的にはやることは同じです。短い時間でも必要な仕事を進められるように環境整備するだけです。
残業削減にも通じることですが、自由に休めるようにするために私が必要だと思うことをまとめてみました。
スウェーデンでは6週間夏休みをとっても倒産しない
スウェーデンの状況について書かれたこんな記事を見かけました。
スウェーデンの会社員が6週間の夏休みを取っても企業が倒産しない理由
海外で有給消化率が100%であることや長期休暇を取るのが当たり前だという話を紹介して、日本では有給消化率が低い、長期休暇も取れなくて日本はクソだと批判する人はたまに見かけます。しかしこういう批判をする人の多くは海外の都合の良い一つの側面だけを切り取って安全地帯から日本を叩いているに過ぎないことがほとんどです。
こちらの記事が秀逸だなと思った理由は、年間を通した休日数においては日本とスウェーデンで差があるわけではないという事実についてもきちんと触れられている点です。実は日本は世界的に見ても祝日数の多い国であり、有給消化率が50%程度であっても年間休日数は世界的に見ても決して少なくはないのが本当のところです。その辺のことに関しては以前にも書きました。↓
有休取得率100%なら休日数で日本は世界トップクラスになれる
日本は休日の少ない国なのではなく、長期休暇を取りにくい国であると言えるでしょう。(長期休暇が取れないわけではありません)
長期休暇についても必ずしも日本人に合っているとも限りません。以前うちの会社の従業員に聞いてみた時には有給はバラして取りたい人ばかりでした。
うちの従業員に有給取得時に「まとめて取りたいか」「ばらして取りたいか」を聞いてみたところ、なんと全会一致で「ばらして取りたい派」でした。必ずしも海外のようにまとまって取ることが絶対的な価値観ではないということです。
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) August 4, 2017
しかし人によって長期休暇を望む人ももちろんいるでしょうから、選択しとして長期休暇を選択することもできた方が良いですよね。上記のスウェーデンについて紹介された記事によると、長期休暇を取得するために次のようなことをやっておくことが必要だということです。
- 全員で一斉に休みに入らない
- メールの自動返信を設定しておく
- 引き継ぎをしておく
日本では夏季休暇を割りと一斉に取ることは多いと思いますが、どれも日本でも普通にできそうな内容ばかりですね。ではなぜ日本では長期休暇を取ることが難しいのでしょうか。
長期休暇を取ることが難しいのは顧客が怒るから
これは残業の問題と全く同じです。定時後の対応を強要してくるような顧客は定時で帰ろうとすると怒ってしまいます。そういう顧客とのお付き合いを続けていると、長期間休みますとでも言おうものなら怒り心頭になってしまうことは容易に想像できます。
どこまでサービス品質を高めていくのかというバランスは難しいですね。一方的に自分達の労働環境だけを主張するのもちょっと違うと思いますし、だからといって顧客の要望にどこまでも応えて長時間残業に陥ってしまうのもおかしな話です。
営業時間外も含めて24時間365日のサポート体制を提供することができれば顧客にとっては最高ですね。でもサービスの品質を高めれば高めるほど、サービス提供者側は無理をしなければなりません。無理のない範囲であれば問題ありませんが、従業員の健康や生活を脅かす恐れのあるレベルでサービスレベルを上げていくことに関しては、本当にそれで良いのか考えねばなりません。
スウェーデンの事例では、夏休みの期間である6月~8月はサービスのスピードがガクッと落ちると書かれています。それによって世の中が不便になることを受け入れる暗黙の取引が成立しているとあります。普段通りのスピードを期待してはならず、人が休むことで怒るようなこともないということです。
これは文化の違いだと思いますが、これまでの日本ではどこまでもサービス品質の向上を求めていく文化だったと思います。飲食店でもたかが1000円前後のお金を払っただけでまるで人間として偉くなったかのように横暴に振る舞うみっともない人はたまにいますよね。
これからは日本でも「働き方改革」を推し進めていって社会のあり方を変えようとしているわけですから、顧客側の立場として過剰な要求をしないように考え方を改めていくことは重要だと思います。これまでの慣習を変えていくことは簡単ではないと思いますが、電通事件によって長時間労働に対する社会の空気が一変した事例もあるように、少しずつでも社会全体で「顧客が過剰な要求をしないようにする」空気を作っていく必要があると思います。
自社でできることは過剰な要求をしてくる顧客を断ること
これはもう残業の問題と全く同じです。理不尽な要求をしてくる顧客の対応をしているといつまでたっても自社の労働環境を改善することは不可能です。理不尽な要求をしてくる顧客の要求を断らないと残業でカバーするしかなくなってしまいますが、同じように理不尽な要求は断らないと長期休暇など夢のまた夢になってしまいます。
社会全体で「理不尽な要求をする顧客は許さない」という空気ができてくれば一番良いのですが、まだまだ現状だと理不尽な顧客の要求も仕方なく受けてしまうということが珍しくありませんから、まずは自分達だけでも自社の労働環境を改善できるように自己防衛するしかありません。
顧客の要望を断るということは、その顧客を失う可能性があるのでとても怖いことです。それなりの覚悟が必要です。それでもそういう理不尽な顧客を失うことのデメリットは短期的なものでしかないので、長期的に見れば話の通じる優良な顧客だけが自社の取引先となることのメリットの方がはるかに大きいです。
ブラックな体質は感染しますので、ブラックな要求をしてくる顧客と付き合ってはいけません。ブラックな会社はブラックな会社と取引し、ホワイトな会社はホワイトな会社と取引するようになっていきます。
残業が少なくて済む会社、休みを取りやすい会社にしていくためには理不尽な要求は全て断ることです。
ブラック企業なんてとんでもない。さっさと社会から駆逐していくべき。と主張している人が、自分が顧客の立場になったら過度な要求をしているのを見て複雑な心境になってしまった今日この頃。みんな自分が理不尽な扱いをされることには敏感だけど、立場が変わると相手に対してブラックな対応をしてしまっていることに気づいてないことも多いようですね。
飲食店の店員さんがフォーク1本出し忘れたことくらい大目に見てあげましょうよ。w