雇用の流動化をしていくために従業員を解雇しやすくする仕組みは、社会全体の生産性を向上させていくためには考えていかなければならないテーマだと思っています。ただし「解雇」という言葉を聞いただけでアレルギー反応を示す人達が大勢おりますので、これについて堂々と書くと激しく炎上しそうな気がして私は書きたくなかったのですが、ぜひとも書いてほしいというご意見を多数いただきまして、仕方がないので書いてみるとことにしました。本当は書きたくないのですが。w
ダメな会社には厳しいのにダメな労働者には優しい社会
世の中全体の空気として、ダメな会社(いわゆるブラック企業)に対しては非常に厳しい批判が展開されます。世の中を良くしていくためにはブラック企業を是正していかねばならないことは明白ですから、これは当然のことですし世の中にとってプラスになる批判となっていると思います。
それに対してダメな労働者に対する批判はどこかタブー視されている雰囲気すらあり、Twitterなどで労働者のことを悪くいうと無条件で批判してくるような人達もいます。以前こんなブログ記事を書きました。↓
多くの人が「業界批判」「顧客批判」「経営者批判」については喜んで食いついてくるのに、「労働者批判」に対しては怒り心頭という人がなぜか多い。みんな人のことは批判しても自分達のことは悪く言われたくはないというのが人間の心情ですからね。
でも「ヤバイ業界」「ヤバイ顧客」「ヤバイ経営者」は存在するけど、「ヤバイ労働者」だけこの世に存在しないなんてことはありえません。世の中を良くしていくためには「ヤバイ労働者」が存在する事実にも目を背けずに、この人達ともどうやって関係性を構築していくべきなのかを考えていくべきだと思うのです。
別にちょっと仕事ができないとか、能力が低いとか、そういう労働者のことをヤバイ労働者と分類するわけではありません。仕事ができるできない、能力が高い低いなんて個性のようなものです。企業だって売上が高い企業があれば低い企業だってありますが、売上規模が小さいだけでヤバイ企業だとは言わないでしょう。それと同じです。
大事なことなのでもう一度言います。別にちょっと仕事ができないとか、能力が低いとか、そういう労働者のことをヤバイ労働者と分類するわけではありません。ここ、絶対クソリプしてくる人いるのでお願いしますね。w
しかしながら企業にもルールを守ろうとせずに労働者から搾取してばかりのブラック企業が存在するように、労働者の中にも会社や周りの同僚にたかるだけで自分のやるべきことをやろうともせずに権利だけ主張するような人もいるでしょう。
こういう「ヤバイ労働者」の存在がいることにも目を背けずに、オープンに議論していくことは必要なことだと考えます。これについて議論しようとするだけでブラックだと批判してくるなんて、言論の自由がない国みたいで恐ろしい・・・。
企業は解雇できなければ採用に慎重にならざるを得ない
企業としてはどうしようもないダメな社員がいても解雇できないとなると、雇用に対して慎重にならざるを得ません。雇用に失敗したとしてもずっとその従業員を抱えていないといけない、採用の失敗は許されないというのであれば、失敗しないように慎重に慎重を重ねて採用をするしかないからです。
例えば今伸びている事業があって、新しく人を採用すればもっと事業を伸ばして売上を拡大することができる、それによって従業員の給与もアップすることができる状況だとします。そのような状況だったとしても企業としては採用に慎重にならざるを得ません。なぜなら、今は良くても数年後に人余りの状態になったとしても解雇できないからです。解雇できないのであれば採用もできません。結果雇用の機会が減少し、雇用の流動化が阻害されます。
ではこのようなリスクを抱え込めずに採用を見合わせる企業がどのような手段を取るのかというと、例えばこんな手段があるのではないでしょうか。
- 下請け企業に外注する
- 正社員ではなく非正規社員で採用する
- 今いる社員に残業でカバーしてもらう
- 人員が不足する拠点で現地採用せずに転勤させる
IT業界では偽装請負が慢性化しており私はいつもこのことを批判していますが、一方でこのようなことが慢性化するには理由もあるわけです。だからといって違法行為が許されるようなことは断じてありませんが、雇用の流動化が実現されればこの業界に蔓延している偽装請負の問題もある程度解消するのではないかと思います。
非正規社員が増加し、同一労働同一賃金ではないことが社会問題化していますが、非正規社員と呼ばれる人達が増えていくことにも理由があるわけです。これからは多様な働き方が求められる時代ですから、フルタイム以外の働き方が増えていくことは望ましいことではありますが、正社員以外の人の待遇が不当に低いことは別問題で解消されなければならない問題です。
長時間労働の問題についても企業にとっては頭の痛い問題です。口でいうほど簡単に解決できる問題でもありません。新しく雇用して人を増やさず、わざわざ割増賃金を払ってまで今いる従業員に残業させているのにも理由があるわけです。
転勤の問題についても同じ問題が根底にあると思います。地方で人員が必要になった際に現地採用してしまうと、その拠点で人員が不要になってしまっても解雇できずに抱えておかねばならなくなってしまいます。転勤させる方がある意味合理的な場合もあるのです。
雇用の流動化は労働者にとってもメリット
解雇しやすくなるということは労働者にとってはデメリットのように感じられるかもしれませんが、私は労働者にとってもメリットであると考えています。
解雇できる→積極採用できる→雇用が増える→雇用の流動化
企業が解雇を行いやすくなれば、必ずこのような流れができると思われます。今の世の中ではまだまだ「転職=脱落」という考えが多いのも事実です。大企業に勤めている人であればなおさらでしょう。しかしそれは、今はまだ雇用の流動性が無いからです。雇用が流動化されて転職することが今よりも当たり前のことになれば、転職=脱落などとは思わなくなるはずです。
また雇用が流動化されれば間違いなくブラック企業の淘汰が促進されていくと思います。今ブラック企業に勤めている人がなぜそこから逃げ出さないのかを考えると、辞めたところで他でまともな企業に就職できるかどうか不安を感じているからでしょう。毎日の生活があるわけですから当然のことです。
しかし「雇用の流動化=雇用が増える=転職しやすい」ということですから、雇用が流動化されればブラック企業からは逃げやすくなりますし、そうすればブラック企業からはどんどん人が流出していくことが考えられます。「雇用の流動化=ブラック企業の淘汰促進」は間違いないと思います。
ダメな社員を切りやすくしないと企業の生産性は上がらない
ダメな社員を切れなくとも他にも企業の生産性を上げていく方法はいくらでもあるわけですが、「仕事を真面目にしない」と開き直っているダメな社員を一度抱え込んでしまって解雇できなければ、ずっと癌を抱えたまま企業活動を続けていかねばならないことになります。これはすなわち生産性の低下を意味します。
これはどんなことにも言えることですが、どんな環境であってもぬるま湯だとクズは発生してしまいます。企業でも既得権益でガチガチに守られたぬるま湯の世界ではクズのような企業が生まれてきてそれが自主的に是正されることはありません。クズのままでもぬるま湯だからこのままでもやっていけるという安心感があるからです。危機感がまるでないからです。
労働者についても同じことが言えます。今のように何をやっても解雇されない、どんなにサボってても解雇されない、犯罪でも犯さなければ解雇されることはないというようなぬるま湯環境にあれば、それに甘えた労働者が発生することはある意味自然なことです。
こういう人達でも「あまりサボりすぎると解雇されるかもしれない」という危機感があれば、真面目に仕事をしようという動機づけにもなるでしょう。そうすれば社会全体の生産性も向上していくはずです。
社会全体の生産性を向上させていくためにも、今のぬるま湯環境は是正していかなければならないと思います。
解雇しやすくするとブラック企業に悪用されるのではないか
解雇しやすくするとブラック企業が悪用するのではないかという疑問は当然のことながらありますね。というよりもブラック企業は必ずこれを悪用するでしょう。だからこそブラック企業なんです。間違いないです。
でもそれが長期的に見て社会全体にとって不利益かというと、私はそうは思いません。上でも述べた通り雇用の流動化が実現されればそういうことばかりしているブラック企業はどんどん社会から淘汰されていくからです。
極端な例ですが「会社は無条件で好きな時に従業員を解雇して良い」となったとします。そうなったとしても、私ならよっぽどのことがなければ従業員の解雇はできません。なぜなら、不当な解雇を行えば残された従業員のモチベーションが下がることが明らかだからです。常識的に考えることのできる経営者であればこういうことは理解しているはずです。
だからたとえいつでも解雇できるように法律が変わったとしても、「あいつは解雇されてもしょうがないね」と周りの従業員も思うくらいひどい状況でないと、私なら解雇できないと思います。周りの同僚からも解雇されてもしょうがないと思われるようではよっぽどのことでしょう。
このようにまともな会社であれば安易に解雇するなどということは絶対にしませんので、不当な解雇を繰り返す会社からは残された従業員のモチベーションが下がりますます人材が流出して淘汰されていくと予想しています。こういうブラック企業からは優秀な人材ほどすぐに辞めていくのではないでしょうか。
まとめると、解雇しやすくなればブラック企業はそれを悪用するがそれによってますますブラック企業の淘汰が進むというのが私の考えです。そもそもホワイトな会社は法律なんかなくたってモラルも重視しますから大丈夫です。
雇用が流動化して割を食うのはブラック企業と怠けてばかりの労働者
上記述べてきた内容の通り、私の考えとしては雇用が流動化した場合に割りを食うのはブラック企業と怠けてばかりの労働者です。
この図で言えば割りを食うのはヤバイ経営者とヤバイ労働者ですね。まともな経営者とまともな労働者は心配することないと思います。
労働者が一時的に解雇されるようなことがあったとしても、雇用の流動化が促進された社会ではすぐに転職しやすい社会ということですので、失業のリスクも少なくなるはずです。より良い環境を求めて転職を行うこともやりやすくなりますので、労働者の待遇も改善されていく方向に進むのではないでしょうか。
逆に年功序列で高い給料だけもらってまともに仕事をしていないような管理職とかはヤバイでしょうね。現状だとこういう人達がいることによって若い能力のある人にポストもお金も流れにくくなっていると思いますがそれも改善されると思います。高い給料だけもらってまともに仕事してない管理職は、心を改めてまともに仕事するように改善するか、そうでなければ切られるしかないでしょう。
まとめ
いかがでしたか?(クラウドライター風w)
雇用の流動化や解雇規制の緩和という内容は賛否両論あるテーマだと思います。反対意見もたくさんあると思いますし、反対意見があって然るべきテーマだと思います。就職や仕事の問題は生活に直結する問題ですので安易に考えてはならず、慎重に考えていかねばならない問題ではありますが、他の先進諸国と比較して生産性が低いと批判されている日本全体の生産性を向上させていくためには、目を背けずにきちんと向き合っていくべき問題ではないでしょうか。
ダメな会社(ブラック企業)は淘汰されていくべきだとみんなが考えるのに、ダメな社員が淘汰されていくべきだというふうにはなぜか考えない人が多いことは不思議なことです。
単純にアレルギー反応を示して問答無用で反対するのではなくて、もっと大きな視点で自分達がどうあるべきかを考えていくべきではないでしょうか。今回のブログ記事に対する反対意見、批判意見は大歓迎ですが、どうしようもないクソリプを送ってくるだけのクソリッパーが湧いて出てこないことを切に願います。w