有給に関して先日下記のブログを書きました。
有休取得率100%なら休日数で日本は世界トップクラスになれる
世界トップクラスの休日数の会社にするために、今期は有休取得率100%を目指して鋭意対応中です。有給取得を促進するための自社システムももうすぐ完成予定です。
アクシアではアルバイトも含めて有給取得100%を目指しているのですが、アルバイト等で日によって勤務時間が異なる従業員に対してはどのようなルールで有給を与えるべきか不明な点があったので、労働基準監督署にどうすれば良いか質問してみました。
実は以前にも同じ質問を労基署にしたことがあったのですが、その時はあやふやな回答をされてはっきりとした回答はしていただけませんでした。また社会保険労務士さんにも同じ質問をしたことがあったのですが同じくあやふやな回答でした。
しかし今回は長らくもやもやしていた疑問に対して、労基署の方から明快にご回答いただけたのでその内容をブログに書くことにしました。労基署の方も資料を調べながらお答えいただいていたので、それだけ現時点ではマイナーな情報ということなのかもしれません。
しかし今後は時短勤務の人が増えたり、多様性のある働き方が増えてくることは確実ですので、曜日によって勤務時間が異なる人に対しての有給の与え方に関する情報は広く認知されるべき情報になるかと思います。
曜日によって勤務時間が違う人への有給の与え方は3通りある
月給制の場合だと、有給を取得した場合にはその日休んでも出勤したのと同じように給与が支給されます。この場合休んでも欠勤扱いにはならず「月給から給与が減額されない」ということになります。
これに対してアルバイト等で時給制の場合だと少し考え方が異なります。時給制の人が有給を取得した場合でもその日休んでも出勤したのと同じように給与が支給されるというのは同じです。しかし月給制の場合と異なり、月給が固定で定められてるわけではなく、働いたら働いた分だけ時給で計算して給与が支払われます。
時給制の場合だと、「月給から給与が減額されない」ではなく「有給の分だけ給与が支払われる」となります。この時に、
有給を取得した日にどれくらい働いたと仮定して、いくら支払うのか
という問題が時給制の場合だと出てくるわけですね。
例えば先日アクシアに、月火木金は1日7時間勤務、水だけ4.5時間勤務希望の人が入社しました。この場合水曜日に有給を取得した場合には4.5時間分の給料を支払えば良いのか?あるいは5日の平均で6.5時間分の給料を支払うのか?
そもそもアルバイトには有給を与えていない違法なブラック企業は別として日によって勤務時間が異なるアルバイトを抱えている会社の方であれば悩まれたことがある問題だと思います。
この疑問に対して今回労基署の方が示してくれた対応方法が下記の3つです。
- 本来支払われるべき通常の賃金を支払う
- 平均賃金を計算して支払う
- 標準報酬月額を30で割った金額を支払う
1つずつ詳細を説明していきます。
1.本来支払われるべき通常の賃金を支払う
本来支払われるべき通常の賃金とは、雇用契約書に定められた勤務時間分の賃金ということです。上記で例としてあげたアクシアの従業員の場合だと、月火木金は1日7時間勤務、水だけ4.5時間勤務という勤務の条件が雇用契約書に記載されています。
よって月火木金に有給を取得した場合は7時間に時給をかけた金額を支払い、水曜日に有給を取得した場合は4.5時間に時給をかけた金額を支払うということです。
この場合だと水曜日に有給を取得すると労働者からするとちょっと損した気分になりますね。労基署の人にそれでいいんですか?と聞いたら「そういうもんです」というつれない回答が返ってきました。w
それに飲食店なんかだと定期的に希望するシフトを申請して毎回勤務時間も勤務曜日もバラバラになることはよくありますよね。雇用契約書に一応勤務日や勤務時間を記載するとしても、勤務実態とかけ離れた計算をして有給分の給与を支払うなんてことも発生してしまうかもしれません。
私がブラック企業経営者だとしたら、雇用契約書では1日1時間しか勤務しないような感じで雇用契約を締結し、実際の勤務では1日8時間でシフトを組み、そして有給申請があった場合には「本来支払われるべき通常の賃金」つまり1時間分の時給だけ支払うなんてことをやってしまいそうです。
でも名ばかり管理職なんかと同じで法の隙間を縫って悪用しようとしたところで実態が悪質だとそのうち取り締まられますから、ブラック企業経営者の方は悪用しない方がいいですよ。
少し話がそれてしまいましたが、「本来支払われるべき通常の賃金を支払う」この方法は、曜日によって勤務時間が異なるようなことがほぼ発生しない場合には計算も楽ですしマッチしそうです。
逆に曜日によって勤務時間が全然異なったり、その時によって組むシフトがバラバラの場合には向かない方法のように思います。
2.平均賃金を計算して支払う
この方法は実際の勤務実態に即した形で計算する方法です。具体的には過去3ヶ月分の平均賃金を計算してその金額で有給の給料を支払います。
なぜ3ヶ月なのかというと、「平均賃金とはなんぞや?」ということが労働基準法で定められており、そこに過去3ヶ月分の平均とすると定義されているからだそうです。
これは「1.本来支払われるべき通常の賃金を支払う」と比べると過去3ヶ月分の平均賃金を計算しなければいけないというのは面倒くさいですね。ただし勤務実態に即した形で金額が計算できるという点は大きなメリットとなります。
上記の月火木金は1日7時間勤務、水だけ4.5時間勤務の場合ですと、実際にこの通りに勤務した場合、締め日の関係で多少ずれることはあるかもしれませんがだいたい1日6.5時間働いたと仮定して有給を支給することになります。
これだと月火木金は7時間勤務に対して6.5時間分しか給料が発生しないので損しているように感じるかもしれませんが、水曜日は4.5時間しか勤務しないわけですし、平均ですから損してるわけではありません。逆に水曜日に有給を取っても6.5時間分支給されますから公平感があります。
3.標準報酬月額を30で割った金額を支払う
一般の従業員の方ですとこれが一番意味不明に感じるかもしれません。まず標準報酬月額とは何かですが、社会保険料を計算する時にその人の給与額をランク分けするのですが、簡単に言うとそのランクのことを標準報酬月額と言います。ランクですので実際の給与額とは多少ずれます。
この標準報酬月額を30で割った金額を有給取得日の給与分として支払う方法です。
え?30??
30ということは土日も祝日も含んだ想定で1日分の給与額を計算するということでしょうかね。これは1や2と比べるとかなり支給額が少なくなる可能性が高そうですね。
そして案の定、この方法を採用する場合には事前に労使協定を結ぶ必要があるとのことでした。労働者側に不利益になるような内容の場合ですと大抵の場合は労使協定が必要になってきますので当然といえば当然のことですね。
これは労使協定を結ぶことさえできれば会社側にとっては合法的に有給で支給する給与額を少なくすることができ、経費削減の効果が期待できる方法ではありますが、個人的には従業員を騙してる感が満載でかなりもやもやした感じはしますね。
私が労働者側だったらこんな内容の労使協定は締結しませんね。w
3つの方法のメリット・デメリットをまとめるとこんな感じ
3つの方法それぞれのメリットとデメリットをまとめてみるとこんな感じでしょうか。
メリット | デメリット | |
本来支払われるべき通常の賃金を支払う | 計算が簡単 | 勤務実態と有給の金額がかけ離れる場合がある |
平均賃金を計算して支払う | 勤務実態に即した形で有給の金額を計算できる | 平均賃金の計算をする必要がある |
標準報酬月額を30で割った金額を支払う | 経費削減できる | 労使協定の締結が必要 |
それぞれの会社の状況に応じて適切な方法を選ばれると良いと思います。
アルバイトの有給にまつわる都市伝説
アルバイトの採用面接をしている時や、実際にアルバイトで採用された従業員と話してて思うのですが、アルバイトには有給は支給されないと思い込んでいる人が大勢いらっしゃるように思います。正直なところ私も学生時代アルバイトをしていた時はそう思っていました。
でもアルバイトは有給をしなくて良いなんてことはウソですからね。学生であってもアルバイトであっても有給を取得する権利があります。
ではどれくらい有給が支給されるのかというと、支給タイミングはフルタイムの正社員と同じです。入社後半年で最初の有給が支給され、その後は1年ごとに有給が支給されます。
ただしフルタイムでない場合は勤務日数に応じて支給される有給数は少なくなります。これも全部法律で決まっています。参考までにアクシアの就業規則のキャプチャを貼っておきます。法律で決まっているのでどこの会社も同じです。(ただしこれよりも多く支給することはOK)
大事なことなのでもう一度言いますが、正社員でなくとも有給取得する権利があります。何とかアルバイトから有給申請されることのないようにこの事実をひたすら隠している会社からは恨まれてしまいそうな内容ですが、今後も積極的に情報発信していきたいと思います。
今回は有給のあり方について、労働基準監督署の方から丁寧にご説明いただきました。労基署というと企業にとっては敵というイメージがありますが、何もやましいことがなければ労基署は企業の敵ではなくて味方です。わからないことがあれば丁寧に教えてくれます。
悪いことしてると取り締まられちゃうからビクビクしないといけないけど、やましいことがなければ庶民の味方になってくれる警察みたいなものでしょうか。
何か労務関連のことでわからないことがある経営者の方は、労基署にアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。