残業時間の公表が2020年に義務化されるという記事が今朝出ていました。
残業時間、公表義務付け 厚労省 大企業の月平均 20年メド、企業反発も
長時間労働が問題となっている昨今、こうして対策が取られていくことは大いに結構なことだと思います。詳細はこれから検討されていく段階とは言え、この記事に出ている内容だけ見ると今から骨抜き感が満載です。
残業を抑制して生産性を上げていく方向性は賛同しますが、まだまだ検討が必要と思われます。
残業時間公表義務化の概要
まず具体的にどんな内容であるのかを、上記記事から抜粋したものがこちらです。
- 公表するのは月平均の残業時間
- 従業員数301人以上の大企業が義務化対象
- 従業員数300人以下の企業は努力義務
- 正社員・非正規社員を分けるかは未定
- 虚偽が悪質な場合は20万円のペナルティー
- 2020年スタート
2020年って遅すぎやしないか?とか、これだけ見ても色々突っ込みどころが満載な内容ですね。では一つ一つ見ていきます。
大企業だけではなく全ての企業に義務付けろ
なぜ301人以上の企業限定なのかまったく意味不明!
この手の義務化がある程度の規模の企業に限定されることは結構よくあることなのですが、それはその対応をするためには大規模な設備投資が必要になる場合などで、中小企業にはそのための負担をさせるのは酷であろうということで義務化が免除されるということなら理解ができます。
今回の内容が企業に大きな負担が発生するかどうかというと、ほとんど負担なんかないと言っていいです。
いや、厳密に言うと残業時間を管理するのは労務管理上のコストがそれなりにかかるのは事実です。しかしですね、
労働時間の管理って既に全ての企業に義務付けられてますよね?
大企業だけではないですよ。全ての企業に既に労働時間の管理って義務付けられてますよね。管理してないと労基署に怒られますよね。
だから労務管理上の新たな管理が大幅に増えるなんて嘘です。新たに増える手間なんて平均値計算するくらいですよね?Excelでも電卓でも、なんなら紙に書いてでもすぐにできますよね?できませんか?どうしてもできないと言うなら自動で計算できるようにうちの会社でシステム作りますよ?w
それともし300人以下の会社が公表免除(努力義務=免除)されたらどうなるか。
もし私がブラック企業経営者だったら会社を分割させますね。残業時間の長い部署を300人以下に分割して別会社にしてしまう。分割された従業員300人以下の会社は公表が免除されるので公表しない。本社には比較的残業時間が短い部門だけ残し、そして堂々と公表する。そしてうちの会社はホワイト企業ですとアピールする。
こんなことがまかり通ってしまうわけです。もしどうしても300人以下の会社は努力義務とするのであれば、親会社含めて301人以上となる場合は免除対象外とすることが最低ラインでしょうね。
残業時間の「平均」では全くの無意味
どうやって平均を取るかにもよりますが、このあたり正しい情報が見える化されるように工夫しないと全く意味のないものになってしまうどころか、実態をごまかすことができてしまい害悪にすらなりかねません。収入や貯蓄の平均値があまり意味をなさないのと似てるかもしれませんね。
例えば単純に会社全体で発生した残業時間をその会社の従業員の頭数で割るなんてことをしたら、おそらく無駄に非正規の人が増えるのではないかと予想します。短時間だけしか労働しない非正規社員を無駄に増やして頭数を増やせば、先程の計算だと残業平均時間少なくすることができてしまいますからね。
それどころか下手すると労働実態の伴わない架空の従業員が増えてしまうことだってありえます。従業員の家族とか、そういう人達にお願いして月に1時間だけ働いてもらってることにするとかそういうことをやれば平均値は下げられますよね。
そういう実態をごまかすようなことをさせないような工夫はしてもらわないといけないと思います。例えば今あげた不正例を防ぐのであれば、残業時間の平均だけではなくて労働時間の平均も合わせて公表させるなどすれば、不正をしてると労働時間の平均が異常に低くなったりして検出可能になると思います。
正社員・非正規社員はわけない方が良いと思う
まず私自身が正社員・非正規社員という区別が無意味だと思ってる人間だということもありますが、これはわけない方が良いのではないかと思います。こうやって区別するから正社員と非正規社員の格差みたいなものが生まれてしまうわけであって・・・。
最悪なのは正社員と非正規社員を分けた上で、正社員だけ公表義務化となった場合。そうなったら絶対非正規社員が増えますよ。残業時間多い人はみんな非正規社員にさせられちゃいます。そうして始めから残業の少ない人や部署の人だけ正社員として残り、その人達の平均残業時間が公表されて「うちの会社はホワイト企業です!」とアピールする会社が出てくるところまで想像できてしまいます。
ちなみに正社員と非正規社員って特に法律で定めがあるわけではないらしいんですよね。この違いがわからなくて以前わざわざハローワークまで聞きに行ったことがあるんですよ。そしたらハローワークの人が特に決まってるわけではないと言ってました。決めたければ就業規則で決めてくださいと言われました。w
ペナルティー20万円はギャグのレベル
従業員数301人以上の企業に公表義務化するのにペナルティー20万円って冗談も程々にしろと言いたくなります。個人に20万円のペナルティーだったら痛手ですけど、301人以上の企業にとって20万円なんて誤差のレベルですよ。こんなのは罰則がないのに等しい。
罰金20万円だけしかペナルティーが本当にない場合は、開き直って堂々と公表義務化を無視するブラック企業も出てくると思いますよ。無視したところで晒されもしないし罰則20万だけだったら痛くも痒くもない。無視するブラック企業が出てきて当然です。
もっとペナルティーを重たくするか、4月から送検された企業が厚生労働省のホームページで晒されるようになってますが、同じように厚生労働省のホームページで晒すというのが企業にとっては痛手となってペナルティーの意味が出てくるのではないでしょうか?
これからは残業が少ない会社が生き残っていくことは間違いない
2020年に実施されるという残業時間の公表義務化ですが、本当に意味のある制度になるのかどうかという心配はありますが、私自身は実はそれほど心配はしていません。
この制度の有無に関わらず、これからの時代は残業が少ない会社が生き残っていくことは間違いないと考えているからです。
その理由については先日詳しくブログに書きましたので良かったらこちらも読んでください。時代が変わり企業がこれまで当たり前としていた経営戦略を方向転換せざるを得ないような大きな時代の転換点だと思ってるんですけど皆さんまだそんなに気にしてないみたいですね。w