「やってみたい」と「やりたい」は違う


最近エンジニアという職業の人気が上昇しているようで、全くの他職種からエンジニアへの転職を目指す人が増えているようです。このこと自体は歓迎するし、業界としても大変喜ばしいことです。

しかしSNSなどで駆け出しエンジニアの発信している情報を見ていると、必ずしもバラ色の人生ばかりとは限らないようで、悪質なプログラミングスクールや情報商材に引っかかってしまった人や、変な会社に就職してしまい「こんなはずではなかった」と後悔している人も一定数存在します。

始めてみた頃にはワクワクする気持ちや情熱であふれていたのに、時間が経つとこんなはずではなかったとなってしまうことは生活していればあらゆる場面で遭遇しますが、このことについて思うことがありましたのでブログ記事に書くことにしました。

「やってみたい」と「やりたい」の違いとは?

先日書籍出版のオファーをいただきました。2,3年前に初めて書籍出版の機会をいただいた時には「やってみたい」という気持ちが強かったのですが、今回は書籍出版してみたいという気持ちは特にありません。これから出版社の方と打ち合わせをさせていただき、自分が本当に「やりたい」と思える企画かどうかを判断して決めようと考えています。

初めて書籍出版した時には、純粋に自分の書いた本が世の中に出されることへの興味や、出版された書籍が全国の書店やAmazonで販売されることへのミーハーな気持ちも正直強かったと思います。世の中の役に立つ意義のある書籍になるという気持ちもなかったわけではありませんが、興味や好奇心という気持ちの方が強かったと思います。

書籍出版という経験を初めてした時と今とでは何が根本的に違うのか?その違いについて考えてみました。

未経験の時にはキラキラした部分しか見えていなかった

初めて書籍出版した時には、出版することで仕事の宣伝につながる、採用にプラスになる、自分の本が書店に並ぶなど、自分や会社にとってプラスとなるキラキラした部分しか見えていませんでした。しかし書籍出版という経験を既にした今は違います。キラキラした部分だけではなく、影の部分も今は見えます。

正直なところ、本を書くのは大変な重労働です。執筆するために膨大な時間を取られます。私は文章を書くことが苦になるわけではありませんが、好きで好きでしょうがないというわけでもありません。あまり意義の感じられない執筆ということになると、「面倒くさい」という気持ちの方が正直強くなってしまいます。

これはおそらく駆け出しエンジニアの人たちも同じ問題を抱えているのだと思います(もちろんエンジニア以外の職種の人も同じですが)。

何も知らずに初めてエンジニアという世界を外から見た時には「楽しそう!」「わくわくする!」というキラキラした部分ばかりが目に入ってきて、多少の苦労であれば吹き飛ばしてしまえるくらいにモチベーション高く業界に飛び込んできた人でも、業界の中に飛び込んで実際にその世界を目の当たりにすると、色々な負の側面も体感として理解できるようになります。そうすると中には「こんなはずではなかった」という人も出てきてしまうのです。

「やってみたい」と「やりたい」は似ている

私が最初に本を出した時には「やってみたい」という気持ちだけでした。でも今回いただいたオファーは自分が本当に「やりたい」と思えるかどうかでお引き受けするかどうか判断しようとしています。

最初の時と今回とで違っている点は、キラキラした部分だけではなく一度経験したことによって大変なことも体感として理解しているということです。

・「やってみたい」とは

興味は持っているが、その内容を必ずしも深く理解しているとは限らない。楽しい部分しか見えていない。

・「やりたい」とは

楽しい部分だけではなく大変な部分も理解している。多少の苦労があっても立ち向かっていきたいと思える。

「やってみたい」と「やりたい」は表面上はとても良く似ています。どちらも興味を持っている状態ですし、ワクワクする気持ちもあります。しかし似て非なるものです。大変な部分も正しく理解した上でそれでも「やりたい」と思えるかどうか。長く続けていこうと思ったらこれが非常に重要なのです。

仕事にするなら「やりたい」が大事

「やってみたい」という気持ちが悪いわけではありません。実際に試してみないとその「やってみたい」という気持ちが「やりたい」になるかどうか判別することが難しいこともあるでしょう。ときにはあれこれ考えすぎずに、とりあえずやってみるということも必要です。

ただ職業選択ということになると、自分の人生に大きく影響するイベントです。実際にやってみて失敗することは仕方ないにしても、本当に自分が「やりたい」仕事なのかどうかを、しっかりと検討してみるべきです。それが自分の「やりたい」仕事であるかどうかを考えるとは、キラキラした部分だけではなく影の部分も含めて考えるということです。苦労する部分も理解してそれでも「やりたい」と思えるかどうかです。

アフィカスの無責任な情報に踊らされたり、悪質なプログラミングスクールの餌食になったり、駆け出しエンジニアをカモにしようとする悪質な輩が最近ますます増えてきました。彼らはエンジニア志望の人たちの「やってみたい」という気持ちにつけこんできます。

「やってみたい」という安易な気持ちだけで深く考えずにいると、高確率で悪い人たちのカモにされてしまうでしょう。運良くエンジニアに転職できたとしても、それまでキラキラした部分しか見ようとしてこなかった人たちが実際に苦労する場面も経験すると、やはり長続きせずに結局業界を去ることになってしまいます。

仕事は趣味とは違うので「やってみたい」だけだといつか辛くなってきてしまうこともあるでしょう。その仕事の大変な部分を理解してそれでもなおその仕事を「やりたい」と思えるかどうか。そのためには当然その仕事をやる意義も理解して共感できるようなものでないと難しいですね。

エンジニアをいう仕事を目指す人が増えることは嬉しいことですが、なんとなくエンジニアやってみたいみたいな人が最近増えすぎていることも色々な問題を引き起こしている原因になっているのではないかと、最近もやもやした気持ちを感じていました。

エンジニアを目指す人は(エンジニア以外でも)その仕事が本当に自分の「やりたい」仕事なのかどうかを、ぜひじっくり考えていただければと思います。