今勤めている会社を退職しようとしても、色々な理由をつけられて会社が退職を認めようとしないという話はよく聞きます。会社から何か言われたことが原因で本気で悩んでしまう人もいます。先日も私の質問箱にこんな質問が寄せられました。
この手の話は本当に多いですね。こういう質問や相談が届くことは本当にしょっちゅうあります。
企業がなぜあの手この手を使ってでも社員を辞めさせたくないかというと、もちろん辞められたら困るからです。よっぽどの問題社員でもない限りは、社員に辞められると会社にとっては多少なりとも打撃はあります。
しかしはっきり言って通常は、辞めても何の問題もありません。多くのケースは社員に辞められたくない企業が、社員を辞めさせないために脅しを入れてきていると考えてよいでしょう。
業種や会社ごとに社員が辞めてしまう場合のダメージや事情は様々ですが、SESの場合は業界の特性からくる、辞められたら困る理由もあります。
私自身、色んな立場からSESの世界を見てきていますので、その裏側に至るまで熟知しています。現場のエンジニアの方はあまり知る機会の少ないSESの契約内容等も交えて、SES企業で社員が辞めようとする時の舞台裏を解説します。
辞めようとするとよく言われること
退職しようとした時に会社から言われることとしてよく聞くものには例えばこんなものがあります。
- うちで通用しないならどこに行っても通用しないぞ
- 今辞められたら会社に損害が出るから損害賠償を請求するぞ
- 狭い業界だからこの業界では二度と働けなくなるぞ
まあこれはSES企業に限った話ではありませんね。企業が社員の引き留めによく使われる手です。何も知らないと怖くなってしまうかもしれませんが、どれも取るに足らない脅し文句です。
本当にどこに行っても通用しないような社員だったら、社員の方から辞めると言ってくれたら会社としては大喜びです。辞めてほしくない人材だからこのように言うのです。
社員に過失があって普通に仕事していたら起こりえない損失を会社に与えたのであれば損害賠償を請求されることがないわけではありませんが、日本には職業選択の自由というものがあります。普通に転職しただけで損害賠償請求が成り立つことなどあるわけがありません。
狭い業界だからお前を二度とこの業界で働けないようにしてやるというようなことを言う社長さんもいるようですが、少なくともIT業界ではそんなに業界全体に影響力を行使できるような大物は私は今まで一人も見たことがありません。「やれるもんならやってみな」と言ってやりましょう。
会社がこういうことを言うのは全部、辞められたら困るから脅しているだけです。取るに足らないことではありますが、どうしても心配なら労基署等に相談してみましょう。
SESでは顧客との契約期間の問題がある
冒頭の質問箱の内容にもありますが、SES企業が社員に辞められたら困る理由には、顧客との契約期間との問題があります。こういう問題があることは事実です。実際契約途中で辞められたら非常にSES企業は困るでしょう。
ただし私が今まで見てきたSESの契約書では、契約期間は1~3ヵ月程度の長さでしかなく、その後は特に問題がなければ更に契約を延長して更新するという内容になっていました。
つまり、契約期間が半年とか1年とか、そういう長期間の契約内容にはなっていないということです。
契約期間が終わるまでは辞められないと言われたら、何年何月まで契約期間なのかを聞いてみると良いかもしれませんが、ほとんどのSES企業は回答できないか、嘘の契約期間を言うでしょう。
いずれにしても顧客と契約をしているのは会社であり、社員が顧客と直接契約しているわけではありません。社員と会社の間で結ばれている契約は雇用契約であって、顧客との契約内容によって退職時期が縛られるようなことはないので安心してください。
契約期間の途中で抜けると顧客から激怒される
現場のエンジニアが退職してプロジェクトから抜けようとすると、その会社の営業担当の人は商流の上位にいる企業から激怒されます。
それこそ、損害賠償をちらつかせてきたり、この業界からほしてやるみたいなことを言ってきます。
おそらく現場のエンジニアの人達が想像している以上に激しい詰め方をしてきます。中には人格否定するようなことをバンバン言ってくるような相手もいます。
所属する会社を飛び越えて現場のエンジニアに直接プレッシャーをかけてくる会社も中にはありますね。所属企業ではなく、プロジェクト現場の会社から脅された経験のある人も多いのではないでしょうか。
SES企業を辞めようとすると、損害賠償ちらつかせたり、二度とこの業界で働けなくなると脅してくるのにはこういう背景も間違いなくあります。彼らも顧客が怖いのです。顧客に怒られたくないから社員を辞めさせまいと叱責してくるのです。
契約期間の更新タイミングで抜けても結局怒られる
契約期間の途中で抜けるから怒るということであれば、契約期間は1~3ヵ月でその後は自動更新だから、契約更新のタイミングで抜ければ大丈夫だと思われるかもしれません。でも違います。w
契約書上の契約期間というものは、商流の上位の会社が都合の良い時にいつでも切り捨てられるようにするために設けられているだけであって、商流下位の下請け企業にはプロジェクトの途中で自由に抜ける権利などありません。契約更新のタイミングで更新せずに抜けようとしても結局怒られます。
私も昔SESの世界にいた時に、契約更新のタイミングで抜けようとしたところかなり激しくお怒りを買いました。
損害賠償請求すると脅してきたので、公正取引委員会に電話して相談してみたところ、契約を更新するかどうかは双方の意思確認が必要なので契約終了して何の問題もないという当たり前すぎるアドバイスをいただきまして、そのことを先方に伝えまして円満wに契約終了となったことがあります。
SESとは奴隷商売ですから、多重下請け構造の上に位置する会社にとっては、自分たちの飯のタネがなくなることは看過できないわけです。契約書上どうなっていようとも、自分たちに都合が悪いと結局キレてきます。
SES企業は自社の従業員が辞めようとすると理不尽な引き留めを行ってくることが多いですが、このようにSES企業は自社従業員に対してだけではなく、下請けの別企業に対しても同じことをやっているのです。
こんなものにまともに付き合っていてもばかばかしいだけなので、粛々と処理するに限ります。
法律を盾にするのは最終手段
企業があまりにも意味不明なことを言ってくる場合は、最後は法律を盾にして権利を行使するしかなくなるわけですが、これは最後どうしようもなくなってしまった時の最終手段としておきましょう。
もめることなく話し合いで円満退社できればそれが一番ですし、会社とは縁が切れたとしても、その会社にいた同僚とはまたどこかで一緒に仕事することもあるかもしれません。
法律上は14日前に会社に通知すれば退職することができるようです。(条件によって違う場合もあるようですが、常識的な期間で退職すればいずれにしても何の問題もありません)
ただ現実問題として14日間という期間は決して長くはないですし、この期間だと会社側も引き継ぎ等で困ってしまうこともあります。会社側に話し合いの姿勢がある場合には、会社と十分に話し合って現実的な退職日を決定することをお勧めします。
ちなみに会社の就業規則には、退職の何日前までに退職の届け出を行うかを定めた条項が通常あると思いますが、これは引き継ぎ等を考慮した会社の方針です。会社のルールよりも法律の方が優先されるので、就業規則に定めがあるからと言ってその期間は絶対に退職できないということではありません。
もっと早く退職したい事情がある場合には、14日前までに通告すれば法律上退職することは可能ですので、会社と相談してみると良いと思います。