転職しようと考えている方から先日ご相談をいただきまして、その中で辞めることに関して会社から「逃げるのか」と脅されているという内容がありました。私などからすればこんな脅しは下らないの一言なのですが、実際に脅されている立場の方からすれば不安でしょうがないという方も多いのではないでしょうか。
私も経営者ですし、過去にはブラックな経営も自ら実践してきておりますので、偉そうなことを言っていても「逃げるのか」と言ってしまう経営者の心情は非常によく理解できる部分があります。
「理解できる」というのは別にそういう経営者に対して賛同するという意味ではなく、色々なことに頭を悩ませながら日々の経営課題に立ち向かっていかなければならない経営者の立場として、ついついそのような軽々しく愚かな発言をしてしまう心情は自らの経験からも気持ちはわかるという意味です。
しかしながら、そういう軽率な会社側の発言によって、真剣に悩んでしまう労働者の方も多数存在しているという事実は非常に大きな問題だと感じます。はっきり言ってこんなことで悩むことはバカらしいことだと強く思います。
退職を申し出た時によく聞く脅し文句
他にも色々あると思いますが、従業員が退職を申し出た時によく聞く脅し文句はこんなところでしょうか。
- 逃げるのか
- 他の会社に行っても通用しない
- 辞めるなら損害賠償を請求する
- 同業他社でお前を採用しないように圧力をかける
- 最後の給料は払わない
「逃げるのか」とか言ってしまうのは、別れ話を切り出された男が「俺から逃げるのか」と言っているのと同程度のことでしかなく、非常にみっともない行為です。
転職の申し出をしたら会社から「逃げるのか」と脅されているという相談を受けたがそんなことで悩むだけ無駄です。そんなのは彼女から別れ話を切り出された男が「俺から逃げるのか」と言っているのと同じ程度の話だということをわかってほしい。
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) December 4, 2017
「他の会社に行っても通用しない」という発言には、お前はまだ未熟なんだからうちの会社でもっとしっかり学ばないとダメだということを言いたいのだと思われますが、引き止めをしている時点で既に会社が必要としている人材ということであり、他所でも必要としている会社は世の中にたくさんあると思われます。
「辞めるなら損害賠償を請求する」については、これを言われると結構怯んでしまう方がいるようですが、よっぽど悪質なことをやらない限りは会社から従業員に損害賠償請求などできませんので大丈夫です。
普通に仕事をしていて普通にありえるミスをしたことによって会社に損害が出たとしても、そんなことで会社は従業員に対する損害賠償請求などはできません。仕事でミスしたくらいで損害賠償請求されるリスクを背負うくらいなら自分で起業してしまった方がいいということになります。
「同業他社でお前を採用しないように圧力をかける」みたいな発言しちゃう社長って結構多いみたいですね。特にSES界隈には。この業界は狭い世界だから俺が圧力をかければお前はこの業界で仕事ができなくなるみたいなことを恥ずかしげもなく言っちゃうSES会社の社長さんもいるようなのですが、業界に幅を利かせることができるような大物は実在しないので大丈夫です。w
「最後の給料は払わない」ということを言われたという話も実際に聞いたことがありますが、払うべき給料を払わないのは泥棒と同じですし、こういうこと言ってしまう経営者は自分がどれだけヤバイことを口走ってしまっているかを全く理解していないのでしょうね。
従業員が退職を申し出た時の経営者側の行動パターン
辞めてもいい人から退職の申し出があったとしても黙って見送るだけですが、辞めてほしくない従業員からの申し出があった時に考えられる経営者の行動パターンは以下の通りです。
- 問題を解決して退職を考え直してもらう
- 諦めて現実を受け入れる
- 力でねじ伏せて会社にとどまらせようとする
問題を解決して退職を考え直してもらうというのは、それができれば会社にとっても従業員にとっても最も建設的な方法です。一度退職を申し出てきた従業員は何を言っても最後には辞めるというようなことを言う経営者もいますがそんなことはありません。
弊社もかつては終電休日出勤上等の長時間労働当たり前な超絶ブラック企業でしたが、当時辞めると申し出てきた従業員は5年以上たった今でも働いてくれていますし、アクシアで働いてみたいという知人を紹介してくれるまでになりました。
確かに辞めたいと言ってきた根本となる原因を解決できなければ何を言っても最後には辞めてしまうと思いますが、きちんと問題と向き合って解決することができるかどうかが重要です。根本原因さえしっかり解決できれば一度辞めると言ってきた人であってもちゃんと会社に残ってくれます。
しかしながら辞めると言ってきた原因となるもの全てを会社が解決できるわけでもありません。中にはすぐには解決できない問題もありますし、辞めると言っている原因が必ずしも悪い理由ばかりではありません。
辞める原因となっている理由が悪いものではなかった事例としては、一度社会人になったものの再び学びたいことができて大学院に通うために会社を辞めていった人が過去にいました。別に会社に不満があったわけでもないですし、社会人になってから再び学生に戻ることは悪いことではありません。
このように会社にはどうしようもない理由の時には「諦めて現実を受け入れる」ということになります。会社としては辞めてほしくなかったとしても、従業員それぞれの人生ですから笑って見送ってあげることが最後にできることです。
今時転職することは普通のことですし、それぞれの人生のステージや成長に合わせて転職していくことは当たり前のことです。会社の良し悪しだけではなく、その時の状況に合わせて最適な会社を選んでいく時代です。だからどんなに会社を良くしても辞める時には社員は辞めていきますし、それで良いと思います。
それなのに世の中には従業員が会社を辞めることをどうしても受け入れられない会社もあります。その時に「力でねじ伏せて会社にとどまらせようとする」という愚行に走ってしまうわけです。
「逃げるのか」とか「他社では通用しない」とか色々言われたとしても、そんなものは全て辞めさせたくないから言っているだけの詭弁ですので、まともに議論するだけ無駄になります。そういう時は華麗にスルーして粛々と引き継ぎをして辞めていくことをお勧めします。
会社を辞めることは「逃げ」になるのか
会社側から「逃げるのか」と言ってきた時は、それは全て辞めさせないための詭弁ですので無視してOKです。しかし本当に会社から逃げたくて辞めたい人も中にはいますよね。そういう時に「逃げ」と言われると確かにそうなので本当にこれで良いのかと悩む人もいるかと思います。
私としては別に会社から逃げても良いと思います。ただし本当に単にいい加減でちょっとしたことで嫌になって辞めるということだと問題だと思いますが、「逃げ」だとしてもそれによって少しでも状況が良くなるのであれば、その「逃げ」はステップアップです。
わかりやすい例で言うと、ブラック企業に勤めている場合はさっさと逃げてしまった方がその後の人生にプラスになります。確かに劣悪な環境から逃げるのかもしれませんが、逃げることによって状況は良くなりますから。
会社から逃げることによって自分の人生がプラスになると思ったらその時は迷うこと無く堂々と逃げれば良いと思います。
世の中には本当にヤバイ経営者もいるので要注意
会社から脅されたとしても、そのほとんどは会社を辞めさせたくないから言っているだけですので、そんなものは無視していればOKなのですが、世の中には従業員からカネをむしり取ることしか考えていない真性のブラック企業も存在しますので、その場合は要注意です。
私の身の回りにいた人の事例として、経営者から脅迫されて辞めるに辞められず、辞めるなら会社に損害が出るから一生毎月弁償するために金を振り込んでこいと脅されていた人がいます。振り込まないなら親のところに取り立てにいくと脅されていたそうです。
もうやっていることがあまりにひどすぎてアレなのですが、実際にその人は最初のうちは毎月その経営者にお金を振り込んでしまっていたそうです。そしてその経営者に対する恐怖から地元を離れ、身を隠すように地方に移住していました。
こういう相手は単なる脅しではなく、金のためなら何でもやってくる可能性がありますし、はっきり言ってただの犯罪者ですのでさっさと警察なり弁護士なり労基署なりに相談されることをお勧めします。
悩んだらとりあえず誰かに相談を
会社から脅されてもほとんどは鼻で笑ってスルーすれば良いのですが、実際に脅されている立場になると思い悩んでしまっている方は多いと思います。その場合は1人で思い悩まずにとにかく誰かに相談した方がいいですね。
相談する相手はまずは誰でもいいです。身近に相談できる人がいるならその人に相談すればいいですし、身近に気軽に話せる人がいないのであればTwitterとかでネットの住民に相談するとかでも良いと思います。
自分が何かをされてしまうと冷静な判断ができなくなってしまうこともありますが、他人事の場合はだいたい冷静な判断ができるものですから。仕事は人生の中で多くの時間を費やす大事なものですから、下らないことでいつまでも悩んでいないでさっさと良い会社を探さないと人生損してますよ。