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世の中全体に働き方改革が推進される流れができてきて、新しい時代に合った働き方に変革していく上でこの流れは大いに喜ばしいことだと思います。その働き方改革の施策の一つに副業を認めていきましょうというものがあります。

何となく世の中のトレンドにのって副業解禁する企業がポツポツ出現してきているようで、副業を認めていない会社は時代遅れであるかのような論調も中にはあるようです。そんな流れに逆らうようで申し訳ないのですが、ここであえて「副業解禁」に対してネガティブな意見も書いてみたいと思います。

副業解禁することによるメリットが存在することは私も重々承知しているのですが、副業解禁の流れを推し進めていくためには正直不安に感じる点もいくつかあります。しかし副業推進派の方々からは副業解禁による懸念点についてのご意見は一向に出てくる様子がないようですので、私が思っている副業解禁の懸念点についてまとめてみます。

そもそも副業を行う目的は何なのか

副業は素晴らしいと発言する人が増えてきているように思いますが、そもそもなぜ副業をやる必要があるのでしょうか。副業を行う目的について触れられたアンケート結果がありましたので引用させていただきます。

5,000名以上の正社員に聞く「副業」実態調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート調査結果発表―

こちらのアンケートの中に、副業に興味のある理由についての調査結果があります。

自分のスキルアップのためとか、自分のキャリアを広げるためとか、人脈を作るためといった理由もあるようですが、「収入を得るため」という理由が副業をやる理由の圧倒的1位になっております。

スキルアップとかキャリアとかもちろんそういう理由ももちろんあるのですが、これだけ顕著に比率の差が生じていますのでほとんどの人の本音は、

もっとたくさんお金がほしい。だから副業やって稼ぎたい。

これが本音です。今の世の中の残業削減の流れによって、残業代を稼げなくなってしまった人達が別の方法で収入を増やそうと考えて副業を考えているのかもしれません。

働き方改革で一社あたりの残業時間削減して副業は意味あるの?

副業の目的が「カネのため」であるのであれば、別に副業でなくても今まで通り残業代で稼ぐやり方でも良いのでは?という疑問を感じずにはいられません。

働き方改革によって一つの会社での勤務時間が短くなって、一見すると長時間労働が解消されているように見えるようになったとしても、結局他の会社でもっとたくさん働くようになって、副業先での勤務時間も通算すると結局長時間労働になってしまっている、というのでは笑えません。

収入を増やすためには仕事の質を高めて時間あたりの収入を増やすか、単純に物量作戦で仕事の時間を増やして収入を増やすかどちらかです。「副業して収入を増やしたい」と考えている人の発想は、たくさん働いてその分収入を増やしたいということでしょうから、基本的にはたくさん残業やって残業代を稼ぎたいと思っている人の思考と同じです。

「仕事の質を高める」という観点だと、副業で他の仕事の経験をした方が良いのか、一つの仕事に集中した方が良いのか、という両方の考え方があると思います。もちろん他の仕事を経験することによって得られる経験値がプラスになることは間違いありませんが、一つの仕事に集中しきることによって得られる経験値とどちらの方がよりプラスになるのかは微妙なところです。

私などは物事は一つのことに集中して徹底した方が良い結果が得られると考える派です。

残業時間削減の対策によって、一社あたりの残業時間が少なくなって長時間労働が解消されたように見えたとしても、削減された労働時間が副業先の企業に移っただけでは見掛け倒しの長時間労働削減にしかならず、全く意味のないものになってしまいかねません。

一社あたりの勤務時間が短くなれば社会保険に加入できない

上で述べたように、確かに副業先の労働時間も合算すると長時間労働になってしまうのでは意味が無いということで、一社あたりの労働時間を減らすことによって他の企業で勤務するようにすれば、長時間労働にはならず、複数の企業での業務経験が得られるのでプラスになると考える方もいると思います。

その場合、例えばA社で週20時間勤務、B社で週20時間勤務のようにすると、労働時間が短くなって社会保険の加入対象にはならなくなってしまいますよね。細かい加入条件は色々あるとしても基本的に社会保険は通常の労働時間の4分の3以上の労働時間となる人が対象です。

フルタイムの人が週40時間働く会社である場合は、週30時間以上働かないと社会保険の加入対象にはならないため、副業によって一社あたりの勤務時間が短くなってしまうと、自動的に厚生年金は国民年金に変更となり、健康保険は国民健康保険になってしまうということです。

こういうことを副業推進派の方達はもっときちんと情報発信していかないとダメだと思うのですがいかがでしょうか?そんなつもりはなかったのに気づいたら社会保険の加入条件を満たすことができなくなってしまって泣く人が出てきてしまわないか心配です。

複数企業に勤務していても労働時間は通算で計算される

副業によって複数企業に勤務する場合には、労働時間は一社ごとではなくて複数企業で通算して考える必要があります。私が(複数の企業に勤務する)副業に関して一番心配する点はこの点です。

複数の会社で働く人の労働時間

これによると例えばその日すでに全く関係のない他社で8時間勤務してきた人を自社で働かせると、最初から残業扱いで割増賃金が発生するということになります。自社ではまだ少ししか働かせていなくても、他社と通算して労働時間が週40時間以上となった時点から割増賃金が発生するということになります。

これは企業としては無駄に割増賃金のコストが発生してしまうということであり、副業している人は敬遠される可能性があるということを意味します。

実際こういうことを知らないで安易に世の中のトレンドに乗ろうとして「副業解禁!w」とバカみたいに叫んでいる企業は結構あるのではないでしょうか。後で労働者から割増賃金分の賃金未払いで請求されたら詰みますが大丈夫でしょうか。

多分これ、確信犯でやる悪質な労働者とかもそのうち出てくると思いますよ。

今後副業を推進していくために必要だと思うこと

アクシアでも副業したいという声はあがってきておりますが、複数の企業に「勤務する副業」に関しては上記の通り現状の法律だと労働時間の問題が解消できないためご遠慮いただいております。

今だとアクシアで認めている副業としては、どこかの企業に勤務するのではなく、個人事業などで自分のやりたいことを行う副業です。個人事業であれば労働者ではないため、労働時間という概念がなく、法律上の労働時間の問題もないからです。

実際アクシアでの勤務は週3日で、あとは副業で自分のやりたいことを個人でやっている人も在籍しています。

このようにアクシアでは複数の企業に「勤務する」形での副業は総合的に判断して現状では認めていないのですが、今後複数の企業に勤務する形での副業を推進していきたいのであれば、

  • 一社あたりの勤務時間が短くなった場合の社会保険の扱いに関する問題
  • 複数企業に勤務した場合に労働時間が通算して計算される問題

このあたりの問題については見直していかなければならないと思います。そうしないと後で「こんなはずではなかった」と泣く労働者や企業が量産されてしまうような気がしてなりません。

副業推進派の方達も本当に副業を推進していきたいと考えるのであれば、このあたりの懸念点についてももっとオープンに情報発信して議論していくべきではないでしょうか。

私も会社の副業に対するスタンスに関しては今後も色々と検討していきたいと考えておりますので、いやいやそれは違うだろ、みたいな反対ご意見たくさんお待ちしております。


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