どこかのサイトとかニュースとかで評論家の人が「残業を無くすために業務効率化をしましょう」と言っているのを見て、残業ゼロを実現してきた企業の人間としては「それじゃ残業なくならねーよ」と心の中で思ってしまうことがあります。
業務効率化することは残業を無くすためには必要なことではありますが、業務効率化しただけで残業削減できるという単純な話であれば、ITシステムによる業務効率化を本業としているIT企業は軒並み残業ゼロを実現していそうなものですが、世の中そううまくはいきません。
残業まみれのIT企業が業務効率化のためのITシステムを顧客に提案するという、会心のギャグを全力で展開しているのが今の世の中であります。
残業を削減するために業務効率化の取り組みを行っていても、中々残業が少なくならずに苦しんでいる企業は世の中にたくさんあると思います。弊社もかつて同じ苦しみを味わってきました。そういった企業が残業削減の成果をあげるためには、残業することは習慣であるという事実を認識する必要があるように思います。
この「残業することは習慣である」ということについて、残業ゼロを実現してきた弊社の経験をまとめてみました。
残業を無くすことは習慣を変えるということ
人間が習慣を変えようと思うと簡単にはいきません。仕事でなくとも例えば、ダイエットする、早寝早起きする、ジムに通う、その他様々な生活の場面で自分の習慣を変えようとして挫折したことが誰でも一度はあると思います。
多くの人が自分の習慣を変えようとして挫折したことがあるように、習慣を変えるということは簡単なことではありません。習慣の力を軽く見れば簡単に挫折します。
残業することは習慣ですので、残業を無くすことは習慣を変えるということです。
ダイエットしようとして失敗する人は世の中あふれかえっていますよね。ダイエットも食事や運動の習慣を変える行為です。残業削減することも習慣を変えるということですので、少なくともダイエット成功と同じくらいには難易度が高いということです。
しかもダイエットなら自分一人が習慣を変えれば良いわけですが、組織全体で残業削減するということは、その組織に所属する人達全員の習慣を変えていくということです。組織の人達全員にダイエット成功させるくらいには難易度が高いということですね。w
習慣の力というものは恐ろしいものです。ダイエットでも一時的に食事や運動を見直すことのできる人はたくさんいますが、多くの人がそれを継続することができずに気付くとまた元に戻ってしまいます。
習慣が身についていると一時的に行動を変えてみてもまた元の行動に戻ろうとします。この元に戻ろうとする強力な力が習慣の力です。残業の習慣が身についてしまっている人は、一時的に残業を少なくしたとしても気付くといつの間にかまた元の残業体質に戻ってしまいます。
いくら業務効率化しても習慣を変えなえれば意味がない
残業を減らすためには業務効率化を行うことはもちろん重要な事です。しかし業務効率化しただけでは残業はなくなりません。
業務効率化しただけでは残業は結局なくならないという事実は、残業ゼロを実現してきた弊社の経験からはっきりと言えることです。残業削減するために業務効率化は大切なことですが、それと同時に大切なことは残業体質のに染まってしまっている習慣を変えていくことです。習慣を変えなければ残業はなくなりません。
残業の習慣が変わらないままに業務効率化して空き時間ができるとどのようになるかというと、一時的に残業は少なくなったとしても、またしばらくすると空いた時間に別の仕事を入れてしまうようになります。
これは業務効率化によって残業削減を実現しようとして失敗したことのある企業の方なら思い当たるところがあると思いますが、弊社でもかつて同じ失敗を繰り返していた時期がありました。
アクシアではかつて残業まみれだった頃は毎日終電まで仕事をしており、終電まで仕事をすることが状態化して、それが習慣となっていました。
習慣とは面白いもので、毎日終電まで仕事することが常態化してしまっていましたが、逆に終電を逃すようなことはほとんどありませんでした。どんなに忙しくても終電までにはちゃんと帰るということが習慣となっていたからです。
このように当時はこのように毎日終電まで仕事する(逆に終電は超えないように仕事する)ことが見事なまでに習慣となっていました。
さすがに毎日終電はまずいだろうということで、残業を少しでも減らすために様々な業務効率化のための取り組みを実施したものです。そして実際に業務効率化に成功し、残業削減できた時期もありました。
でも結局またしばらくすると元のように終電まで仕事をするようになってしまっていました。空いた時間にまた別の仕事を入れてしまっていたからです。
終電まで仕事をすることが習慣となっていた我々は、せっかく業務効率化して早く帰れるようになっても悲しいことに習慣の力によってまたいつの間にか終電まで仕事する毎日に戻ってしまうことを繰り返していました。
弊社では終電まで仕事することが習慣となっていましたが、これが20時まで残業することが習慣となっている企業では、一時的に残業が少なくなったり多くなったりしたとしても、また時間がたつと20時頃まで働くようになると思います。
このように、業務効率化しただけでは長期的に見たら意味がなく、合わせて習慣も変えていくことが必要になります。
残業の習慣があると必ず残業に逃げる
残業が完全になくなった今と、残業を自由にやっていた以前を比べて大きく違う点があります。それは仕事が遅れそうになった時の対応方法です。
残業をやらなくなった今では、少しでも仕事が遅れそうになると手遅れになる前にできるだけ早い段階で人員を増やしたりスケジュールを変更したりするなど、対応方法を考えるようになっています。
それに対して残業を自由にやっていた頃は、仕事が少し遅れそうになったとしても残業でカバーすれば良いという考え方でした。そこにまともなマネジメントの意識は全くありませんでした。
残業しても良いという意識があると、問題の処理を行おうとした時には、短絡的に残業によって処理しようとしてしまいます。残業があると残業に逃げるのです。
残業の習慣を改めるための仕組みを考える
どんな習慣であっても、習慣を変えることは簡単ではありませんね。習慣を変えようと思った時には単に気合と根性で習慣を変えるよりも、何か工夫をした方が成功しやすいと思います。
個人で残業の習慣を改めたいと思うのであれば、例えば定時から一時間後に何かの予定を強制的に入れてしまうというやり方はいかがでしょうか。友だちとの約束でも習い事でも勉強会でも何でも良いと思いますが、仕事後に予定が入っていればそれまでに仕事を終わらせて帰れるようにしようという意識が働きます。
もし上司の協力が得られるのであれば、上司にお願いして時間がきたら強制的に帰らせてもらうようにできれば一番良いと思います。もし強制的に残業させてくるような上司であれば転職を考えましょう。
大事なことは残業禁止のルールを作ることではなく習慣を作ること
時々ニュースなどで残業削減の方針を打ち出している企業の話を見ることがあります。しかし残業を削減するために重要なことは、残業削減のために様々なルールを作ることではなく、残業をしない習慣を作ることです。
アクシアでは残業禁止のルールを作ってから、実際に残業ゼロの習慣が組織に根付くまでには半年の時間が必要でした。半年の間は残業禁止、早く帰れと言ったところでほっとくと仕事をやめずに帰ろうとしない人が必ずいました。
多分人間の習慣を変えようと思ったら半年くらいは時間が必要なのでしょう。残業禁止にしてからも半年間は帰ろうとしない人が必ずいますので、半年間は残業の習慣に染まっている従業員との闘いの毎日になります。
残業禁止のルールを作ることは簡単ですが、残業が当たり前の習慣を変えることは地道で根気のいる作業です。こればっかりはルールを作っただけでは簡単に習慣が変わることはありません。
ルールを作るだけでは習慣は変わりませんので、従業員一人一人に残業ゼロの習慣が身につくまでは、上司が従業員に指導して残業しないことを継続させて、時間をかけて新しい習慣を作っていくことが必要です。
残業することは習慣だが、残業しないこともまた習慣である
残業することが当たり前の習慣を変えていくことは確かに大変です。自分一人だけの個人の習慣を変えることでさえ大変なのに、組織全体で習慣を変えていこうとなればなおさら大変です。
しかし残業することは習慣ですが、残業しないこともまた習慣なんですよね。
習慣を変えるまでは大変でしたが、一度残業しない習慣が身に付けば一々帰れと言わなくてもみんな定時までに仕事を終わらせて勝手に帰るようになります。
弊社では2012年から残業ゼロを継続していますが、その間はずっと残業をしない習慣が強化されてきています。新しい人が入社してきても、残業しないという組織の習慣に新しく入ってきた人もすぐに染まりやすくなっています。
2012年から作ってきた「残業しない習慣」は今では弊社の大きな強みとなっており、定時で帰ることは弊社の従業員にとっては当たり前のこととなっています。
悪しき習慣を改めて良い習慣を作っていく作業は決して簡単ではなく、地道で根気のいる作業ではありますが、逆に一度良い習慣が作られてしまうとそう簡単にはその習慣を逸脱するようなことはやらなくなります。
残業することは習慣だが、残業しないこともまた習慣である
従業員一人ひとりに残業しない習慣が身についている弊社は、単にルールや規則で縛られているだけの組織とは全く違います。残業しない習慣を作ることは大変ですが、それだけの価値は十分にありますので、時間をかけて習慣を作っていくことをぜひ考えてみていただけたらと思います。