空前の人手不足の時代がやってきたにも関わらず中々給与水準が上がりませんね。厚生労働省のウェブサイトにある資料によると、やっぱりほとんど、というか全然伸びていないように見て取れます。
ではどうして給与水準が上がらないのかというと、そんなことは私などには到底わかりません。経済は生き物のようでそんなに単純ではないでしょうし、要因は一つではなく複雑に絡み合っているのだとは思います。
しかし日々企業活動をしている立場からすると、これでは中々給与水準も上がっていかないだろうと思わされるようなことも実際あります。労基法違反への対処が緩すぎることは給与水準が中々上がらない要因の一つなのではないかと感じますので、そのことについて書いてみます。
ホワイト企業はブラック企業に勝てない?
ブラック企業は色々とずるいことをしているから、ホワイト企業はブラック企業には競争で勝てないと論じられることがよくあります。確かに一理ありますが、私は必ずしもホワイト企業がブラック企業に勝てないとは言えないと思います。
何をもってブラック企業とするのかの定義も曖昧ですし、どのような場合にホワイト企業がブラック企業に対して勝てなかったり不利になってしまったりするのかを考える際には、もう少しブラック企業の分類や定義を分けて考えていく必要があると思います。
ホワイト企業であることは競争に有利になる
私はホワイトな環境を作り、ホワイト企業になることで競争に不利になるとは思いません。ですのでホワイト企業はブラック企業に競争で勝てないと一括りに論じられている内容については同意しません。
ホワイト企業となることで会社経営の面で様々な良い効果が生まれています。
- 生産性が上がった
- 採用力が強化された
- 人が辞めにくくなった
- 売上・利益が伸びた
このあたりのことについては私の書籍でも詳しく書いてますのでさり気なく宣伝。w
今の時代、ホワイトな労働環境を作ることは優秀な人材を集めるための大きな武器となりますし、残業ゼロの働き方は著しく生産性を向上させます。
これらのホワイト企業であることのメリットを考えると、残業まみれのブラック企業に対して競争で不利になるとは考えにくく、むしろ有利に闘える材料となります。競争の要因となるものは一つではないので、ホワイト企業であれば必ず競争に勝てるわけではもちろんありませんが、有利に闘うための武器になることは間違いありません。
労働基準法違反の企業とは対等な競争ができない
長時間労働が蔓延していても労働基準法を遵守している企業相手であれば、ホワイト企業は有利に闘うことができます。ただしその相手が労働基準法違反をしている企業である場合は話が変わってきます。労働基準法違反の企業とは対等な競争ができません。
- 最低賃金を下回る給与設定にしている
- 残業代を払っていない
こうしたことを平気でやっているブラック企業を相手にする場合、価格競争で非常に不利になります。相手はルールを守っていないわけですから、労働基準法を遵守して闘っていた場合に絶対に勝てない水準まで価格を落としてくることもできてしまうかもしれません。
我々のシステム開発の仕事のようなデスクワーク中心の仕事であればそれでもまだ闘える余地はあるかもしれません。しかし飲食店のように提供価格を10円単位で競ってシビアな競争をしているような業界でルールを守らず不当な価格設定をされてしまうと勝つことは非常に厳しいと思われます。
ブラック企業と一括りに論じることに意味はなく、一番問題とするべきは法律を守らないブラック企業です。もしスポーツでルール無視でやりたい放題されてしまっては、プロが素人に負けることだってあるかもしれません。それと同じことでルール違反はダメです。
IT業界にも偽装請負という法律違反を当たり前のように行うブラック企業があふれかえっておりますが、こういうルール違反上等みたいな会社はさっさと駆逐しなければまともにルールを守って真面目に活動している企業がかわいそうです。
労働基準法違反の企業と闘うためには賃金を中々上げることができない
自分達の会社は法律を守って真面目に活動していたとしても、現実問題としては違法企業とも競争していかなければならないわけです。競争を放棄すれば企業は潰れてしまいます。
そうすると労働基準法違反で残業代を払っていなかったり最低賃金すら払っていない企業と闘うためには、給与水準を高く設定してしまうとますます価格競争で不利になってしまいますね。
何度も言いますが我々のようなデスクワーク中心の仕事であればまだマシですが、飲食店のような事業をしている会社だと本当に辛いと思います。従業員の給与水準を下手にあげてしまって採算が取れなくなってしまっては簡単に潰れてしまいますからね。
このように世の中に労働基準法違反を平然と行って不当な価格競争をしているブラック企業が存在するから、中々自社の従業員の給与水準を上げられずに苦しんでいる真面目な企業が世の中にはたくさんあるのではないかと思われます。
真面目に闘ったら勝てそうにないので私だったら絶対に飲食店とかやりたくないですね。。
労働基準法違反の企業はもっと徹底して厳しい処罰を行うべき
今だと多少労働基準法違反をして残業代払わなかったりしても、労基署からの是正勧告に従ってすみませんでしたと言って指示に従えばそれで許されてしまう感じですよね。バレなければ得してしまうみたいな。
労基署からの指導といっても今まで行っていた不正行為を正しなさいと言われるだけで、よっぽど労基署からの指導を無視したり何度も不正を繰り返したりしない限りは罰則が課せられるようなこともあまりないと思います。
未払い残業代を払いなさいと指導されたとしても、払っていなかったものを払いなさいと言われるだけで、追加の罰金のような処罰が課せられないので「バレなければ得してしまう」みたいな感じで確信犯でやってる悪質なところも多分あると思います。
労働基準法違反は割に合わないと企業に思わせるくらいでないと、こういう悪質なブラック企業は中々減っていかないのではないかと思います。それによって真面目に活動している企業が自社の給与水準を上げることの妨げにもなってしまいますので、労働基準法違反はもっと徹底して厳しい処罰を行うべきではないかと思います。
給与水準が中々上がっていかない要因は色々と複雑な理由があるのだと思いますが、少なくとも労働基準法違反に対する緩すぎる対処が、真面目にやっている企業の給与水準アップの妨げになってしまっていることは間違いないのではないでしょうか。