残業上限規制に関する法案と一緒に高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の範囲拡大などもセットで法案提出されそうになっていて、セットで法案提出するのはやめろと各方面から厳しく批判されています。確かにセットで提出しなければならない合理的な理由で思い当たるものは特になく、分けて議論した方が良いのではないかと私も思います。
高度プロフェッショナル制度については残業代ゼロ法案のような言い方をされる方々もいらっしゃいますが、「時間ではなく成果」で評価する方向性を考えることも非常に重要なことであり、単に残業代ゼロ法案反対と叫ぶだけの人達もまた思考停止しているようにしか見えません。
現行制度でさえ大きな問題が存在していますので、それらの問題を放置したまま裁量労働制の範囲拡大というのは、それによって生まれてくる新たな悲劇が目に浮かぶようではありますが、裁量労働制にしても「時間ではなく成果」で評価する方向性で考えるという意味においては、議論していくべきテーマではあると思います。
主に時間で評価する仕組みに関しても、主に成果で評価する仕組みに関しても、それぞれ問題はあります。難しいテーマでありすぐに正解を導き出せる類の問題ではありませんが、私なりの現時点での意見をまとめてみました。
時間で評価する仕組みの問題点
時間で評価する仕組みの一番の問題点は、必ずしても成果に貢献した人が評価されないという点でしょう。それどころか成果を出せない人がダラダラ働いた方が評価されて稼げてしまったりもするわけです。
いやいや、単に長く働いていただけで評価される会社なんてないでしょという意見の人もいるかもしれませんが、実際にダラダラ残業した方が稼げてしまっている人達が存在している以上、その会社は意図の有無に関わらず「時間で評価する会社」であると言えます。評価とは待遇であり、賃金です。たくさんもらえている人が評価されているということなのです。
「生活残業」という強力なオプションが行使できてしまうような会社は全て時間で評価される会社です。個人的に生活残業するような輩には吐き気がしてしまいますが、ダラダラ残業した方が稼げてしまうような仕組みになってしまっている以上は、その仕組みに合わせて稼ぐためにダラダラ残業することは極めて合理的な行動だと考えることもできます。
こうなってしまうと、真面目に効率よく働いて真の成果を出した者がバカを見る世界となってしまいますので、モチベーションの観点からも会社の生産性が向上することは中々期待できなくなってしまいます。それどころか一生懸命働いて成果に大きく貢献する人ほど転職されてしまうリスクが大きくなるでしょう。
終身雇用と年功序列が成立していた時代であれば、一生会社に面倒を見てもらえるという保証と引き換えに、会社に忠誠を誓ってそれなりに働くという図式が成立していたのかもしれませんが、今はもう終身雇用とか年功序列とかが成り立つ時代ではなくなってきています。
転職が当たり前の時代にダラダラ残業した人の方が評価される会社とは、成果を出せない無能な人にとっての天国です。ダラダラ残業することによって他の人が出した成果を搾取できるわけですからね。当然のごとく成果に貢献できる有能な人から抜けていき、ダラダラ残業する無能ばかりが残る会社となってしまいそうです。
組織に貢献してくれる人を正しく評価しないと転職して逃げられてしまう時代ですので、「時間ではなく成果」で評価する方向で考えていく流れは当然のことと言えるでしょう。
成果で評価する仕組みの問題点
時間で評価する仕組みだと、ダラダラ残業する無能ほど稼げてしまいますので、これはさすがにまずくないか?ということで「時間ではなく成果」で評価する仕組みの登場です。裁量労働制や高度プロフェッショナル制度のことですね。
裁量労働制や高度プロフェッショナル制度であれば、生活残業という強力なオプションで稼ぐという手段がなくなりますから、成果を出さずにダラダラ働く人達を撃沈できることは確かです。そういう意味で一応は時間で評価する仕組みの問題点を解消するという目的は果たされていると見ることもできるのかもしれません。
ただしこれらの制度が大きな問題点をはらんでいることは周知の事実であり、これらの制度を経営者が悪用することで「定額働かせ放題制度」になってしまう大きなリスクがあります。残業代を払うことなく、合法的に延々と働かせるようなことも経営者がずる賢くやればできてしまう可能性があります。この点だけを切り取って批判している人達が「残業代ゼロ法案」と一生懸命に叫んでいます。
また残業代が発生する仕組みであったとしても、成果の総量だけを重視して時間は度外視のような企業文化の場合には、電通のような結果になってしまうおそれがあるのではないかと思います。ある意味純粋に成果主義を追求した形であって、労働時間という概念のない全社員が経営者のような考え方で働く会社ということでもあり、一見すると素晴らしい会社であるようにも思えます。
しかし大きな問題点としては、全ての人が経営者のような考え方をした働き方ができるわけではないという点ですね。中にはそのような働き方にはうまく適応できずに、精神的・肉体的に病んで潰れてしまう人も当然のことながら出てきてしまいます。電通の痛ましい事件によって働き方改革の流れが一気に浸透したわけですが、このような働き方が健全な働き方であるとは到底言えません。
時間や成果で評価する仕組みの問題点をどのように解消するか
時間ではなく成果で評価するという流れは今後も進んでいくと思われますが、時間で評価する仕組みにも成果で評価する仕組みにも現状だと様々な問題点があります。これらの問題点を解消するためのアイデアが今後色々と議論されていくことと思いますが、残業ゼロの企業として一つの案を提案させていただきたいと思います。
成果で評価を行う裁量労働制や高度プロフェッショナル制度が定額使い放題制度になってしまうという問題点を解消するために、これらの制度に厳しい労働時間の上限設定を設ければ良いのではないでしょうか。具体的には週40時間を労働時間の上限設定し、その制約がついた状態での裁量労働制を適応することを提案したいと思います。
- 週40時間を労働時間の上限とする
- 週40時間の間であれば働く時間は何時間でも良い
- 評価は成果によって行う
- 裁量労働制の適応可能な職種を全職種に拡大w
残業ゼロの会社だからってものすごく上から目線で提案しているようで恐縮ですが、時間ではなく成果で評価するという流れはもう止めることは難しいと思います。それならば成果で評価する方向で考えていかざるを得ないわけですが、残業ゼロというのは一見すると時間を重視しているように見られるのですが、実はものすごく成果が重視される仕組みです。
残業ゼロの会社で働いてみたことのある人ならわかると思いますが、「時間」という点でみんな同じ条件ですから生活残業のような必殺技を使うことができません。そこにあるのは成果だけです。指定された限られた時間の中でどれだけ成果を叩き出せるかの世界です。
これは今まで残業まみれの働き方をしてきて、時間で評価されることに慣れてしまっている人にとっては結構辛い環境でもあります。成果が出せなくても残業でカバーということが一切できなくなりますので、時間で評価するという概念が一切なく残酷なまでに成果で評価されてしまうからです。
時間ではなく成果で評価するというやり方は良いと思います。従業員に可能な範囲で裁量を持たせていく方向で考えることも良いことだと思います。それであれば現行の裁量労働性の問題点を解消するために、労働時間が後ろに伸びることのない(残業ゼロの)裁量労働制が良いのではないかと思います。
長時間労働になってしまうリスクがないのであれば、裁量労働制の対象職種を限定する必要もないので全職種に拡大しても問題なし。w
アクシアでは現状は1日8時間労働の残業ゼロの会社ですが、将来的にはここに裁量労働制の考え方も取り入れて、成果が問題なく出せているのであれば早く帰っても良い制度にしていく予定です。1日の労働時間の上限を8時間のままキープし、成果を出して早く仕事が終わっている人は1日の労働時間が7時間でも、6時間でも良いことにして、従業員の裁量とモチベーションを高めてさらに生産性を高めていく意図があります。
ちなみに11月から試験的に1人そういう働き方をしてもらう予定でおります。色々と問題も出てくるでしょうから一つ一つ解決していき、近い将来に全面的に導入をしていきたいと考えています。実際にトライしてみてわかることもたくさん出てくると思うので、それについてはまたブログでも報告していきたいと思います。