エンジニアは数字を意識するべきかどうかに関する興味深い記事を先日見かけました。
この記事で主張されていることを簡単にまとめると、エンジニアに数字を意識させたところで別にメリットないし、エンジニアと経営者はお互い役割も違うんだからお互いの立場を理解し合って仕事すればいいんじゃないの、といった感じです。
この記事を書かれた方はエンジニアの方のようですが、「エンジニアは数字を意識するべきか」について、元エンジニアで現経営者の視点から考えてみました。
エンジニアも数字を意識するべき
いきなり結論ですが、私の考えとしてはエンジニアも数字を意識するべきだと考えます。これは数字を意識した方が良いに決まっています。というよりも、エンジニア個人としても自分がどれだけの成果をあげているのかを数字で知りたいとは思いませんか?私自身が現役エンジニアの時は自分の成果がどれだけなのかを知りたいと常々思っていました。
それにどれだけ頑張っても果たして自分がどれくらいの貢献ができているのか全くわからないというのは結構辛くありませんか?私の中では、
現在地点を確認できないことは苦痛
という考えがあります。今自分はどれだけの成果をあげてきたのか全くわからない、あとどれだけ頑張ってどれだけの成果をあげれば良いのか全くわからないというのは私は辛いです。何も見えない暗闇の中を走っているようなものだと思います。
例えば長距離のマラソンをする時に、結構頑張って走ってきたと思うけど今何キロ地点まできているかわからないし残りどれだけ走れば良いのかわからないみたいな状況ってかなり辛くありませんか?私なら絶対心が折れそうになりますね。
それに対して今自分が何キロ地点まで到達していて残りどれだけ走れば良いか知ることができれば、残りもなんとか頑張ろうという気持ちにもなれると思います。
デスマーチの現場で心が折れて離脱するエンジニアが出始めるタイミングって、一体あとどれだけ頑張ればシステムが完成して納品できるのか、先が見えない程の状況になった時だと思います。
プロジェクトが炎上していてもあと何日頑張れば納品できそうだという先の見通しがたっている状況であれば、結構大変な状況だとしても割りと頑張れることも多いと思います。しかし頑張っても頑張っても次から次へと新しいバグが発生して、プロジェクトの完了がいつになるのかの見込みも立てられないみたいな状況になると心が折れそうになります。人によっては本当に心が折れてしまいます。
現在の状況がまったくわからないというのは、心理的にかなり辛いものです。
数字を意識した方がパフォーマンスが上がる
数字がわかるということは現在地点がわかるということ、あとどれくらい頑張れば良いかがわかるということです。何も数字が見えない状況と違って、ゴールが明確に見えると人間は割りと頑張れる生き物です。
アクシアではエンジニアにいつも数字の意識を強く持ってもらうようにしています。目標となる数字も一人ひとりに持ってもらっていますし、毎日その数字を達成できるように考えてもらっていますし、遅れが出るようであれば遅れの原因を考えてもらったり、翌日以降どうやってリカバリーしていくのかを考えてもらいます。もちろん数字ベースで具体的に考えてもらっています。
これが数字がないとどうなってしまうかというと、ただの精神論になってしまいます。「頑張れ」と無責任に尻を叩くだけになってしまいます。エンジニアは頑張れと言われてもどれくらい頑張れば良いのかわからないので辛くなってしまいます。
数字を意識した方がエンジニアのパフォーマンスは確実に上がります。これはもう毎日うちの会社は数字を見ているのでよくわかります。リーダーが数字の確認を怠った日などは露骨にパフォーマンスの低下が確認できますのですぐに是正させます。
数字を意識した方がパフォーマンスが上がることは議論の余地がないと思います。
簡単に数字を見れる仕組みが必要
「エンジニアは数字を意識するべきか」を書いたエンジニアの方は、エンジニアが数字を意識したところでイメージなんかできないしメリットはないと言っています。そんなものはノイズにしかならないしデメリットであるとまで言っています。おそらく今までまともに意味のある数字を見て仕事をした経験がないのでしょう。
これはこのエンジニアの方が今まで携わってきた会社の経営者の責任です。意味のある効果的な数字を見せることは経営者の仕事です。いくら口先だけでエンジニアに「数字を意識しろ」と言ってもそんなの無理な話です。まさか決算書を読み解かせてそこから日々の自分の貢献度合いを計算させて、なんてことできるわけがありませんし、そんなことやってたらそれだけで毎日日が暮れてしまいます。
数字を意識するとは、別に会社の決算書を理解しなさいということではありませんし、従業員個人が会社全体の決算書を理解したところで無意味です。一人ひとりのエンジニアが必要な数字とは、その人がもっと直接的に関係する数字です。その人がその日どれだけの売上に貢献したのかという数字です。会社全体の決算の情報ではありません。
本人が直接的に関わる生々しいリアルな数字が見れてこそ意味があります。エンジニア個人が理解できない難解な数字も意味がありません。簡単であることが重要です。そうした数字が見れるようにシステム化するなりすることで仕組みを作るのは経営者の仕事です。
数字が見れるからこそのマネジメント
生産性について具体的でリアルな数字が見れるからこそ、意味のあるマネジメントができるようになると思います。一人ひとりのエンジニアが日々どれだけの数字をあげているのか、進捗は予定通りなのか、遅れている場合はどれくらいの遅れが生じていていつまでにどれくらいリカバリーする必要があるのか、そういった情報が全て数字として見れるからこそまともなマネジメントができるようになります。
そうした数字が見れない中で行うマネジメントとは、裏付けのないフィーリングに頼っただけのマネジメントです。感と経験だけに依存したフィーリングによるマネジメントをやるから「気合」で乗り切ろうとする人達が量産されるのです。数字で管理していない程度の低いマネジメントの成れの果てが残業地獄です。
数字を見ることのメリット
数字を見ることのメリットをまとめるとこんな感じになります。
- 現在地点がわかるので精神的に楽になる
- 日々の進捗に問題があればすぐにわかる
- 数字に問題があれば早めの対処が打てる
- どこまで頑張れば良いか明確にわかる
- 数字に対する改善の意識が働くようになる
- 効果的なマネジメントができるようになる
これらのメリットが数字を意識することによって得られるわけです。私としては数字を意識するのをやめてこれらのメリットが損なわれるようなことは恐ろしくて仕方ありません。エンジニアも数字を意識するべきに決まっています。
仕事を進めていく上で数字を意識することは非常に大事なことだと思います。逆に数字を全く意識せずにフィーリングのみに頼って自由にやりたいなら「趣味」として勝手にやれば?と思ってしまいます。
アメーバ経営というものがある
稲盛和夫さんが考えた経営管理の手法でアメーバ経営というものがあります。
簡単に言うと、会社全体の決算情報という従業員個人にはあまり意味をなさない数字ではなくて、小さな部署単位で従業員一人ひとりが自分に直接的に関わる売上や経費の経営数字が見れるようにすることで、従業員一人ひとりの意識を改善するというものです。
実は私自身このアメーバ経営の考え方には大きな影響を受けておりまして、自社の生産性管理システムに関してもアメーバ経営の考え方を色々取り込んでこのシステムを作りました。
アメーバ経営そのものを現場のエンジニアの立場で導入することは不可能ですしそれをやるなら経営者の仕事となりますが、「エンジニアは数字を意識するべきか」の答えとなるものはこの本の中にあるのではないかと思います。
エンジニアも数字は意識するべきであり、きちんとした仕組みを導入することによってパフォーマンスが向上することは間違いありません。