一般的に週休2日の会社が多い中、ヤフーや佐川急便が週休3日の制度を取り入れたということが話題になってニュースで見かけることが時々ありますね。ぱっと見た感じ目を引くのでニュースで取り上げられることが多いようです。
働き方改革が叫ばれる中でこういう取り組みは注目を浴びやすいですが、一概に好意的な意見ばかりではないようで、こんな記事も出ていました。
この記事によると、こんな課題もあるのではないかということでした。
- 副業をやる場合は割増賃金の問題が発生する
- 生計が成り立たなくなる可能性がある
ヤフーの場合も佐川急便の場合も、単純に休みが1日増えるというわけではなく、労働時間は変わらなかったり、休みが増えた分は給料が減ったりするわけです。
続けてみないとわからないというのはありますが、今のまま続けていても正直あまりうまくいかないのではないかなと感じています。
週休3日より先にやるべきことがあるだろというツッコミ
別に週休3日の制度が導入されたからといって、この制度を強制されるわけでもなく、従来通り週休2日で働きたい人はそのまま働けば良いわけですから、誰かがあからさまな損をするということでもありません。
それでもどこか冷ややかな反応が見られるのは、週休3日よりさきにやるべきことがあるだろうという、誰もが心の中で感じているであろう疑問があるからではないかと思います。
まず真っ先にうかんでくる疑問としましては、有給消化率です。下記は2016年のデータですが日本の有給消化率は50%となっています。
週休3日制とかやる前にまずは消化しきれていない有給を消化させろよと思われてしまって致し方ないのではないでしょうか。
そりゃそうですよね。日本は世界トップクラスで祝日が多い国ですから、有給消化率を100%にすることが実現できれば、完全週休3日とまではいかなくとも、ほぼ週休3日に近い状態まで持っていくことは十分可能です。
有給を全て消化できない状態のまま週休3日にしても(しかも給料はその分下がる)、現状で消化できていない有給がさらに消化できない状態に陥るのではないかと考えるのは自然なことです。
さらに長時間残業の問題もあります。長時間の残業問題が解決しないまま週休3日を導入しても、その分どこかにしわ寄せがいってしまうかもしれません。
下手すると週休3日の人が対応できなかった分を、週休2日の人がフォローするという構図になりかねません。そんなことになればそれが原因でお互い変に気を使ったり、不満を抱えてしまうことになってしまいます。
正直なところ、有給消化率や長時間労働の問題から逃げているようにも思えてしまいますね。働く人たちが望むこととしても「そこじゃないだろ」という気持ちがあるように感じます。
有休取得率、二極化進む 「ほぼ消化」が3割、「全くなし」が1割
このグラフを見ても働き方改革で必要だと思うこととして、「有給休暇が取りやすくなる」が61%でトップ、次いで「残業が少なくなる」が56.6%となっています。
週休3日というのは現状だと別に期待されていないようですね。w
週休3日なんかよりも先にやるべきことがある!
そしてそれは有給消化率の向上や残業削減であるということが結論として言えそうです。
週休3日の制度はプレミアムフライデーと同じ香りがする
週休3日の制度導入の話に対してどこか白けた感じがするところは、プレミアムフライデーなんかと似ているように感じます。
プレミアムフライデーについても金曜日に早く帰れるということで、それだけ見ると喜ばれそうな感じもしますが、実際にはほとんど歓迎されるようなこともなく、既に忘れられた存在になりつつあります。
プレミアムフライデーも順序を踏んで実施されていればもう少し売れ入れられていたのではないかと個人的には思いますが、現状ですと未消化の有給が大量にある状態で何が金曜日早上がりだ!とどうしてもなってしまいますし、長時間残業の問題が残されたままの状態で強引に金曜日に早上がりしたところで、下手すると翌日からの土日出勤なんてことにもなりかねません。
極々一部の人達だけで盛り上がっているだけであり、ほとんどの人からは白い目で見られてしまう理由には「もっと先にやるべきことが他にあるだろ!」と思ってしまう部分があるからではないかと思います。
ブラック企業が長時間残業の問題には見て見ぬふりをしながら、従業員の間の親睦を深めようとして、社員から反感を買うだけの(半強制の)飲み会を頻発する事象とよく似ているように思います。飲み会そのものが悪い訳ではありませんが「その前にやるべきことがあるだろ」と誰もが思ってしまうことが一番の問題なわけです。
物事には順序というものがあります。仕事は無限に湧いて出てきますので全部をこなすことは不可能です。だから我々は抱えている仕事に優先順位を付けて優先順位の高いと思われるものから優先して消化していきます。仕事の優先順位は簡単には決められないことも多いですが、週休3日やプレミアムフライデーの件については、完全に優先順位付けを間違えてしまった事例ではないかと思われます。
本質的な問題を解決する前にこのようなただの人気取りともいえる施策を実施するということは、言ってみれば穴の開いたままのコップに水を汲み続けるようなものです。穴が開いているのでいくら水を組んだところで全部こぼれていってしまいます。長時間残業や有給消化率という穴をふさぐことなく、週休3日やプレミアムフライデーという水をいくら汲み続けたところで、わたしたち全然楽にならないんですけど!というのが労働者の心の叫びだと思います。
問題を解決するためには小手先のテクニックではなくて問題の本質に対処しなければならず、ただの人気取りの制度を導入したところでそんなものうまくいくわけがないのです。
そもそもなぜ週休3日なのか
アクシアには子育てしながら働いている主婦の人もたくさん在籍しているのですが、そうした人達も含めて実際に働いている従業員の声を聞いていると、休みの日を増やしてほしいという要望というのはほぼ聞いたことがありません。
それよりも実際の声として多いのは、1日の労働時間が少なくしたいという声はよく聞きます。もちろん全ての人にそういうニーズがあるわけではありませんが、子供が学校から帰ってくるとか、夕方早く帰ってご飯を作りたいとか、そういう理由で1日の勤務時間を5時間にしたいとか6時間にしたいという話はしょっちゅうあります。採用面接をしていてもそういう声はよく聞きます。
ヤフーや佐川急便でもおそらく同じような傾向にあるはずです。週休3日にするよりも1日の勤務時間を短くできる制度があった方が従業員に喜ばれるはずです。ではなぜそれができないのかというと、ずばり残業があるからです。
1日の所定労働時間を5時間としたところで、残業まみれで結局1日の労働時間が10時間になっていたのでは何の意味もありません。あるいは時短制度を選択した人の仕事が終わらなかった場合に、その尻拭いを他の人が残業して埋め合わせるようなことをやっていたのでは従業員の間で不公平感が生まれてしまって不満の種になります。
このような理由があるので、長時間残業の問題を抱えたまま1日の労働時間を短縮する制度の導入は難しいのです。長時間残業の問題を抱えたまま1日の労働時間短縮の制度を導入している会社があったらかなりおめでたい経営者だと思います。w
週休3日を選択できるよりも1日の労働時間を短縮する選択ができる方がニーズがあるのにそれができないのは長時間残業の問題を抱えているためであり、そんな中で週休3日の制度を導入するのはただの人気取りでありPRが目的です。
ただの人気取りでありPRだから、一見するとなんかすごいことやってるぞと思われるような内容で一時的に注目を集めることができたとしても、蓋を開けてみたらみんなどこか白けた雰囲気になってしまうのではないでしょうか。
多様な働き方を選択できることは良いこと
週休3日の制度についてネガティブな意見を述べてきましたが、私は週休3日を選択できること自体は悪いことだとは思いません。多様な働き方を選択できることはこれからの時代では必要なことであり良いことだと思っています。
ただ順序が違うのではないかということを言っているだけです。まず目の前にある有給消化率の問題や長時間残業の問題を解決してからでないと、本末転倒なことになってしまうということです。
アクシアにも学生以外で週休4日で働いている人もいます。自分で作りたいサービスがあってそれの構築や運営のために時間を割きたいので、アクシアでの勤務は生活に必要な最低限のお金を稼げる時間にしているとのことです。
アクシアでは勤務時間や勤務日数についてはかなり自由に選択できるようになっていますが、それが無理なく自然と実現できているのは残業ゼロだからだと思っています。
しかしながら本当は今すぐにやりたいけどできずにいる施策もありまして、仕事が早く終わった場合には所定労働時間まで働かなくても早く帰って良いという制度を取り入れたいと思っています。なぜそれをすぐにできないかというと、有給消化率が100%ではないからです。
今のまま消化できずに残っている有給があるのに早く帰れる制度というのはおかしいだろうというツッコミが出てくることが予想できますので、まずは有給消化率を100%にする予定です。現状70%くらいなので今年度中に有給消化率100%を達成させる予定です。
アクシアでは残業ゼロですが有給消化率が100%ではない状態なのでそれが足かせになってしまっていますが、有給消化率が100%になれば今よりもさらに自由で多様な働き方を選択できる会社にできると思っています。
今思い描いている姿としては、残業ゼロで有給も100%消化した状態で、1日8時間週40時間を上限とした裁量労働制みたいな形です。つまり残業は禁止だけど仕事が早く終わった場合には早く帰って良いという感じです。常に生産性高い状態をキープしないと破綻してしまうので難易度は非常に高いですが。w
私のような考え方が唯一の正解だとは思っていませんが、個人的には多様な働き方を実現できる会社というのは、長時間残業と有給消化率の問題をクリアしたその先にあるものだと考えています。
ただの人気取りのPRのようなことにならないように、本質的な問題を一つ一つクリアしながら多様な働き方を選択できる会社にしていきたいと思います。