IT業界に限った話ではありませんが、仕事をしているとたまにとんでもない顧客に出くわすことがありますよね。そんな顧客の対応をしているうちに精神的に消耗してしまうこともあるかと思います。そういう顧客とはできるだけ取引しないように注意はいますが、注意していても一定の確率でそういう顧客と当たってしまうこともあります。交通事故みたいなものです。
以前こんなブログを書きました。↓
本日はより具体的に、私が今まで出会ってきたとんでもないブラック顧客wをご紹介したいと思います。
ブラック度10%:「こうなると思ってました」を連発する
システム開発ではこれから構築するシステムの仕様について、顧客と開発会社側で認識の齟齬が発生しないように、顧客の要件をヒアリングしながら仕様書に落とし込んでいきます。システム完成後の検収は基本的にこの仕様書に基いてシステムが正しく動作しているのかを顧客に確認していただきます。
しかし極稀に(しょっちゅう)仕様書とは違うことを検収時に要求される顧客がいるんですね。ここで仕様と違うご要望があった場合には、追加の費用とそれを対応するための期間がどれくらい必要なのかをご説明します。もちろん仕様書をベースに話をします。
普通の顧客だったらここで追加の費用を支払っていただくことをご了承いただけるか、予算等の兼ね合いで難しい場合は仕様変更を見合わせたりするのですが、
こうなると思ってました
と、必殺技のようにこの言葉を連発される顧客がいるんですよ。こうなると思ってたと言われてもこちらはそうは思ってないわけで、そういう認識齟齬が起きないようにわざわざ時間をかけて仕様書を作成しているわけです。
うちの会社はできないものはできないとはっきり言うスタイルですが、IT業界では顧客から「こうなると思ってました」と言われてそのまま無償対応してしまって残業している会社も多いと思います。
ブラック度20%:「顧客第一で考えろ」と言ってくる
「こうなると思ってました」の顧客と同じように、自分達の要求が通らない時にこういうこと言ってくる顧客がいます。自分達が契約外のことを理不尽に要求してきているにも関わらず、まるでこちらが不誠実な対応をしているかのような言い方をするんです。
百戦錬磨の社長さんなんかは「お互いそれぞれ言い分があるけども、ここはひとまず顧客のことを考えるようにしようや」と一見もっともらしく聞こえることを言ってくる社長さんもいました。わかりやすく翻訳すると「仕様変更を無償対応したくないのはわかるけど俺らの要求通りにやれや」です。w
お客様は神様ですなどと考えている人はこんなこと言われたら「ああ、そうなのか…」となってしまうかもしれませんね。もちろん顧客のことは考えていますけど、別にボランティア活動をやっているわけではないですから。
ブラック度30%:自分達が素人であることを強調する
何度も言うようですがシステム開発は顧客と開発会社側で認識齟齬ができるだけ生まれないように仕様書を作成するわけです。認識齟齬が出てきてしまった時には仕様書をベースに話し合われます。
仕様書ベースに話をすると、どう考えても顧客側が後出しで違う要求を出してきていることが明らかで、顧客側もそれを理解している場合に、自分達が素人であることを強調して責任を押し付けてこようとする場合があります。
必要な要件を要件定義の打ち合わせで顧客が言い忘れていた場合に「我々は素人なんです。プロであるあなた方が全ての仕様をもれなく聞き出す義務があるでしょう。それを怠った御社の責任です。」というようなことを言ってきます。orz
もちろん要件をもれなく聞き出せるようにできる限りの努力はしてますよ。でもそんなこと言っても最終的に顧客にしかわからない要件や仕様はどうしたって存在します。超能力者じゃないですから、言ってもらわないとわからないものはわからないんです。
ブラック度40%:無茶なスケジュールを要求してくる
これは顧客側の担当者が社内的に厳しいスケジュールを強いられているような場合が多いですね。社内でいつまでにシステムの改修を完了させるか決まってしまっているために、それを守れないと上司から怒られてしまうパターンです。怒られたくないので開発会社に無茶なスケジュールを要求してきます。
いつまでにやってほしいですという要望を受けて、社内のスケジュール状況等を確認し、できない場合はできないのでいつまでだったら対応できるかお伝えします。この期日が顧客側の担当者にとって都合が悪いと、「いいから言われた通りの期日までになんとしてもやれ!」などと強硬姿勢に出てくる場合もあります。
アクシアの場合はどんなに強硬姿勢でこられてもできないものはできないと淡々と対応するだけですが、顧客に凄まれると渋々要求を飲んでしまって残業している会社は多いと思います。
ブラック度50%:無償対応を要求してくる
納品後の仕様変更が発生した時などによくある話ですね。当初の仕様とは違うので仕様変更だけどお金は払えないので無償で対応してくれというパターンです。
アクシアではほとんど手間のかからない少々の仕様変更くらいであれば納品後の調整で無償対応することはあります。どれだけ要件をつめても実際に動くシステムを見てみないと実感がわかないこともありますしね。
ただし相応の工数が必要な対応については顧客に説明をして追加の費用をお願いするようにしています。きちんと説明すればほとんどの顧客は追加の費用をお支払いただけるか、仕様変更を取りやめるかの対応で応じてくれます。しかしたまにどうしても無償対応をしてくれと強硬姿勢で出てくる顧客もいます…。
今までで一番ひどい例は、新規で問い合わせのあった会社から新規システムの構築を無償でやってくれと要求されたことです。初めて会った相手なのに「何でシステム開発にこんなにお金がかかるんだ」「今時フリーのソフトウエアもあるじゃないか、ただでやってよ!」こんなこと平気で言われました。w
もう相手にするのも面倒くさくなったので「すみません、この後用事あるんで」と言って早々に立ち去りました。w
ブラック度60%:わざと仕様を曖昧にする
ここまで見てきてもわかると思いますが、システム開発ではできる限り事前に仕様を明確にしておくことが重要となります。完璧にするのは中々難しいですが、仕様の定義を曖昧にすると後で問題となることが多くなります。
だからシステム会社としても仕様をしっかり顧客と握ることを重要視します。そうしておくことで正しいシステムの形も明確になりますし、どこからが仕様変更になるのかも明確になります。
しかし過去にこれまたとんでもない顧客がいまして。。アクシアで仕様書を細かく作成して提出すると「こんなに細かく書かないで概要だけ書くようにしてくれ」と言われました。最初何でこんなこと言うのか全く理解できず、システム開発時に仕様を細かく定義しておくことの重要性を説明したんですね。
でも一向に聞く耳持たずな感じでもっとアバウトに書いてくれの一点張り。それでも根気よく説明しているとその顧客がポロッと一言こぼしました。
だってこんなに細かく仕様が決まってたら後で仕様変更した時お金取られるじゃないか
もうなんというか、言葉を失いましたね。w
その顧客はある意味システム開発をよく理解していたんです。しっかりと仕様を定義して、どこからが仕様変更になるのかを明確にしておくと、追加料金が発生する線引も明確になります。
だからあえてその線引を曖昧なままにして、後々仕様変更が発生した時に「仕様の範囲内」ということでタダでやらせようとしていたわけです。
末恐ろしい顧客でした。w
ブラック度70%:仕様書の内容を完全無視
わざと仕様を曖昧にする顧客もひどかったですが、世の中さらにその上をいく強者もいます。
せっかく綿密に打ち合わせをして細かく仕様を定義してドキュメントに起こしたのに、そんなもの完全無視する顧客です。契約書や仕様書の該当箇所を説明して、これは仕様変更にあたるから追加の料金が発生すると丁寧に説明しても「だから何だ。いいからやれ。」の一点張り。
話し合いというものが一切通用しない相手でした。
我々の業界では仕様書の重要性は十分に理解していますし、最後の最後まで揉めてしまって裁判になった時などは仕様書に何と定義されているかが物を言います。だけどこの顧客は仕様書の重要性を理解していなかったのか、単なるバカだったのかわかりませんが、「仕様書にそう書かれてるって?ふーん、それで?」みたいな感じでもう全く話が通じない。
話し合いができない相手だったので早々に弁護士さんに依頼して解決した案件でした。。
ブラック度80%:料金を支払わない
色んな事情で料金を支払わない顧客はいますよね。前に実際にあった例としては、納品後の仕様変更を無償で行ってほしいという要求をアクシアが断ったため、それが相当腹に据えかねたらしく、初期開発分の費用を支払ってこなかったということがありました。
当然こちらからは支払ってくださいということを言うわけですが、その時言われたセリフがこちらです。
支払ってほしければこちらが要求したことを無償で対応しろ
もうこんなの人質とって身代金要求してるのと何も変わらないですよね。w セリフの内容までそのまんまです。w
アクシアでは例によってこういう相手には淡々と対処するのですが、こんな卑怯なことされたら顧客の言いなりになってしまう開発会社だってありますよね。でもこういうのは絶対聞いちゃダメです。ブラックをつけあがらせるだけですから。
ブラック度90%:ダメ元で裁判を起こしてくる
これ何を言ってるか意味不明だと思うんですが、顧客があるWebサービスを新規事業として始めようとして、そのシステムをアクシアに発注してもらいまして、検収もしっかり行ってもらって料金も普通に払ってもらったんですね。ここまでは普通の話です。何の問題もありません。
しかしその顧客がやろうとしていたWebサービスと類似のサービスをとある超大手の会社がリリースしたんです。しかも無料で。その顧客は有料でサービス提供しようとしていましたし、知名度から言っても勝ち目はありません。
もちろんアクシアには何の責任もないのですが、その顧客は驚くべき行動に出てきました。
類似サービスを超大手から無料でリリースされて勝ち目がないと考えたその顧客は、そのサービスの運営を諦め、その代わり少しでも料金を取り戻そうとアクシアにいちゃもんを付けてシステムの開発費用を全額返還するように裁判を起こしてきたのです。しかも検収も済んで料金も支払ってもらってるのに…。orz
いちゃもんの内容がまたひどかった。設計書の罫線が少しズレてるとかそういうレベルです。
もちろんこんな裁判負けるわけがないのですが、費用も時間もかかりますしこんなの嫌がらせのレベルです。その顧客にしたって裁判の費用かかるわけですから、勝てるわけない裁判なのにちょっとアホな人だったんでしょうね。お互いにムダな費用と時間を浪費しただけの不毛な闘いでした。
ブラック度100%:少額の費用を踏み倒そうとする
この顧客は一つ前で紹介したダメ元で裁判を起こしてきたアホな顧客と違って、頭使って計算してきていただけあってたちが悪い顧客でした。
短い期間でしたが取引してきて、最後に20万くらいの少額のシステム改修依頼を受けまして、その費用を踏み倒してバックレようとされました。金額は小さいですがこれの何がたちが悪いかと言いますと、これくらいの少額で弁護士に依頼したり裁判起こしたりするとかえって多くお金がかかってしまったりするんですよね。
取り返してトントンだとしてもかけた時間を考えると全く割に合わない。その時間を別の仕事に使った方がはるかにマシ。経営者として売上と利益を純粋に追求するのであればこういうのはあまり深く追求しないのが正解かもしれません。
相手もその点をよく理解しててわざとやってるわけですよ。20万そこそこで争ってもお宅も余計に損するだけでしょというわけです。本当に性格悪いですよね。
でもこの顧客にとって誤算だったのは、私の場合はお支払いただくことが当然のものに対しては例え費用と時間がかかっても筋を通すことをポリシーとしていて、泣き寝入りしたことなど一度もないということですね。そのことを伝えたらあっさりと全額払ってくれました。w
ブラック度100%中の100%:アクシアを支配しようとする
これはもう本当にひどかった。業界言うと会社名割れちゃうかもしれないので言えませんが、とある業界の超大手企業で下請けを使い倒してきた人が天下りしてきた人が担当だったのですが、その人は今までやってきたようにアクシアも自分の奴隷にしようとしてきました。
理由も言わず営業時間外や休日の対応を要求してきて「俺も休日出るって言ってるのに舐めてんのか?」みたいなことを平気で言われてました。休日にうちの会社の人の携帯に執拗に電話をかけてきて精神的に追い込んでこようとしてきました。
ああ、こうやって世の中の超大手企業は下請け企業を奴隷にしていくのかと思いましたね。今のところここよりもひどい相手はいなかったと思います。
その時きっぱりと断ったメールを以前Twitterに投稿したらメチャクチャリツイートされたのがこちら。
本日理不尽な要求はちゃんと断りましょうというブログを書きましたがこうやります。仕様変更の要望を絶対に今日やれ!と言ってきた顧客がいて(しかも日曜日)これはもう顧客じゃないなと思って私が出したメールの抜粋です。理不尽な要求は飲んじゃ駄目です。#残業を求めてくる顧客はブラック企業 pic.twitter.com/No9YQWseUR
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) May 17, 2017
このメールを送った次の日に謝罪に来られたのですが結局結んでいた保守契約は切られてしまいました。でもそれで良かったと思っています。そうしないとその後ずっと苦しむことになっていたと思います。顧客からの理不尽な要求はきちんと断らないと本当自分の首を絞めることになりますよ。
ブラックな会社はブラックな相手と取引し、ホワイトな会社はホワイトな相手と取引する。
別に相手が顧客だからといって、自分達は顧客の奴隷ではありません。自社の労働環境改善のためにはブラックな顧客を断ち切ることも必要です。自社をブラックに侵食するブラックな顧客は相手にしないように注意しましょう。w