ブラック企業への風当たりはますます強くなるばかりですが、5月10日に厚生労働省が長時間労働や賃金不払い等の労働関係法令に違反した企業のリストを公式ホームページにアップしました。
ブラック企業リスト、厚生労働省が334社を公表 今後は毎月更新
この情報については実はこれまでも全国の労働局のホームページには個別にアップされていたのですが、今回の件は全国ばらばらになっていた情報を厚生労働省が一つのリストにまとめてアップしたというニュースです。
全国で334件というのは随分と少ないんじゃないかとか、何で俺の勤めてる会社が入っていないんだとか、色々なご意見があるかと思いますが、電通のような話題性のあるニュースにまでならなくとも、ブラック企業はこうして会社名が公表されてしまうリスクがあるわけです。ちなみにこのリストの中にはあの電通の名前ももちろん入っています。
またこんな記事も出てました。
この記事によると下記のような会社はブラック企業の可能性が高いから要注意だそうです。
- 募集要項で残業代が固定
- 残業時間に上限がある
- 入社3年以内に裁量労働制
- 離職率や有給消化率が未公開
- 社員の平均年齢が30歳前後
社員の平均年齢が若い弊社としてましては「社員の平均年齢が30歳前後」の見出しの付け方などには異論をはさみたいところではありますが、記事の中身をきちんと読むと主旨が「社員の入れ替わりが激しい会社」であることがわかりますので詳しくは上記の記事をお読みいただければと思います。
さて、この時期の学生の中には就職活動真っ最中の人もいると思いますが、私が就職活動中の学生からアドバイスを求められた時に、「説明会や面接でこれだけは確認しとけ」といつもアドバイスしている3つのことをご紹介したいと思います。
IT業界で就職活動する時に気をつけたい3つのポイント
IT業界と書きましたがITにも色々ありますので、ここではアクシアの業種でもある「システム開発」を事業としている会社と思って読んでいただけたらと思います。
固定残業代が含まれているかどうか
固定残業代そのものを悪とする風潮もありますが、私はそうは思いません。固定残業代自体は正しく運用すれば非常に良い制度にもなりうると思っています。
紳士服のはるやまという会社では残業をやらなければお金がもらえるという「ノー残業手当」という制度を設けました。
これは実際には中身は固定残業代と同じものです。しかし賛否両論はあるものの、Twitterでもこの制度を賞賛する声も多く上がっていました。固定残業代と実質同じなのになぜこんなにも印象が違うのか?
本来固定残業代というのは、残業をやらなくても固定で残業手当がもらえる制度なわけですから、効率的に仕事をして残業をやらなければ労働者にとってもメリットのある制度のはずです。しかも「固定」とありますが、固定残業代で定めている残業時間が30時間だとすると、これを超えた場合は別途残業代は支給されるので(されないのはまた別の問題・・・)、残業をやってもやらなくても必ずもらえる手当だから、正しく運用されれば労働者に不利益はないはずです。
残業が発生してしまっている会社においては、固定残業代は労働者の自発的な業務効率化の意識を高められる可能性のある制度だと私は思っています。労働弁護士などはブラック企業を叩くのが仕事ですから、固定残業代=ブラック企業の代名詞みたいに一律で固定残業代を否定する人もいますが、そうではなく固定残業代の制度があっても良い企業はあると思いますので注意した方が良いと思います。
固定残業代の問題点は制度そのものではなくて、提示している給料の中に実は固定残業代が含まれるという事実を言わない、またはわかりにくくしている企業があることです。
初任給22万と提示されていたのに、実はそのうち5万は固定残業代でしたみたいなパターンです。そうすると固定残業代を除いた分の給料は17万ということになってしまい、本当はすごく低い給料なのにその事実を正しく伝えないことが問題なのです。
中には非常に高い給料を提示しているのに、実は固定残業代がたくさん含まれており、実質的には法律で定められた最低時給ギリギリなんて企業もあります。
紳士服のはるやまさんは、正規に提示された給与額に上乗せする形でノー残業手当を支払う形を取っており、労働者が誤解するようなところが何もないから賞賛する声も多いわけですね。
それに対して、固定残業代の情報を曖昧にして労働者を騙すような形で求人情報を出しているような会社も多くありますので、そのような会社に入ってしまうと後になって思っていた給料と違うとなってしまうので要注意です。
裁量労働制かどうか
固定残業代もそうですが、私は裁量労働制自体はそんなに悪くない制度だと思っています。労働者に裁量を委ねるその主旨は素晴らしいと思っています。ただし理想と現実は違うというところが中々切ないところであります。
他の業界だと違う場合もあるのかもしれませんが、IT業界で裁量労働制を採用している会社は残業代を払わないためにこの制度を導入しています。
裁量労働制の企業の説明会に行ったら、そこの会社の社員の人に「残業がない月もありますか」と聞いてみるといいですよ。私も学生時代に就職活動していた時には裁量労働制の会社に残業しないで済むこともあるのか必ず聞いていましたが、残業まみれの会社しかありませんでした。
また裁量労働制で働いていても長時間労働になる傾向は避けられず、労働時間が長いことに対する不満が大きいようです。
そもそも裁量労働制の適用される職種が非常に微妙です。こちら厚生労働省のホームページにあるページですが、
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/a2.html
いわゆる「SE」と呼ばれる業種については裁量労働制の適用ができるということを書いていると思われますが、
プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれない
と最後に書かれています。大手SIerが自社の従業員をプログラマーとして育成しないのはこれが理由ではないかと疑ってしまうような内容です。
とりあえずプログラムの設計や作成を行っているのに裁量労働制の会社は全部アウトです。ましてや常駐開発やっているような会社の社員においては裁量なんてありませんから論外です。
常駐開発を行っているかどうか
断言してしまいますが、
常駐開発を行っているIT企業は全部ブラック企業です。
常駐開発をしている会社は偽装請負という違法行為をやっている会社です。彼らはグレーゾーンという言い方をしますがただの違法行為です。詳しくはこちらの記事に書いてます↓
常駐開発なんて偽装請負をやるためにやっているようなもんだと思っています。偽装請負ではないなら普通に自社内で開発するか、派遣契約でやればいいです。
ブラック企業にはまってしまわないためにどうすれば良いか
求人情報から見分けることは難しい
正直求人情報からブラック企業であることを見抜くのは難しい側面もあります。求人サイトに掲載されている情報は、その求人媒体の会社が企業から広告料を支払ってもらって作成されます。お金をもらっておきながらその会社のブラックな情報を包み隠さず書いてしまうなんてことは中々難しい。ブラック企業であっても楽しそうな雰囲気を醸し出した求人原稿を作ってくれます。
これは恥ずかしながらアクシアも元ブラック企業としてよくわかります。超絶長時間残業の会社であったにも関わらず、求人会社の取材をされる方はブラックな側面にはうまく目をつぶりインタビューをして原稿を書いてくれます。彼らはブラック企業のインタビューや原稿作成には慣れているのです。
ただし常駐開発をやっているかどうかについては勤務場所や勤務時間の記載から判別できる場合もあります。またははっきりと客先常駐やってますとか、SESやってますとか書いてある場合もあります。
聞きたいことがあるならちゃんと聞きましょう
就職を検討している企業に対して聞きたいことがあるなら直接ちゃんと聞きましょう。少なくとも上で書いた下記3つは不明であればちゃんと聞いてください。
- 固定残業代が含まれているかどうか
- 裁量労働制かどうか
- 常駐開発を行っているかどうか
よくこれを言うと「そんなこと聞けません」とか言う学生がいますがちゃんと聞いてください。残業に関することなどは聞くとやる気がないと思われてしまうので聞いてはいけないなどと書いてある面接マニュアルのようなものもあるらしいのですが、こんなこと聞いたからといって面接で落とされたりしないので大丈夫です。少なくともまともな会社であればそんなことで落としたり絶対にしません。むしろ、
それで落とされるようならその会社にはいかなくて正解!
聞かないで事実を知らないまま入社して「こんなはずじゃなかった」とならないように聞くべきことはしっかりと質問しましょう。
それでも間違ってブラック企業に入ってしまったら?
求職者へ嘘の説明をしたり都合の悪いことを隠したりする悪質なブラック企業も中にはあるかもしれません。どんなに気をつけていても間違ってブラック企業に入ってしまうこともあるでしょう。
でも気にすることはありません。人間誰しもミスをすることはあります。間違ってブラック企業に入ってしまったら速やかに転職活動をすれば問題ありません。
今は人材不足の時代ですので不幸にもブラック企業に入ってしまったとしても、転職活動も比較的速やかに進むのではないでしょうか。また定年まで一つの会社に務めることが当たり前な終身雇用の時代でもありませんから、一度の失敗くらいで気に病む必要はありません。
大事なことはブラック企業に対して「ノー!」を突きつけて、ブラック企業に対して反省して自らの行いを改めてもらうチャンスを与えることだと思います。元ブラック企業経営者としてそれはとても大事なことだと思います。それでも反省しないブラック企業には市場から撤退していただく。
最近では「内定」という言葉を今の時期に使ってはいけないとかで、「合格」という変わった言葉で内定を学生に伝えるそうですね。無意味なので普通に言えばいいのに。w
今日は日本次世代企業普及機構の方がアクシアの取り組みについてインタビューしていただけるとのことで夕方からインタビューを受けます。ホームページに掲載していただけるとのことなので掲載されたらまたお知らせしたいと思います。