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津田塾大学

伊藤教授

津田塾大学は、「変革を担う女性」の育成を目指す女子大学です。2020年4月から、アクシアの設計による「白書・審議会データベース」を一般公開しています。

今回のインタビューでは、総合政策学部の伊藤教授にお話を伺いました。

白書・審議会データベース
白書・審議会データベース……政府の図表データを横断的に検索できるデータベース。https://empowerment.tsuda.ac.jp/

_____ システム開発にあたっての経緯をお聞かせください。

総合政策学部の教育・研究においては、政策の検証が重要です。まずは政府の情報を入手するオープンプラットフォームが必要と思い、白書や審議会のデータを整理して横断的に検索ができるデータベースを構築したく、システム開発に取り組みました。

また、学生がデータベース登録作業を行うことで学生の学びにもつなげたいという狙いもあります。

※白書…政府の各省庁が、その所管とする行政活動の現状や対策・展望などを国⺠に知らせるための報告書。

_____ 以前はどのような課題を抱えていましたか?

政府の白書や審議会に掲載されている統計図表やバックデータは、利活用するにはインターフェースが十分でなく、使いづらい状態でした。公表はされていますが、非常に見つけにくい場所にあることが多く、最新のデータがわかりづらいといった課題を感じていました。

そこで、データベースとして再構築して、各省庁を横断して検索がしやすい状態にすることで、社会的課題の検討や政策の検証につなげたいと考えました。既存の政府の横断型の検索サイトはすべての行政文書が一緒くたになっており、とても使いづらいのです。

※審議会…行政機関が意思決定を行う際に意見を求める合議制の機関。国の政策決定に直結する資料(PDF)が掲載されている。

_____ アクシアにご発注をご決断いただけた理由をお聞かせ下さい。

きっかけはアクシアのホームページの問い合わせ画面でした。ご対応の速さと、親身になって話を聞いていただけたところに好感をもって開発を依頼しました。

本来ならば過去の発注先や他の研究者の紹介を利用して開発しようと考えていましたが、予算内におさまらなかったり、過去に開発した例がないと断られたりと、開発会社選びに難航していました。

ホームページから問い合わせただけの私たちのような一見客相手でも、話を親身になって聞いていただき、時間も予算も限られていましたが、むしろ一緒にチャレンジできるような心強さを頂いたので発注を決断しました。

_____ プロジェクトの進行について、工夫したポイントがあればお聞かせください。

データ入力するのは主に学生です。学生の取りまとめ役となっていた大学院生にも打ち合わせに参加してもらい、実際の学生の作業の流れを踏まえてシステム設計に落とし込みました。

そして、学生が迷うことなくデータ入力をできるように、入力画面のUIや記載文言がわかりやすくなっているか、注意して開発をすすめました。

また、モック画面を作成し、UIをレビューし優先度の高い画面からプログラムの実装を少しづつすすめ、フィードバックを受けながら完成に近づけていきました。結果、後工程での戻り作業はほとんど発生しませんでした。

_____ プロジェクトの進行について、苦労したポイントがあればお聞かせください。

学生には統一したフォーマットを示して指示をしていたつもりでしたが、情報の選択に差がでてしまっていたり、人によって表記が違う部分が多くありました。

データベースというのは作る側にとっても使いやすいUIでなければ、持続的ではないのだと痛感しました。UIの仕様には全く手が回っておらず、反省しました。

_____ システム導入後の効果についてお聞かせください。

まず、教育的な効果があったと思います。自分で作ったものがデータベースとして一般に公開されるため、学生が意識してやりがいをもって取り組めるようになりました。

大学の講義でも、最新の資料を紹介したり、学生に複数の白書を比較させたりしています。政府にこういうデータベースがあるという存在を一般の学生にも知ってもらうことができました。

政府系のシンクタンクや、東大の政策評価研究教育センターのメルマガで取り上げていただいたりと、少しずつ学生や研究者に評価されるようになってきました。

データも蓄積してきており、2021年8月現在、36白書について最長で20年分、全約7万件の主だった白書の図表が入っています。同業者から「こういうツールが欲しかった」と言われたときは、作ってよかった、と思いました。

白書・審議会データベースのシステム構成図

_____ システムの精度や質に関してはいかがでしょうか?

特に困ったという声は聞きません。専用のUIを作ったことにより、フォーマットの統一がされてとても助かっています。

ちょうど完成時期と大学の授業のオンライン化が同じでした。はじめてデータベースに触れた学生からも「Googleより情報が選ばれていて使いやすい。図表の元データにリンクしていたり、検索方法をカスタマイズできたりする点もよい」と評判でした。同時に100人近くが検索しても大丈夫でした。

_____ 期待していなかったが、思わぬ効果があったことなどはありますか?

当の中央省庁の方からも使われており、評価していただいていることが思わぬ効果です。
省庁の方からは、「自分の省の統計はだいたいわかっているが、同じトピックで別の省がどのような統計を使っているかを知ることができてありがたい」という声をいただきました。

また、研究者の方からも、「自分がよく知っているデータは毎年見るが、知っているがゆえに他のデータを見なくなる。このデータベースで検索をかけると、自分の認識バイアスやフォーカスを当てていなかった部分がわかる」という声をいただきました。

政策の立案や評価を仕事とする方達にも利用していただき、嬉しい限りです。

_____ 逆に、期待に届かなかったポイントなどはありますか?

当初順調に増えていたアクセス数が最近はあまり伸びていないため、もっと宣伝をしなくてはいけないと感じています。

実は当初メインユーザーとして想定していた初心者には、あまり使ってもらえていないように感じます。学生が使い慣れているGoogle検索は略称などのキーワード、例えば「育休」と検索してもヒットしますが、データベースでは「育児休業」と行政文書上のキーワードで検索をかけないとヒットしません。

逆に検索がヒットしないことで正式な用語を学ぶことも大事だと考えていますが、現状は誰にでも使えるほど簡単とも言えないため、よりよくしていきたいと思っています。

_____ 今後、さらなる改善を行いたいことはありますか?

審議会の情報を現状よりも充実させたいです。一番新しい情報が欲しいと言う時に、白書よりは審議会資料の方が役立つ部分があります。最近では、コロナ関係で政策のスピードがあがっていたり、特定分野で多くの更新資料があったりします。

しかし、省庁のホームページに行くと、情報量が膨大すぎて審議会の情報や資料を手に入れることがとても面倒です。情報のくり返しもあり、取捨選択が難しいため現在は5審議会のみです。

そこで、専門的な情報を手に入れたい方向けに、審議会カレンダーを省庁横断で作って出したいです。「最新の審議会は○日に開催されました」といった情報がパッと取れるものが欲しいと考えています。

私たちが想定していたよりもプロフェッショナルな方(仕事で白書のデータを日々使っている方)がメインユーザーになってきており、「最新情報をフォローしたい」「審議会の資料が見つけやすいと嬉しい」という要望が多く寄せられているため、その期待に答えられたらと考えています。

「データベースを学生が作成することも勉強のひとつだと考えています。できたものはなるべく信頼度が高い形で、いろいろな方に使ってもらいたいです。大学として責任を持って公開するデータベースでありつつ、教育的な効果を目指したいです。」

と語ってくださった伊藤教授。その思いを汲み取り、より多くの方に使いやすいデータベースを目指して、アクシアはこれからも改善を続けていきます。

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