2026年6月5日、KADOKAWAより『「技術的には可能です」はなぜ伝わらないのか ― エンジニアのコミュニケーションの教科書』を出版しました。エンジニアなら一度は聞いたことがあるであろうこのフレーズを、そのまま書籍のタイトルにしています。この記事では、出版のご報告と、なぜこのタイトルにしたのか、そしてどんな本なのかをご紹介します。
3年越しの「いつか書きたい本」だった
実は私は、ずっと前からこのタイトルの本を書きたいと思っていました。証拠もあります。2023年に、私はこんなことをつぶやいていました。
「技術的には可能です」というタイトルの本書きたい。
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) March 29, 2023
当時は完全にただの願望でしたが、ありがたいことに、こうして3年越しで実現することになりました。
タイトルは、KADOKAWAさんへの「逆提案」だった
もともとKADOKAWAさんからは「エンジニアのコミュニケーションに関する本を書いてほしい」というオファーをいただきました。その時にいただいた当初のタイトル案は『エンジニアのコミュニケーションの教科書』。これはこれでとても良いタイトルなのですが、私のほうから「『技術的には可能です』を書籍タイトルにさせてほしい」と逆提案をさせていただきました。理由はいくつかあります。
- エンジニアなら誰もが一度は聞いたことがある、強烈なフレーズであること
- Amazonでこのフレーズを検索してみたところ、ヒットする書籍が一冊もなかったこと
- そして何より、昔からこのタイトルの本をいつか書いてみたいと思っていたこと
結果として、当初の案だった「エンジニアのコミュニケーションの教科書」は、サブタイトルとして残ることになりました。
「技術的には可能です」の裏にあるもの
この何気ないフレーズの裏には、実はいろいろな本音が隠れています。
- 技術的には可能です(でも自分の技術力では無理です)
- 技術的には可能です(でもめちゃくちゃ時間かかるよ)
- 技術的には可能です(でも作っても意味なくない?)
本書はこの一言を入り口に、「正しいことを言っているのに、なぜ伝わらないのか」を掘り下げていきます。本書で一貫してお伝えしているのは、次のような考え方です。
正論だけではコミュニケーションとしては不十分である。
相手の状況を考えずに正論を振りかざす人は、キャッチボールにおいて「至近距離で剛速球を投げる人」と同義である。――本書 第1章「まとめ」より
正しいことを言っているのに伝わらない。そのもどかしい「すれ違い」は、ほんの少しの工夫――多くの場合は「言い換える」だけ――で解消できる。それが本書の中心にある考え方です。
本書の構成
本書は、理論と心構えを扱う「基本編」と、立場の異なる相手別のケーススタディを扱う「実践編」の二部構成です。
- 基本編:正論が通じないのはなぜなのか/伝わるエンジニアになる10のメソッド
- 実践編(ケーススタディ):営業と開発(「技術的には可能です」)/経営と開発(「ざっくり進めて」)/デザインと技術(「1pxズラして」)/上司とエンジニア(「で、結論は?」)/エンジニア同士(「コード読めば分かる」)
顧客・営業・デザイナー・上司・後輩――エンジニアと関わるすべての人に読んでいただける内容を目指しました。AI時代のコミュニケーション(「責任を担う人」の価値が上がる)についてのコラムも収録しています。
なぜ、開発会社の経営者がこの本を書いたのか
私はエンジニア出身の経営者として、エンジニア主体のシステム開発会社を約20年経営してきました。その中で数えきれないほどのコミュニケーション上の失敗を見てきましたし、私自身も若い頃は「正論という名の石」を投げる側の人間でした。正直に言えば、自分の会社組織を崩壊させかけたこともあります。
この本は、もともと自社の社員向けの「コミュニケーションの教科書」「研修教材」として書くことを意識して書いたものです。残業ゼロ・フルリモートで、下請けに丸投げせず自社一貫で開発するという私たちの働き方は、突き詰めれば「すれ違いをいかに減らすか」の積み重ねでできています。本書は、その実践の中で学んできたことをまとめたものでもあります。
購入はこちらから
エンジニアの方はもちろん、エンジニアと一緒に仕事をするすべての方に、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
