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「うちもAIを活用しています」——いまや、ほとんどのIT企業がそう言います。でも、その言葉の証拠を出せる会社はどれくらいあるでしょうか。私たちは、言葉ではなく結果で示すことにしました。このサイト自体を、AIエージェント(Claude Code)と一緒にWordPressからAstroへ作り直したのです。規模感のわかるコスト比較も含めて、その全記録と、やってみて分かったことを正直に書きます。
「AI活用してます」は、もう何の差別化にもならない
正直に言うと、私は「AIを使っています」というアピールにずっと違和感がありました。今や誰でも言える。大事なのは「で、実際に何ができたのか」です。だから、いちばん誤魔化しのきかない題材――自分たちのコーポレートサイト――で、本気でやってみることにしました。うまくいかなければ、その事実ごと出すつもりで。
旧サイトは、実はかなり手堅い構成だった
誤解されたくないので先に書いておくと、これまでのWordPressサイトは「安かろう悪かろう」ではありませんでした。むしろ逆で、しっかりとお金をかけた構成です。
- 前段にロードバランサーを置き、
- データはRDB(データベースサーバー)で管理し、
- アクセスが増えるとEC2(サーバー)のインスタンスが自動的に増えていく(オートスケール)仕組み。
おかげで、テレビで紹介されてアクセスが一気に跳ね上がったときでも、サイトは落ちずにさばけていました。これは胸を張れる部分です。ただ——その安心を支えるために、相応の固定費がかかり続けていました。常時動くサーバー、ロードバランサー、データベース。使われていない深夜も、費用は止まりません。
そしてもう一つ、ずっと気がかりだったのがセキュリティです(これは後半でも触れます)。手堅い構成ではあっても、WordPressである以上、本体・プラグイン・テーマの脆弱性とは付き合い続けなければなりません。
なぜ「Astro(静的サイト)」を選んだのか
そこで考えたのは、「あの"アクセス急増に耐える"という要件を、もっと安く・もっと安全に満たせないか」ということでした。たどり着いたのが、あらかじめHTMLを生成しておく「静的サイト」という発想と、その実装に Astro を使う選択です。
Astroを選んだ理由はいくつかあります。
- コンテンツ主体のサイトに最適:必要なところにしかJavaScriptを使わない設計で、標準でとても速い。コーポレートサイトやブログにぴったりです。
- 記事・固定ページの管理がしやすい:MarkdownやデータをそのままページにできるのでWordPressのDB管理が要らない。500を超える既存ページの移行にも耐えました。
- AIととても相性が良い:すべてがコードとして読み書きでき、Gitで履歴も残る。だからこそ Claude Code のようなAIエージェントが直接いじれる。これが今回の決め手でもありました。
- そのまま静的配信できる:出力をS3に置き、CloudFront(CDN)で配信できる。
このCloudFrontが効きます。CDNは世界中に分散したキャッシュからファイルを配るので、アクセスが急増しても"勝手に"さばけます。つまり、旧構成がオートスケールで実現していた「急増耐性」を、サーバーを増やすのではなく仕組みそのもので満たせる。しかも常時稼働のサーバーは要りません。
コストは、どれくらい変わったのか
正確な請求額は構成やトラフィックで変わるので、ここでは規模感として書きます。
- 旧(WordPress):常時稼働のEC2+ロードバランサー+RDB+(ピーク時は増える)追加インスタンス。使わない時間も動き続けるため、ざっくり月額で数万円規模の固定費。
- 新(Astro+S3+CloudFront):常時動くサーバーもDBもなし。費用は基本「配信した分だけ」。通常のコーポレートサイト規模なら月額 数百円〜数千円規模に収まることが多い。
同じ「急なアクセス集中に耐える」という要件を満たしながら、毎月のランニングコストは桁が変わるレベルで下がりました。しかも、サーバーの保守やOS・ミドルウェアの更新といった"見えない手間"も大きく減っています。
そして、数字で見る結果
コスト以外にも、はっきり改善した点があります。
- 画像容量 −67%(113MB → 37MB)。全画像をwebpに最適化し、表示を軽くしました。
- 500超のページを移行。既存URLを完全に保存し、301リダイレクトで検索評価を引き継ぎました(「作り直したら順位が落ちた」を避けるため)。
- 常時稼働サーバー 0台。サーバーの維持費という固定費そのものが消えました。
AIと会話しながら「作り、育てる」快感
ここからが、今回いちばん伝えたいところです。作る過程そのものが、これまでと全然違いました。私たちは Claude Code というAIエージェントと会話しながら、設計・デザイン・実装を進めました。
「このページ、他の良いページと比べて見劣りしないか?」「この数字、ぽかんと浮いて見える」「この青い線、ダサくない?」「文章が少し短い気がする」――私が画面を見て感じた違和感を、そのまま言葉で投げる。するとAIがその場で直し、目の前で見せてくれる。気に入らなければまた言う。この往復が、驚くほど速い。
デザインを思いついた瞬間に変えられる。ページをどんどん増やせる。複数ページの作り直しを並行で同時に進められる。従来なら見積もりを取り、打ち合わせを重ね、修正のたびに数日待っていた工程が、対話の中でその場で進んでいく。正直に言って、これは快感です。「こうしたい」がすぐ形になる感覚は、一度味わうと戻れません。
そして気づいたのです。AIと会話しながらサイトを育てられるなら、サイトの「更新」も会話でできる、と。実はこの記事自体、改まって書き起こしたものではありません。私がAIと作業しながら交わしてきた相談――悩み、こだわり、判断――が、そのまま素材になっています。日々の会話が、そのまま会社の発信になる。私たちはこれを「会話型CMS」と呼び、次の形として育てています。普段からAIを使い倒している会社なら、この"自走"の手応えはきっと想像がつくはずです。
WordPressは否定しない。でも「安全に保つのが難しい」のは事実
ここは誤解のないように書きます。私は「全社Astroにすべき」とは思っていません。担当者が管理画面から日々気軽に更新したい、特定のプラグインや既存資産を活かしたい――そういう場合は、WordPressが最適なこともあります。アクシアはWordPressの構築・保守も、モダン構成への移行も両方できる会社なので、無理にどちらかへ寄せるつもりはありません。
そのうえで、正直にお伝えしておきたいことがあります。WordPressは、安全に保つのが本当に難しいということです。世界でもっとも使われているCMSであるがゆえに、攻撃の標的になりやすく、本体・プラグイン・テーマそれぞれに脆弱性が日々見つかります。更新を一つ怠っただけで侵入され、改ざんや情報漏えいにつながる——そういう事故が、実際に驚くほど簡単に起きてしまう。これは「WordPressが悪い」のではなく、安全に運用し続けるには相応の専門知識と手間がいる、という現実です。専任で見られる体制がないまま放置されたWordPressは、正直かなり危ない。もし今、更新や保守が後回しになっている心当たりがあるなら、一度ご相談いただく価値はあると思います。
