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厚生労働省が働き方改革法案の要綱を提示したそうです。残業上限規制で話題のアレです。主な内容としては下記のような内容となっております。

  • 残業時間の上限規制
  • 同一労働同一賃金
  • 高度プロフェッショナル制度

どれも重要な内容だとは思いますが、高度プロフェッショナル制度については連合などが残業代ゼロ法案だと言って批判していますね。言っていることはわからなくもありませんが、高度プロフェッショナル制度は時間ではなく成果で評価しようというところが主旨であって、成果で評価するという考え方はこれからますます必要だと思います。そうしないと多くの人が熱望している働く時間や場所に縛られることのない「自由な働き方」など実現不可能ですからね。

残業時間の上限規制については相変わらず非常にわかりづらいですね。多分ほとんどの人が内容を正しく理解していないのではないでしょうか。残業時間の上限は年間で720時間とされていますが、この720時間には休日労働の時間は含まれておりませんので、休日労働まで含めると年間960時間まで労働可能となります。その辺りは以前下記の記事にも詳しく書きました。

残業時間の上限規制によって休日出勤が増えます

みなし残業や裁量労働制すら正しく理解できずに違法状態を続けてしまう経営者が多い中、本当にこんな複雑なルールがきちんと理解されて正しく運用されるものかと今から心配でなりません。と言うか多分無理でしょう。「月に100時間までなら残業させることができると思っていた」などと言い訳しながら罰則を喰らう会社が続出しそうな予感でいっぱいです。

これらの施策もとても大事なことだとは思いますが、私の中で個人的に最も重要ではないかと考えている施策がありまして、それは勤務間インターバルです。

勤務間インターバルとは?

勤務間インターバルが何かよくわからないという人のために、厚生労働省のウェブサイトにわかりやすく説明が載っています。

勤務間インターバル

勤務間インターバルとは、その日の勤務が終了してから次の勤務が開始するまでに一定時間休息を取らせることを義務付ける仕組みのことです。この仕組みがあると例えば終電まで勤務した翌日は朝から出勤させることができなくなります。勤務間インターバルを11時間とした場合、24時まで勤務させた翌日は11時までは出勤させることができなくなるということです。

この仕組みがあると経営者はもちろん毎日深夜残業を労働者に強いることなどできなくなります。深夜残業させても構いませんがその場合は深夜割増賃金の負担が増えるだけではなく、翌日は朝から出勤させることができなくなります。一定期間の休息を義務付けることによって、労働者は最低限の睡眠時間を確保できるようになります。

睡眠時間を削られることは何よりも辛いこと

長時間労働はもちろん大変なことではありますが、何よりも辛いことは睡眠時間を十分に取れなくなってしまうことでしょう。少々働く時間が長くなったとしても十分な休息を取ることができていれば次の勤務までに回復を試みることもできますが、睡眠時間を削られてしまってはもうどうしようもありません。

私が学生時代アルバイトとして働いていた某ハンバーガーチェーン店の話ですが、私が働いていたお店は7時~23時まで営業していて、勤務時間はその前後1時間をプラスして6時~24時まででした。朝番、昼番、夜番と分かれていて、1人の人で朝から深夜まで働くことなどもちろんないわけですが、私の場合24時まで働いた翌日の6時からシフトを入れられていたことがありました。

24時で仕事を終えて家に着くのが1時、ベッドに入るのは2時くらいになります。翌日6時に出勤するためにはどんなに遅くとも5時には起床しないと間に合いません。睡眠時間は長くても3時間です。これは非常に辛いものがありました。

この場合もし勤務間インターバル11時間が義務付けられていたとすると、24時まで勤務した翌日は11時までは出勤させることが不可能になります。11時出勤であれば十分に睡眠時間も確保できますし大きな問題はありませんね。

長時間残業が常態化しているIT業界でも同じようなことはいたるところで起きていますね。朝6時出勤ということはなくとも、毎日24時まで勤務ということは別に珍しくもないでしょう。アクシアでも毎日24時まで勤務で、次の日は9時出勤という状態が以前は毎日続いていました。こんな感じです。↓

1日だけならまだしも、これが毎日続いていたわけですから睡眠時間は不足し毎日体力が消耗していきます。IT業界ではデスマーチに陥ると知らず知らずのうちに「睡眠時間を削る」という手段に頼る方向へと進んでいってしまいます。

睡眠時間を削られると人間の心はどんどん弱っていきますし打たれ弱くもなります。私は専門家ではないのでわかりませんが、睡眠時間が少なくなると鬱にもなりやすくなるかもしれません。長時間労働も大変ではありますが、十分な睡眠時間を取ることができないことが人にとって非常に辛いことだと言えます。

勤務間インターバル導入は努力義務となってしまった

私としては生産性高くパフォーマンスを発揮した状態で働くためにも睡眠時間の十分な確保という課題は最も重要なことだと考えています。そういう意味で働き方改革法案の中でも勤務間インターバルは最も重要だと考えていました。

しかし非常に残念なことに勤務間インターバル導入は「努力義務」となってしまいました。努力義務とは何もやらなくて良いということとほぼ同義です。やってもやらなくても何の罰則もありません。トータルでの残業時間の上限が定められた後も、従業員に睡眠時間を削らせて働かせることができてしまうということです。

このあたりは妥協してはいけないところだったと思うのですが…。連合も高度プロフェッショナル制度を残業代ゼロ法案と言ってバカみたいに反対している暇があったら、もっと勤務間インターバル導入を全力で後押ししてくれれば良かったのにと思います。と言うよりも本気で労働者の健康のことを考えているのであれば勤務間インターバル導入を全力で主張するのではないでしょうか。別に本気で労働者の健康のことを考えているわけではないからこのようなことになっているのでしょうけど。

勤務間インターバル導入でどう変わるのか

勤務間インターバル導入で睡眠時間を十分に確保できるようになることはもうご理解いただけたかと思います。企業としても長時間残業が蔓延している状態を放置することは難しくなるでしょう。

勤務間インターバルが義務化されると企業としても取組姿勢を変えていかざるをえなくなってきます。そのあたりをアクシアの事例をご紹介してもう少し掘り下げてご説明します。

例えば顧客から深夜作業の要請を受けた場合の対応について考えてみます。実際に深夜でのリリース等の作業を要請されることはIT業界では珍しくはないでしょう。アクシアでも顧客からそのような要請を受けることはあります。そしてそのほとんどは深夜に実施する必要性がなかったりもするのですが。w

それでもどうしても深夜での作業が必要となった場合。この時に作業実施者の勤務時間を0時から8時でシフトを組んだとします。この場合は作業実施にかかる料金を見積もって請求することは当然のことですが、営業時間外の特別料金も請求させてもらいます。

さらに作業前後の11時間を勤務間インターバルとして休息を取らせることも考慮しますと、前日は13時までしか勤務させることができず、翌日は19時まで勤務をさせることができなくなりますね。そうすると実質的に前日は半休、翌日は全休となりますが、これは会社都合でそのような扱いとなりますので有給消化させるわけにもいきません。従業員の健康を考えると勤務時間の前後11時間程度は休息を取らせなければなりませんから、アクシアの場合はこの分の休業補償に該当する費用も見積もりに含めます。

もちろん見積もりの根拠は顧客に十分に説明しますし、昼間に普通に作業する費用と比べるととんでもない見積額となりますが、それでもどうしても必要な場合にのみ深夜での作業を依頼してくださいと顧客には説明します。そうするとほとんどの顧客は別に深夜作業でなくとも構わないと言います。w 本当に必要な深夜作業なんて実はほとんどないんですよ。

それでもレアケースですが深夜作業が必要な場合はその前後の休業補償分も含めた金額でご発注いただきます。そういうケースはほとんど発生しないので発生した場合は今のところ役員で作業実施していますが、一晩作業しただけでエンジニアを1人雇えるくらいの金額は払ってもらってますので、今後そのようなニーズが発生した場合には深夜作業前提のエンジニアを雇うかもしれません。月の勤務日数は10日くらいだけど、給与は20日勤務した場合と同じくらいの条件の仕事なんていかがですか?w

話が少し横道にそれてしまいましたが、何が言いたいかと言うと勤務間インターバルが義務化されれば、このように深夜作業の見積もりのやり方一つとっても企業としての姿勢を大きく改める必要があるということです。従業員に十分な休息を取らせることを前提に勤務シフトを考えなければならなくなりますし、例え残業や深夜作業が必要なシーンに遭遇したとしても、従業員にとっても決して無理のない勤務シフトを企業は考えなければならなくなるのです。

健康を考えると睡眠時間の確保が何よりも大事なのでは?

働き方改革法案のメインとなっている残業時間の上限規制ももちろん重要な事だと思います。しかし労働者の健康について真剣に考えるのであれば、睡眠時間の確保は最も重要なテーマであり、もっと踏み込んで対策されるべきではないでしょうか。

今までは法律的な残業上限規制もなく、罰則が盛り込まれるようになることはもちろん画期的なことだとは思いますが、あの法案の内容で労働者の健康が確保されるとは到底思えません。誰もあれで十分などとは思っていないでしょう。

勤務間インターバルは労働者の健康を考えると何よりも重要な施策のはずなのに、それが努力義務でとどまってしまっているところに今回の法案に対する妥協の姿勢が垣間見えてしまって残念に思います。残念ながらまだまだ労働者に睡眠時間を削らせて働かせる気満々の法案と言って良いでしょう。

むしろ残業上限規制など設けなくても良いから、勤務間インターバル導入の義務化だけでも実施してくれれば良かったのにと思いますね。それくらい本来であれば重要な内容であるはずです。

ずっと過酷な長時間労働が続いているとですね、最後には「寝たい」とか「食べたい」といった低次の欲求しか頭の中に浮かんでこなくなってしまうんですよ。(経験談)

十分な睡眠時間の確保すらできない企業に働き方改革など実現できるのでしょうか?働き方改革法案もこれで終わりではなく、順次ブラッシュアップされていくと思いますので、勤務間インターバル導入が義務化されることを強く希望したいと思います。

寝かせてくれ。話はそこからだ。


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