残業時間の上限規制によって休日出勤が増えます


長時間労働による過労死自殺の問題を受けて、残業時間に上限を設けましょうという議論が行われていました。「残業上限100時間」という箇所だけやたらクローズアップされていた感がありますが、早ければ2019年4月1日から改正法が施行となるそうです。

<労政審>残業規制、19年4月にも 3法の改正認める

「事業運営や労務管理が年度単位で行われることを考慮し、施行期日は年度の初日からとする」とのことなので、残業規制の開始が一番遅いケースですと2月決算の会社では2020年3月1日からスタートということでしょうか。

この残業時間の上限規制ですが、上限100時間というところばかりがクローズアップされていたということもありますがとにかくわかりにくいですよね。わかりにくすぎて私も理解するのが大変ですし、詳細まで正しく理解できているかどうかいつも自信がありません。

色んな所に間違った情報が載っていたり情報が不十分だったりするので、厚生労働省のホームページにある下記の資料で確認しました。

時間外労働の上限規制等について(報告案)

残業時間の上限規制の概要

極めてわかりにくい残業時間の上限規制について概要はこんな感じです。経団連と連合が「100時間以下」なのか「100時間未満」なのかという極めて無意味な茶番劇を繰り広げていたのが懐かしいですね。

  • 原則は月45時間、年360時間までを上限とする
  • 繁忙期は単月で100時間未満とする
  • 2~6ヶ月の期間で月平均80時間以内とする
  • 年間計720時間以内とする
  • 45時間を超えられる月は6ヶ月までとする
  • 守らなかった場合には罰則がある

わかりにくいですね。どうしてこんなに複雑な内容になっているのか…。

誤解を招くというか、わかりにくさを助長している理由の一つに、上記の各上限の中には「休日労働」を含むものと含まないものがあるからです。わかりにくすぎて企業経営者の中には誤った認識をしてしまい、誤った運用をしてしまうこともあるかもしれません。

休日労働を含むものと含まないもの

休日労働を「含む」ものは以下の2つです。

  • 繁忙期は単月で100時間未満とする
  • 2~6ヶ月の期間で月平均80時間以内とする

これら2つの上限時間には、休日労働の時間が含まれた上限設定となっているとのことです。

一方で以下には休日労働を「含まない」ものとなっています。

  • 年間計720時間以内とする
  • 45時間を超えられる月は6ヶ月までとする

このあたり本当にわかりにくすぎて「抜け穴」になってしまうとの批判を受けるのもやむを得ませんね。むしろブラック企業のためにわざと抜け穴を残してあげているのかと思わず邪推してしまうかのようなわかりにくさです。

つまりですね、年間計720時間以内を上限と言っていますがこの中には休日労働が含まれていませんので、休日労働を含むと720時間は余裕で超えるということです。

45時間を超えられる月は6ヶ月までとするとあって「お、中々やるじゃないか」と思ってみたら、ここにも休日労働は含みませんので、休日労働を含むと毎月余裕で45時間を超えるということです。

わかりにくすぎてハゲそうです。

果たして全ての経営者がこの内容を正しく理解して労働時間の管理が行えるようになるのでしょうか。

せめて休日労働の「含む」「含まない」を全ての項目でどちらかに統一しておいてくれたらもう少しわかりやすくなったと思うんですが、項目によって休日労働が含まれていたりいなかったりするのでわかりにくくてしょうがないですね。

アクシアのように残業ゼロの場合だと何も気にする必要はないわけですが、長時間残業が常態化している会社の場合だと、この上限規制に抵触しないように残業時間をコントロールしていかないとならないわけですよね。認識不足で法令違反企業続出の予感しかしません。

逆にわかりにくさを逆手に取り、知識不足の労働者を騙して上限を超えて残業させるブラック企業も出てきてしまうかもしれませんね。そうならないためにも労働者側としてもこちらの内容については正しく理解しておく必要がありそうです。

そもそも「休日労働」がわかりにくい

一般的に世間で認識されている「休日出勤」って、土日祝日に仕事をすることだと思いますが、労働基準法で定められている「休日労働」ってちょっと意味が違うんですよね。私も恥ずかしながら結構最近まで知りませんでした。

法律では「毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」となっていて、これを法定休日と呼んで、この日に仕事をすると休日労働となります。法定休日が日曜日となっている会社の場合だと日曜日に仕事したら休日労働になりますが、土曜日に仕事しても休日労働にはなりません。

どこが法定休日となっているかは会社の就業規則に書いてあると思いますので興味があったら確認してみると良いと思います。

休日労働含めると年間の上限は960時間

  • 年間計720時間以内とする

この720時間には休日労働分が含まれていません。つまり休日労働を含むとこの720時間を余裕で超えてしまうと思われます。では休日労働分を含んだ年間の上限はどうなるかというと、

  • 2~6ヶ月の期間で月平均80時間以内とする

この規制が休日労働を含んだ上限となるため、休日労働を含んでいたとしても月平均で80時間を超えることはできません。つまり960時間が休日労働分を含んだ場合の上限になると思われます。

残業時間の上限規制がされたら休日出勤が増える

やっと本題ですが、残業時間の上限規制がされたら休日出勤が増える会社が増えると思います。その根拠となる問題の項目がこちらです。

  • 45時間を超えられる月は6ヶ月までとする

45時間を超えられる月は6ヶ月までとするということで、一見素晴らしい内容のように最初は思いました。しかしここには休日労働が含まれていません。ここが問題です。

1年のうち6ヶ月までは45時間を超えて残業を行うことができるわけですが、残りの6ヶ月は45時間までしか残業させることができないわけです。それでも業務の都合上残業をやってもらわないと困る会社が合法的に取りうる手段は一つしかありませんよね。

45時間の上限の中には休日労働は含まれないので、休日労働させるしかありません。

「今月は45時間までしか普通の残業はできないので残りは日曜日に出てきてくれ」

上司からこういう指示がされることが増えるのではないでしょうか。こんなんだったら45時間なんて格好つけた項目ではなくて最初から「60時間(休日労働含む)を超えられる月は6ヶ月までとする」のようにした方が良かったのではないかと思いますね。

サービス残業も増えそう

残業上限規制の中で私が一番不足していると感じていることが、サービス残業の問題をどうするかということが議論されていないのではないかということです。上でリンクを付けた厚生労働省の資料にもサービス残業という言葉がどこにもないんですよね。

もちろんサービス残業なんて元から違法なわけですけど、ブラック企業は法律を守らないからブラック企業なわけです。残業上限が厳しくなってそれを守らないと罰則があるとなった時に、安易にそれを隠そうとするブラック企業経営者が出てきても何もおかしくないと思います。

残業時間の上限規制で、守らなかった場合は罰則付きであることはとても意味のあることだと思いますが、私の意見としてはサービス残業に対して厳しく罰則を付けた方が良いのではないかと思います。

極論すれば、残業上限を設けるのは後でもいいから、サービス残業に対して厳しい罰則を設けてサービス残業を真っ先に撲滅するべきだと思います。

まず最初に取り組むべきはサービス残業への対策なのではないかと。。

サービス残業含めて今本当はどれだけの残業があるのか、その正しい情報を見える化してからでないと、本当は行っている残業が闇から闇へとサービス残業として葬り去られてしまうような気がします。。

サービス残業対策 → 残業時間の上限規制

この順序で本当は進めてほしいです。。