ホワイト企業に就職したからといって万事うまくいくとは限らない


世の中ブラック企業があふれかえっており、とんでもない環境で日々働いている人達の中には何とかしてホワイト企業に転職したいと考えている方は多いと思います。これから就職していく学生にとっても、就職活動の中で何とかブラック企業だけは回避しようと考えている方が多いのではないでしょうか。

先日、超絶ブラック企業からホワイト企業に転職したという体験談の記事を読みました。

残業230時間の会社からホワイトへ転職したのに、適応できなかった

この記事によると、元々いたブラック企業ではゆるい時でも月150時間、ピーク時には月230時間の残業をするような環境だったとのことですね。IT業界だと別に珍しくもないブラックな労働環境です。

この記事の中で名言だなと私が思ったものが次の一文。

水は低きに流れるというが、そんなことはない。人は慣れている環境へ戻りたがる。

人はあるべき場所へ進むのではなく、元いた慣れ親しんだ場所へ戻ろうとするそうです。

弊社は2012年までは毎日終電まで仕事しているような超絶ブラック企業でしたが、2012年に残業ゼロのIT企業に生まれ変わりました。しかしそれで全てが順風満帆に事が進んできたわけではありません。

この記事の中にある「頑張り方がわからない」という記述などは、ホワイト企業に転職したけどうまくいかなかった労働者側の視点として、私としても非常に参考になりました。弊社としましてもブラック企業から残業ゼロのホワイト企業に転身した経験がありますので、ホワイト企業に就職したからといって必ずしもうまくいくわけではないということについて書いてみたいと思います。

ホワイト企業に就職すれば万事うまくいくとは限らない

残業まみれの状態だった頃には採用しては辞め、採用しては辞め、の繰り返しでしたが、残業ゼロになってからは社員の定着率は格段に良くなり、「残業ゼロのIT企業」という点に惹かれて応募してきてくれる人の数も以前と比べて非常に多くなりました。これは残業ゼロになったことによる大きなメリットの一つです。

数年前になりますが、元々ブラック企業で働いてきたエンジニアの方が「残業ゼロ」の会社の方針に共感してくれて、残業ゼロで効率的な働き方をしてメリハリのある時間の使い方をしたい、それこそが自分が目指していたものであり憧れていた環境であったと、残業ゼロを絶賛してアクシアに転職してきてくれた人がいました。

しかしながら結果としてその人は入社半年ほどでアクシアを去っていきました。入社時には残業ゼロの会社の方針を絶賛していたのに、退職する頃には「残業させてほしい」「残業ゼロなんておかしい」と、入社時とは全く反対のことを言って辞めていきました。

一応誤解のないように説明しておきますと、このように残業ゼロの方針に対して批判的な態度となるのは非常にレアなケースです。多くの人は残業ゼロの方針に共感し、感謝してくれる従業員もたくさんいます。

特に新卒からアクシアで働いていて人生で一度も残業の経験がない従業員はそれが当たり前だと思って働いています。「一度でいいから残業というものをやってみたいですね」と生意気なことを言い放つ従業員もいます。w

しかしながら一度ブラックな環境に染まってしまった人の中には、うまく残業ゼロの環境に適応できずに苦しむ人も確実に存在します。ブラック企業からホワイト企業に転職したからといって、それで人生バラ色という訳にはいかないのです。

そもそもホワイト企業が特別素晴らしい会社というわけでもなく、「ホワイト企業=法律を守る企業」というだけです。せいぜい「ホワイト企業=モラルを守る企業」でしょうか。アクシアは今でこそ残業ゼロを実現し、ホワイト企業アワードという賞までいただけるまでになりましたが、元々ブラック企業でしたので前科持ちみたいなものです。

「ホワイト企業=当たり前のことを守っている企業」でしかないので、それだけで全ての労働者にマッチするわけありません。人によって合う合わないの相性もあるのでアクシアは合わないという人が大勢いて当たり前です。

以上から「ホワイト企業であれば誰にとっても素晴らしい企業」であるはずがないのです。相性が合わなかったから辞める、ということも悪いことだとは思いません。

残業は麻薬のようなもの「わかっちゃいるけどやめられない」

残業というものは恐ろしいもので、一度その魔力に染まってしまうとそこから抜け出すことが中々難しいものです。

アクシアでも他社から転職してきたばかりの人に対して、業務時間を1分も過ぎることなく日報を書くように指導したところ「業務時間内に日報を書くことに罪悪感を感じる」と言っていた人がいました。以前までに経験してきた会社では業務時間が終わってから日報を書くことが当たり前の環境だったのでしょう。

残業は麻薬のようなもので、一度残業体質に染まってしまうと「わかっちゃいるけどやめられない」状態に陥り中々やめられません。残業中毒、残業依存症なので、「残業」という誘惑に打ち勝つことは簡単なことではありません。何かあればすぐに残業に逃げようとします。

麻薬でなければ残業はタバコみたいなものです。タバコを吸う人の中には自分の健康を害していることも自覚しているし、受動喫煙によって他人の健康まで害していることを自覚しているのにやめられない人がたくさんいますよね。それどころか中には迷惑かけているのに自分の喫煙行動を正当化して開き直るような輩までいます。

残業もこれと同じですよ。本当は残業まみれの体質も改めていかないといけないことは心のどこかでわかっているはずのに、わかっちゃいるけどやめられない。それどころか残業の誘惑に負けて残業をやめられない自分を正当化し、残業をやめないせいで自らの組織がブラック化してしまい迷惑をかけているにも関わらず、あれこれ正当化の理由を探そうとします。

わかっちゃいるけどやめられない。残業まみれの働き方に染まってしまった人は、残業依存症の中毒患者のようなもの。そういう人が突然ホワイト企業に移ったところで簡単に残業依存の体質から抜けられないことがあっても当たり前です。

残業をずっと禁止されていると禁断症状のように残業を欲するようになってしまう。残業をやめないとダメだとわかっていたはずなのに残業を欲してしまう。わかっちゃいるけどやめられない。挙句の果てに「残業させてくれ」「残業できないなんておかしい」と批判までしてくる。

嘘でも誇張でも何でもなく、実際に弊社で起きた事実です。

一度染み付いてしまった人間の習慣をなめてはいけない

残業まみれの働き方も、残業ゼロの働き方も、大事なことはどちらも「習慣である」ことです。人間の習慣をなめてはいけません。一度染み付いてしまった人間の習慣を変えることは容易なことではありません。

アクシアでは2012年に残業ゼロを実現しましたが、それまでは超絶ブラックな環境の残業まみれの体質でした。全従業員が残業まみれの働き方が骨の髄まで染み付いてしまっていました。そこからその習慣を改めることは簡単なことではありませんでした。

残業をやらないと決めた日からは毎日が闘いでした。毎日定時が近づいてくると会社の中を見回って強制的に仕事をやめさせる毎日でした。そうしないとみんな仕事を定時でやめてくれないからです。

時には従業員と喧嘩もしました。私が強制的に仕事をやめさせようとしても「それだとお客さんに怒られます」「それだと納期に間に合いません」と猛烈な抵抗に最初のうちはあいました。私が残業は禁止だと決めたところで、残業まみれの習慣はそう簡単に改まるものではありませんでした。

毎日定時で仕事をやめさせるように徹底し、何があっても残業を許可してもらえないとわかってからはようやく少しずつ従業員の行動が変わってきました。絶対に残業を許してもらえないのであれば、残業をやらなくても仕事を回せるように段取りしていくしかないので、顧客の無茶な要求を受けることは無くなりましたし、顧客からの要望を受け入れる際にもそれにかかる必要工数とリソースの状況を緻密に計算した上で、残業ゼロでも実現できる現実的なスケジュールの提示を行うように変わりました。

結局私が社内を見回らなくても全員が定時ぴったりで仕事を終えるようになるまでには半年ほどかかりました。この6ヶ月は本当に毎日が地道な闘いでした。残業削減のための特効薬などありません。残業ゼロの働き方を実現するということは、残業ゼロの「習慣を作る」ことに他ならないのです。人間の習慣はそんなに簡単に変わりませんから、新たな習慣を作るためにはこのような地道な取り組みが必要なのです。

残業まみれの働き方と残業ゼロの働き方は全く違う働き方

残業まみれの働き方と残業ゼロの働き方は当たり前ですが全く違います。成果物の考え方、顧客への対応方法、リソース管理、時間管理に至るまで全てが別物と言っても良いくらいです。

残業ゼロだと成果に無関係なことをやっている暇などありません。カラフルな資料を作ったり成果に結びつかない会議をやったりそんなことをやっている時間などありません。そういうのはただの自己満足でしかありません。残業やり放題だとそういう自己満足に時間を使うことができてしまいます。

残業ゼロにしたらそれまでとは考え方を切り替える必要があります。全く違う環境に移行するわけですから、新しい環境への「適応力」が必要になります。

ブラックな環境からホワイトな環境に変わる適応力と言うとわかりにくいかもしれませんが、逆の視点でイメージしてみると環境を変える適応力というものが決して簡単なものではないことが理解しやすいかもしれません。

例えば元々ホワイト企業で勤務していて残業など経験したことのない人がブラック企業に転職するケースを思い浮かべてください。今までの考え方をしていたのでは全く通用しないでしょう。この場合は新しい環境である「ブラック企業」への適応力が必要となります。ブラック企業では「残業も休日出勤もやらない」というような考えでは一切通用しないので、ブラック企業に転職するのであれば考え方を根底からリセットする必要がありますね。

これと同じようにブラック企業からホワイト企業に転職するのであれば、それまで培ってきた考え方や働き方を根底からリセットしてもらわないと通用しないと考えてください。ブラック企業では何かあればすぐに残業や休日出勤に逃げれたかもしれませんが、ホワイト企業ではそういうことはルール違反ですから許されません。

「ホワイトな環境→ブラックな環境」に適応することが大変なように、「ブラックな環境→ホワイトな環境」に適応することも大変なことなのです。

ホワイト企業=楽な企業ではない

よく誤解している人が多いように思うのですが、「ホワイト企業=楽な企業」ではありません。「ホワイト企業だから楽でいいよね」みたいなことをたまに言われるのですがそういうのは本当に不快ですからやめてほしいですね。ホワイト企業にはブラック企業とは違った大変さがあります。

ホワイト企業は「定時までのほほんと働いて帰る会社」ではありません。「定時までに仕事を終わらせて帰る会社」です。定時までに成果を出すことが求められます。成果が出なかったからと言って残業でカバーする等という逃げは通用しません。

ブラック企業であれば大して成果など出さなくとも「長時間労働」によって会社にアピールすることが可能かもしれませんが、残業ゼロの環境ではそんなことは通用しません。定められた時間で必要な成果を出せるかどうかが残酷なまでに明確になって差がついてしまいます。

このような環境が心地よいと感じるか、厳しすぎて苦痛だと感じるかは人によります。ホワイト企業であれば楽に毎日過ごせるとあまく見ていると「こんなはずじゃなかった」となってしまうかもしれません。

「ホワイト企業に就職したからといって万事うまくいくとは限らない」とは、ホワイト企業だという理由だけで全ての人にとって天国のような環境というわけではなく、結局その会社の環境が合うか合わないかはその人次第ということです。どんな企業に就職・転職するにせよ、その会社が自分にとって本当に相性が良い会社なのかどうかを、じっくり考えてみる必要があるのではないでしょうか。