残業禁止にしたら顧客を選ばざるをえなくなった話


先日取材の打ち合わせをしていた時に「良質な顧客を選ぶようになったことも、残業削減につながっているのですね。」ということを言われました。ちなみにその方は下記のブログを読んでいただいてそういう話が出てきたようです。

残業を求めてくる顧客はブラック企業です

残業削減を実現できた要因は一つではありませんが、顧客を選ぶことが残業削減につながったのか?と問われると、それはちょっと違うなと思いました。アクシアの場合はその逆で、

残業禁止にしたら顧客を選ばざるをえなくなった

というのが実際のところです。そのことについて詳しく書いてみます。

顧客からの急な要求への対応

みなさんの会社では、顧客から急な要求があった際の対応はどのように行われていますか?IT業界でよくある話としては「顧客からの要求は断れない」という話はよく聞きますね。言われたら断れないから残業でカバーしてでも顧客の要求には応える、ということは色んな会社で行われていることだと思います。

その気持ちはよくわかります。お客様は神様だという考え方が無意識のうちに考え方の奥底に浸透してしまっていますので、その顧客の要求は果たして正しいのか、といったことまでは誰も思考が及ばないことが多くありますね。人として理不尽な要求をされてもまるで奴隷のように従順に受けてしまうみたいな。

はるか昔の話ですがアクシアでも以前は同じような状況でした。アクシアがお付き合いさせていただくことの多い中小企業というのは本当に玉石混淆でして、とんでもない理不尽なことをしてくる会社というのも多く存在します。

いやいや大企業の方が理不尽だよという声もあると思いますし、それはそれでよくわかるんですが、それでも長く続けてきている実績のある大企業というのはしっかりしていることの方が多いと思います。中小企業というのは本当に良い会社も極悪な会社も入り混じってますので、それって人としてありえないだろうというようなふざけた会社も結構あるんですよ。

そうした数多存在する理不尽な会社の要求もほとんど全て受けてしまっていました。でも普通にやっても理不尽な要求に対する対処なんかできないですよね。だから残業で対処するしか選択肢がなくなってきてしまいます。

だからもちろん残業でカバーしてました。

現在残業まみれに陥っている多くの会社も同じだと思われます。

残業を許容するとまともなマネジメントが行われない

残業をバリバリ行い、無茶な顧客の要求も全部飲んでいた頃のアクシアではまともなマネジメントが行われていませんでした。何でもかんでも残業でカバーしてました。残業は神でした。

残業を行っていない今だと、顧客からの急な要望が発生した場合にどうするかというと、まずは作業量の見積もりですよね。これがないと何も始まりません。その顧客の要求に対応するのにどれくらいの作業量が必要なのかを計算します。

次に行うのは社内のスケジュール状況の確認です。他で進行している仕事でスケジュールが埋まっていますから、納期などとの兼ね合いを見て、どこのタスクをどう調整すれば、急に発生した顧客からの要求をスケジュールに組み込めるかを確認します。これで最短いつまでなら対応可能であるかが明確になります。

そしてそれを対応するために顧客に負担していただく費用がいくらであるかという情報と合わせて顧客に費用とスケジュールを提示します。ものすごく当たり前だし基本的なことですね。

作業量の見積もりやスケジュール状況の把握を徹底して行っているので、スケジュール的に無理だと判断されれば顧客がどんなに強く押してこようとも無理なものは無理だと言います。残業して顧客の無茶な要求を飲むという選択肢はありません。

限られたリソースの中でやりくりして現実的に実現可能な手段で対応する。こういうのが本来のマネジメントだと思います。

それなのに顧客から急な要求がきたら安易に「わかりました」と言って受けてしまう。スケジュールが厳しかったとしても残業という選択肢があるからそこにえいっ!と押し込んでしまう。下手したら費用の提示すら行わない。

こういうのはマネジメントとは言い難いと思うんですよね。限られたリソースの中でやりくりすることはマネジメントでは当たり前のことなのに、まるで時間が無限にあるかのような前提でマネジメントしてしまう。本当に時間が無限にあるならマネジメントなんて誰でもできちゃいます。でも実際は時間が無限なんてことはないのでうまくいかなくなってしまう。

残業は本来であれば緊急時のオプションくらいの位置付けでないといけないと思いますが、残業がオプションではなくデフォルトとなり、残業前提となってしまっているのはもうマネジメントが破綻していると言わざるをえません。

残業禁止にしたら表面化してきた問題

こんな感じで未熟なマネジメント(マネジメントとは言えない)で適当なプロジェクト管理をやってきたアクシアですが、2012年に突然残業が禁止になってしまいました。本当に一切の残業が禁止されてしまったので、それまでフル活用してきた「残業でカバー」というオールマイティーな必殺技が使えなくなってしまいました。

残業でカバーできない以上は仕事を回すために別の方法を考えなければなりません。スケジュールがきちんと進んでいくように作業量の見積もりはそれまで以上に正確に行うようになりましたし、見えていないタスクがあるとスケジュールがくるってしまうので全てのタスクの見える化も徹底して実施しました。

開発メンバー全員のスケジュール状況やリソースの空き状況も全員で常に最新の情報がすぐに取得できるように徹底して管理しました。それによって顧客から追加の要求が発生した際に、いつまでなら対応可能であるかを明確に回答するようになりました。

そこで一つの問題が生じました。

アクシアが作業量の見積もり、リソースの空き状況、スケジュールの状況の管理を適切に行うようになり、マネジメントを徹底して行うようになった結果、どうしても対処することが難しい顧客の要求というものが発生するようになりました。

顧客から要求があった際に、緻密に計算していつまでなら実現できますよと回答したとしても、一部の顧客からは「そんなものは到底容認できない。何が何でも今週中にやれ!」みたいなことを言われることがあるのです。

以前までだとそこまで言われてしまうと「残業でカバー」という伝家の宝刀を抜くしかありませんでした。でも残業は絶対にやらないと決めました。でも残業しないとそういう顧客の要求を実現することができません。実現できなければその顧客を失うことになるかもしれません。

どうすれば良いか随分と悩みました。そして悩み抜いた末に出した結論。

顧客の無茶な要求は飲まない

顧客の要求に応えなければその顧客を失うことになるかもしれない。そういう恐怖はどの会社でも当然あると思います。だから無茶な要求にもついつい応えてしまうんですよね。

でもそういう無茶な要求を飲んでいたら残業ゼロで業務を回すことはどうやったって実現不可能になってしまいます。残業ゼロを実現するためには無茶な要求は断る必要性が出てきたのです。

その結果、無茶な要求を言ってくる顧客を失うことにもなるかもしれません。つまり、残業禁止にしたら顧客を選ばざるをえなくなったのです。

無茶な顧客の要求を限られたリソースで対応するのは無理ゲーだった

顧客を失うかもしれないという恐怖があって中々無茶な顧客の要求を断ることができずにいましたが、実際に残業やめてみてからは、無茶な顧客の要求を限られたリソースで対応するのは無理ゲーだったということに気づきました。

無理なんですよどうやったって。そういう顧客は永遠に無茶な要求を言ってきますから、どんなにリソース強化したところで最後は残業でカバーせざるをえなくなっちゃうんです。残業を減らすためには顧客を選ぶ必要があったわけです。

では実際にそうやって無茶な顧客の要求を断っていたらどうなったかというと、それはもちろん契約を打ち切られることもありました。恐れていたことが実際に起きてしまったわけです。

でもそれが悪かったかというとそんなことはありません。目の前の短期的な利益だけ見ているとデメリットの方が大きく感じてしまいますが、実際にそういう無茶を言う理不尽な顧客と取引がなくなってくると以下の様なことに気づき始めました。

  • 無茶な要求を繰り返す理不尽な顧客はあまり利益を生まない
  • 無駄な時間の多くは理不尽な顧客によって費やされる
  • 理不尽な顧客がいなくなると他の大多数の優良な顧客に時間を使える
  • 優良顧客に時間を使えるので長期的には会社の業績も良くなる
  • 理不尽な顧客がいないとマネジメントもやりやすくなる

私も経営者ですから、今目の前にある売上や利益が喉から手が出るほどほしいという気持ちはよくわかります。そのために理不尽な要求をしてくる顧客の要望についつい対応してしまう気持ちもよくわかります。でもそれをやっているうちは残業削減は厳しいでしょう。

無茶な顧客の要求を限られたリソースで対応するのは無理ゲーですから。

顧客を失うのが怖いという気持ちはわかりますが、もっと長期的な視点で勇気を持った決断も必要でしょう。

残業禁止が先か、顧客を選ぶのが先か

にわとりが先か卵が先かみたいな問題で、これは非常に難しい問題のような気がしますが、アクシアの場合は「残業禁止が先」でした。残業禁止という制約が加わったからこそ、理不尽な顧客の要求は聞かない=顧客を選ぶという対処をすることができました。

顧客を選ぶというのも難しいものです。何をもって優良顧客とするのかという問題もあります。例えば単純に売上規模だけ見て売上の大きい顧客を優良顧客とする場合、その顧客が理不尽な要求を繰り返す顧客だったとすると、やはり残業を減らすことは難しくなってしまうと思います。

見かけ上その顧客の売上は大きいかもしれませんが、実はその顧客の理不尽な要求を一切聞かなければ、他の本当の優良顧客に時間をかけることができてもっと大きな売上につながるということもあると思います。見かけの売上規模だけで優良顧客かどうか判断することが危険です。

顧客を選ぶことによって残業削減につながるという事例もあるかもしれませんが、アクシアとしては残業削減することによって顧客を選ばざるをえなくなり、結果として会社の状況は良くなったということを成功事例としてあげておきたいと思います。

 

IT業界で長く働いているがこの業界の顧客は感謝してくれないし、自分は顧客から感謝されたことがないというようなことをTwitterでつぶやいていた人がいました。もしかしたら理不尽な要求ばかりしてくる顧客とばかり付き合っているのかもしれませんね。

でも普通に考えて長く同じ業界で働いているにも関わらず顧客から感謝されることがないって何かがおかしいってことですから、そろそろ顧客を変えるなり、所属する会社を変えるなり、自分自身が変わるなりした方が良いですね。

顧客から感謝されたことがないって、いくらなんでも悲しすぎますよ。w